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SEMICON Japan 2024

 

NIMSなど、ZnOコーティング施した高性能ベアリング

ZnOコーティングを施したベアリングボールを組み込んだベアリングZnOコーティングを施したベアリングボールを組み込んだベアリング 物質・材料研究機構(NIMS、 http://www.nims.go.jp/ )と東北大学は、NIMSが独自に開発した環境に優しい低摩擦材料である酸化亜鉛 (ZnO) について、その低摩擦特性を保持したままベアリングボールにコーティングする技術を開発し、ベアリングの摩擦係数を約2/3に低減させることに成功した。また、このベアリングを小型ジェットエンジンに搭載することにより燃料消費量を1%削減し、FOXコーポレーションと共同で、災害時用の小型ジェットエンジン発電機を開発した。

 地球環境・エネルギー問題が深刻化するなか、エンジンなどの駆動機構で発生する摩擦を低減することは、省エネルギー化につながる。一方、エンジンの中の駆動部は高温環境に曝されることから、耐熱性が要求される。研究グループは、摩擦低減効果と耐熱性を併せ持つ酸化亜鉛 (ZnO) に注目し、ZnOの低摩擦現象が発現する仕組みをナノレベルで解明し、結晶配向性を制御することにより低摩擦のZnOコーティングを作製する基盤技術を構築してきた。

 今回、これら基礎技術の実用化を目指して、市販されているベアリングのさらなる低摩擦化を試みた。籠状のサンプルホルダにベアリングボールを入れて回転させることで、結晶配向性を制御しながら球状のベアリングボール上にZnOをコーティングする技術を開発し、市販の高性能ベアリングの摩擦係数を約2/3に低減することに成功したという。このベアリングを小型のジェットエンジンに組み込んで性能評価を行なった結果、燃料消費量が1%低減された。そこで燃料の調達が困難な災害時用発電機の小型化に取り組み、ZnOコーティングしたベアリングを搭載した小型ジェットエンジン発電機の開発にも成功した。重量は40kg程度と大人2人で運ぶことができる程度の重さながら、およそ家庭2軒分の消費電力にあたる8000Wの出力を取り出すことができ、今後、災害時の非常用電源として展開する予定だという。

 今回開発した低摩擦ZnOコーティングは、常温から高温まで、かつ、油中、真空中、大気中において幅広く使用できるため、ベアリングへの応用に留まらず、低摩擦化が必要なあらゆる駆動部への応用が期待できる。今後、自動車などの多くの駆動部にこの技術を適用していくという。

ZnOコーティングされたベアリングボールの断面TEMZnOコーティングされたベアリングボールの断面TEM