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SEMICON Japan 2024

 

三菱マテリアル、切削工具の寿命を4倍以上向上するTiAlN膜を開発

Al-richコーティングを適用した切削工具「MV1020」Al-richコーティングを適用した切削工具「MV1020」 三菱マテリアル( http://www.mmc.co.jp )は、切削工具用のコーティング技術として高いAl含有比率と硬さを備えたTiAlN膜「Al-rich(アルミリッチ)コーティング 」を開発した。この技術により工具寿命が従来比4倍以上になるという。

 切削工具用のTiAlN膜においては、チタン(Ti)とアルミニウム(Al)の金属成分総量に対するAlの含有比率を高めることが、耐摩耗性や耐熱性の向上に効果的であると知られていたが、その比率が60%を超えると、これらの特性を低下させる軟質のアルミナイトライド(AlN)相が析出しやすいという問題があった。そのため、同社では、従来よりも高いAl含有比率においてもAlN相が生じず優れた切削性能を発揮するTiAlN膜を開発し、切削工具に適用していた。今回はさらに高いAl含有比率においてもAlN相の析出抑制を可能とし、膜硬さを維持することで従来比4倍以上の長寿命化を実現した。

 被膜のAl含有比率が従来製品と比較し大幅に高くなっていることから、刃先が極めて高温になる高速切削や高送り切削等の高能率切削においても、膜表面に耐酸化性に優れるAlの酸化物を形成しやすく、これが保護膜となって超硬合金母材の酸化を抑制するとともに高い硬さを維持する。また、耐酸化性を高める目的で従来使用されているAl2O3等の酸化物膜はチッピングしやすいという欠点を持っていたが、開発技術では窒化物をベースとした酸化物層が形成されるため、膜の強度が高くチッピングを起こしづらい特徴を有する。

 加えて、従来のTiAlN膜と異なりナノレベルの結晶組織構造を制御しており、この組織構造により、膜へのクラック生成および生成後のクラック進展を抑え、膜の破壊を伴う工具損傷を抑制することができるという。

 同社では、このコーティング技術を応用した製品の第一弾として、ミーリング加工用のコーテッド超硬新材種「MV1020」を3月10日に販売開始した。