ASTEC2015/SURTECH2015開催、表面改質技術や表面試験・評価機器が一堂に会する
「ASTEC2015 第10回 先端表面技術展・会議」や「SURTECH2015 表面技術要素展」、「nano tech 2015 第14回 国際ナノテクノロジー総合展・技術会議」など15の展示会が、1月28日~30日に東京・有明の東京ビッグサイトで開催、47,649名が来場した。
今回は、表面改質関連のASTECやSURTECHのほか、機能性材料と有機エレクトロニクスデバイス関連の「新機能材料展2015」、塗る・貼る・切るという三大要素の加工技術の「Convertech JAPAN2015」、フィルム製品と加工技術の「フィルム産業展2015」など、ナノテクノロジーから材料、加工、エネルギーに至るまで幅広い展示会が一堂に会した。展示会では、DLCコーティングやセラミックコーティングのドライコーティング、熱処理、めっきなどの表面改質処理から、その処理による材料の機械的特性などを評価する硬さや密着性、摩擦・摩耗特性などの試験・評価技術などが紹介された。
ナノテックは、グループ会社で安定化電源・安全試験の平和電機、ファインセラミックスコーティング受託加工のTSジャパン、医療・バイオ向けDLCコーティングのトッケンと出展。DLC薄膜を機能別、用途別に分類した「ICFコーティング」(真性カーボン膜)を紹介するとともに、大電力パルススパッタリング(HiPIMS法)によって高機能水素フリーICFを660nm/minの超高速で成膜できるRoll to Roll成膜装置を紹介した。日本コーティングセンターは、同社の新しいDLCとしてPCVD法とイオン化蒸着法、UBMS法のハイブリット方式で成膜を行う「Neo-スリック」を紹介。被膜硬度がHV1000~3000で負荷を受けても優れた密着性を発揮し、さらに耐久性と耐摩耗性、低摩擦を実現する被膜としてPRを行った。特徴としては150℃以下の低温成膜のため真鍮やアルミ合金、亜鉛ダイカストなどの非鉄金属への成膜が可能なことや、ポリカーボネートやウレタンゴムなど絶縁物専用の処理として100℃以下の成膜が可能な条件を確立した点などを挙げた。
また、プラズマイオンアシストは独自技術より、燃料電池用金属セパレータのコスト削減を可能にする導電性DLC「LR-DLC」を紹介。同セパレータに要求される耐食性、導電性を同社開発のDLCを成膜することで、母材をアルミニウムに置き換えても充分な特性を得ることができる。現在、大量生産用の高速インライン装置の開発も進めているという。日本マクダーミッドでは、自動車の内装部品やカーオーディオ、電気製品などのプラスチックパーツを加工・装飾する「FIM(Film Insert Moulding)」を紹介。逆さに印刷されたシートを適宜成形、裁断し最後に射出成型を行うことで、レンズとボディなど複数のパーツをハードコートフィルムで一体化させることが可能な技術だという。耐擦傷性、耐溶剤性、耐薬品性に優れるとともに対象パーツの表面に新たな触感や光沢を与えることができ、インクを変えることで任意の色にすることが可能。欧米の自動車メーカーを中心に採用が進んでいるという。
日本プラズマトリートでは、大気圧下で被処理材に密度の高いプラズマを衝突させることで表面を活性化、これにより洗浄効果や材料表面の粗面化、コーティングに適した表面を形成する「Openair-Plasma」のデモを行った。この技術は、プラスチック、金属、ガラス、紙、布地、複合材などに適用が可能で、最速生産が900m/minと高速なためインラインプロセスに無理なく組み込むことができる。また、ノズルを多軸ロボットに搭載することで、複雑な形状や深い溝の中の処理が可能になるという。グループ本社であるドイツを中心に自動車、電子機器、医療、新エネルギー分野など多くの産業で採用されている。
こうした技術によって形成された表面を測定する試験・評価機器も多数出展された。摩擦摩耗試験機や触覚評価測定機、物性測定機などの試験機を扱うトリニティーラボは、1台で薄膜や厚膜、塗膜などの界面特性(付着・破壊強度)と表面特性(摩擦・引っ掻き強度)が測定できる被膜性能評価機「フィルメータ ATPro301」、材料やコーティング膜など物質表面の静・動摩擦係数と触覚評価が1台で行え、テーブル型、測定部摺動型、測定部上下摺動型と測定に応じて三つのパターンで試験機を構成することができる摩擦摩耗試験機「TL201Ts」の実機を展示した。
東陽テクニカでは、ISO 14577 Part 1~3に完全準拠しており、データの再現性を完全に維持しながら、材料の機械特性データを高速に高い信頼性で収録できるナノインデンターシステム「Nano Indenter G200」を紹介。ナノスクラッチ試験、密着強度や破壊靱性の評価などに対応、粘弾性測定や疲労試験といった動的試験への応用も可能なことなどをPRした。このほか低加速電圧・高コンストラストの機能に加え、高分解能化を実現したFE-SEM(走査型電子顕微鏡)や試料表面の正しい評価を行える新しいコンセプトの走査型プローブ顕微鏡(SPM/AFM)の紹介などを行った。
オミクロン ナノテクノロジー ジャパンは、HYSITRON社製のナノインデンテーション装置「TI950 Tribo Indenter」を紹介。走査型プローブ顕微鏡(SPM)機能による表面形状像、ナノインデンテーション、ナノスクラッチ、ナノウェアなどの標準装備のほか、ナノインデンテーション装置技術を応用して微小構造物や薄膜をそのままの状態で粘弾性評価を行える「ナノ領域粘弾性測定」や、異なる荷重領域の二つのヘッドを並列させることでソフトウェア上の切替えのみでマイクロスケールからナノスケールまで測定できる「高荷重インデント」のオプションについての解説を行った。
現在、自動車産業が好調なこともあり、新企画として「ドライプロセスによる自動車向け表面処理ゾーン」が設置されるなど時流に合わせた出展が多数見られたほか、「バイオ・医療に貢献する先端表面技術」、「MRJの挑戦 ~国産旅客機を世界の空へ~」といった未来を見据えた新産業に関する講演なども行われた。表面改質は、様々な処理方法によって新たな機能を付与することが可能な技術であり、その特徴からあらゆる分野で適用の可能性がある。こうした展示会で、今まで適用のなかった分野の需要を掘り起こし、全体の処理数量を拡大させ続けることが日本製造業の競争力向上につながるものと思われる。