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SEMICON Japan 2024

 

第8回岩木賞に秋田県産技センターや寺山氏(神港精機)らが決定

 トライボコーティング技術研究会、未来生産システム学協会(NPS)などからなる岩木賞審査委員会(大森 整 審査委員長)は、「第8回 岩木トライボコーティングネットワークアワード(岩木賞)」を発表した。大賞には業績名「電界砥粒制御技術を用いた表面創成技術」で秋田県産業技術センター、優秀賞には業績名「PIGプラズマCVD装置の商品化とナノ多層DLCコーティング技術」で寺山暢之氏(神港精機)、特別賞には業績名「Unbalanced Magnetron Sputter(UBMS)法によるPtナノ粒子/カーボン電極による定電位電界式臭化水素(HBr)ガスセンサの開発」で理研計器・産業技術総合研究所が、それぞれ受賞した。

 大賞の業績は、電界砥粒制御技術を用いて小径工具の微細加工や微小量液体の攪拌といった表面創成と制御技術の産業化を産官連携で実現したもの。最少刃径0.1㎜のcBN製小径ボールエンドミルへの同技術の適用では、電界で砥粒を刃先に集めて仕上げ加工することで滑らかな刃先表面を創成、高級腕時計の金型に適用できる小径ボールエンドミルを製品化したことが評価された。また、がんの診断支援のための免疫組織染色に電界攪拌技術を応用したことで、診断時間の短縮や診断精度の向上を実現、術中の診断支援を可能にするなど、医工連携による成果と今後の展開への期待感が評価され、大賞に輝いた。

 優秀賞の業績は、材料ガスの多量供給やガスの分解パワー向上で3μm/h以上の高い成膜レートと、密着力の強化や内部応力の緩和で最大20μmの厚膜形成などを可能にする「PIG-PECVD装置」の商品化。また、同装置によるナノ多層DLCコーティングが量産性の求められる各種自動車部品で適用が進んでいること、さらに同装置によるSiO2(H)膜がデスクトップ型血液分析装置の商品化など医工連携にも貢献できる可能性のあることが、評価された。

 特別賞の業績は、半導体工場や化学工場で使用され人体や装置に被害をもたらすHBrガスなどの酸性ガスを低濃度で選択的に検知できる「定電位電界式ガスセンサ」を開発したもの。ガスセンサを構成するPTFEガス透過膜の上に、UBMS法によりカーボン中にPtナノ粒子を埋め込んだ電極を膜厚最適化し作製。各種酸性ガスの低濃度で選択性のある検知を可能にしつつ、長期的な安定性を実現したほか、ガスの連続接触による出力低下など既存センサの欠点を克服したこと、さらにそれら性能向上に伴う新開発センサの今後の市場性などが評価された。

 岩木賞は表面改質、トライボコーティング分野で多大な業績を上げた故・岩木正哉博士(理化学研究所元主任研究員、トライボコーティング技術研究会前会長)の偉業を讃えて、当該技術分野と関連分野での著しい業績を顕彰するもの。トライボコーティング技術研究会が提唱して2008年度に創設、2011年度(第4回)からは未来生産システム学協会(NPS)が表彰事業を行っている。

 大賞は開発技術が世界的に高い水準にあり新規独創性に優れ、実用化され経済的・社会的貢献が認められる業績に対し贈られる。また、優秀賞は開発技術が日本国内で高い水準にあり新規独創性に優れ、実用化され社会的貢献が認められる業績に対して、さらに特別賞は開発技術が高い水準にあり、新規/独創性に優れ、実用化されているか、実用化の途上にあり、社会的貢献が認められるものに対して、贈られる。

 第8回岩木賞の贈呈式と受賞業績の記念講演は、2016年2月26日に埼玉県和光市の理化学研究所・和光研究所で開催される「シンポジウム:第18回トライボコーティングの現状と将来」で行われる予定。

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