産業技術総合研究所は、有機フッ素化合物を用いずに空気中で350℃の中24時間以上、250℃の油浴中で24時間以上の耐熱性を保持する透明はつ油性塗膜を開発した。
現在、はつ油処理の多くは、有機フッ素化合物や表面の微細加工に依存している。しかし、有機フッ素化合物は人体や環境に影響を及ぼし、微細加工は特殊な装置や条件を必要とする。このため、有機フッ素化合物や微細加工に依存しない表面処理技術が求められているという。
今回、メチルシロキサン骨格の耐熱性に着目し、メチルシランを主原料とすることで、透明で耐熱性とはつ油性に優れた塗膜を開発した。また、この耐熱性透明塗膜の加工を施す際に、特殊な装置なども必要としない。蒸留塔、エンジン、オイルポンプ、オイルダクトなど、使用時に高温となるさまざまな表面のはつ油処理に活用でき、有機フッ素化合物を用いたはつ油処理の代替として、コストの低減や安全・信頼性の向上が期待できる。
今回開発した塗膜は、あらゆる固体表面に処理することが可能である。今後は、ニーズに合わせたコーティング方法のカスタマイズを予定している。また、使用時に高温となるさまざまな表面への適用を目指し、より長期間、高温環境条件にさらされても、はつ油性が維持できるよう、耐熱性のさらなる向上を目指して研究開発を進めていく。
今回開発した塗膜の作製方法(i:ガラス板、ii:ステンレス板、iii:ポリイミドフィルム)と耐熱試験後でも油を弾いている様子(着色した馬油を使用)