メインコンテンツに移動
SEMICON Japan 2024

 

第31回素形材産業技術賞、日産自動車の溶射と日立金属のPVDコーティングが受賞

 素形材センターは11月6日、東京・芝公園の機械振興会館 大ホールで「第31回素形材産業技術表彰」の受賞式を開催した。表面改質関連では、経済産業大臣賞に水江保晴氏(日産自動車)「ミラーボアコーティングによる鋳鉄ライナーレスアルミニウムダイカスト製シリンダブロックの開発」、素形材センター会長賞に本多史明氏(日立金属)「高張力鋼板プレス成形金型用PVDコーティングの開発」が受賞した。

 同賞は、素形材産業の技術水準の進歩向上に貢献した技術の開発者等を表彰する制度。素形材産業の重要性等を広く社会一般に周知し、素形材業界の活性化を図るために行われている。今回は、経済産業大臣賞1件、中小企業庁長官賞1件、経済産業省製造産業局長賞1件、素形材センター会長賞4件、奨励賞8件が選定された。

表彰される水江氏表彰される水江氏 経済産業大臣賞を受賞した水江氏らの技術は、従来の鋳鉄ライナーに代わり、ミラーボアコーティングという薄い溶射膜(t=0.2mm)を採用することにより、ピストンの摺動抵抗を低減、熱伝達の向上といったエンジンのエネルギー効率化と軽量化を同時に実現させた。薄い溶射膜は、アルミニウム母材加工面の鋳造欠陥を転写するため、シリンダブロックの主力量産工法であるダイカスト法において、短時間充填・高真空化・油性離型剤・型温コントロールといった鋳造技術開発を行うことにより、品質課題を解決し量産化を成功させた。

表彰される本多氏表彰される本多氏 素形材センター会長賞を受賞した本多氏らの技術は、高張力鋼板のプレス成形金型において、高面圧化での耐摩耗性向上をコンセプトとしたAlCrV系窒化物からなる高張力鋼板プレス金型用PVDコーティング。この技術「Tribec 炬」は、高温化で被膜の過剰な酸化摩耗を抑制すると同時に、被膜中のV成分が被膜表面に酸化物を形成することで被加工材との凝着摩耗を防ぐ。また、このV酸化物は摺動中に被加工材表面に形成されるFe酸化物と反応し、摩耗粉などの噛み込みによるアブレシブ摩耗を抑制する効果も担う。これらにより、高張力鋼板におけるプレス成形金型の寿命を向上した。また同技術は、冷間プレスに限らずホットスタンプ成形で要求される被加工材のめっき凝着や熱的損傷の抑制にも効果的であり、幅広く使用できる被膜である。

 また当日は、素形材産業に関係する企業の従業員を表彰する「第53回素形材産業優良従業員表彰」も行われ、表面改質関連では日本電子工業・田宮美明氏、メタルヒート・佐藤貴一氏、東研サーモテック・白坂守尊氏、オーネックス・井本喜文氏が表彰された。

 今回の素形材産業技術賞の開発技術、受賞者一覧は以下のとおり。

経済産業大臣賞

「ミラーボアコーティングによる鋳鉄ライナーレスアルミニウムダイカスト製シリンダブロックの開発」
開発代表者:水江保晴 氏(日産自動車)
共同開発者:木村亮介 氏、滝沢 佐知雄 氏、高橋正也 氏(同)

中小企業庁長官賞

「大幅な工程短縮を実現した割裂プレス加工技術の開発」
開発代表者:関 正克 氏(関プレス)
共同開発者:杉田政道 氏、石 祐司 氏、渡邊和博 氏、門馬 洋一郎 氏、三浦秀恒 氏(同)

経済産業省製造産業局長賞

「リチウムイオン電池電極加工用超精密・長寿命打抜き金型の開発」
開発代表者:野上哲也 氏(野上技研)
共同開発者:鈴木英幸 氏、萩野谷 厚 氏(同)

素形材センター会長賞

「サーボプレスを活用した低周波振動付与パルス鍛造の開発」
開発代表者:末岡愼弘 氏(アマダマシンツール)
共同開発者:堀江 喜美雄 氏、山本 一 氏、坂口 稔 氏、曽我充正 氏(同)

「扇型支持ロッド式2ポイントサーボプレスの開発」
開発代表者:小林信彦 氏(太陽工業)
共同開発者:小平直史 氏、三井太郎 氏、植松安彦 氏、西條甲一 氏、小平裕也 氏(同)

「鋳造歩留りを向上させる空気断熱押湯スリーブの開発」
開発代表者:城田大資 氏(城田鋳工)
共同開発者:川島浩一 氏(マツバラ)、曽根孝明 氏(瓢屋)、五家政人 氏(同)

「高張力鋼板プレス成形金型用PVDコーティングの開発」
開発代表者:本多史朗 氏(日立金属)
共同開発者:井上謙一 氏(同)

奨励賞

「1.2GPa級ハイテン材の常温プレス成形技術の開発」
開発代表者:山口信幸 氏(日産自動車)
共同開発者:德光偉央 氏、吉田 健 氏、石内 健太郎 氏、福原恵美 氏、岩崎 剛 氏(同)

「超微細粒ステンレス鋼極細線の超精密医療機器部品への展開」
開発代表者:小松隆史 氏(小松精機工作所)
共同開発者:鳥塚史郎 氏(兵庫県立大学)、村松 榮次郎 氏(物質・材料研究機構)、花村年裕 氏(同)

「多品種少量生産向き低圧鋳造設備の開発」
開発代表者:望月 城也太 氏(トウネツ)

「エアレーション方式水平割抜枠造型機の開発」
開発代表者:波多野 豊 氏(新東工業)
共同開発者:高須修司 氏、小宮山 貴之 氏、都築修一 氏、小野尚宏 氏(同)

「鉛フリー銅合金鋳物「ビワライト」」
開発代表者:寺村正和 氏(ビワライト)
共同開発者:松林良蔵 氏(同)、古川昌孝 氏(滋賀バルブ協同組合)、小林 武 氏(関西大学)、丸山 徹 氏(同)、阿部弘幸 氏(滋賀県東北部工業技術センター)

「しゅう動部材用硫化物分散鉛フリー銅合金の開発」
開発代表者:平井良政 氏(栗本鐵工所)
共同開発者:宇佐美 初彦 氏(名城大学)、佐藤知弘 氏(関西大学)、丸山 徹 氏(同)、宮本 一 氏(栗本鐵工所)、小川耕平 氏(同)

「糖類粘結剤と過熱水蒸気を利用した鋳型造型法の開発」
開発代表者:井出 勇 氏(リグナイト)
共同開発者:関徹 氏、西田伸司 氏、早藤孝平 氏、平松潤子 氏(同)

「低損失磁心用鉄粉の開発」
開発代表者:北条啓文 氏(神戸製鋼所)
共同開発者:谷口祐司 氏、三谷宏幸 氏、赤城宣明 氏、上條友綱 氏(同)