不二WPC、「超絶 凄ワザ!」滑らせ対決でNIMSに勝利
不二WPC( http://www.fujiwpc.co.jp/ )は、NHK総合テレビの番組『超絶 凄ワザ!』の「究極の滑~るBAR対決」(11月12日、11月19日放映)で物質・材料研究機構(NIMS)と対戦、潤滑下、無潤滑下の両条件で勝利した。
滑らせ対決の概要:滑らない鉄vsステンレスをいかにすべらせるか
同番組は、世界に誇る日本のものづくりを支える技術者や職人が、不可能とも思えるテーマでそれぞれの技術を競うもので、今回は、バーカウンターをイメージした幅1m、全長15mのステンレスのカウンターの上を、不二WPCとNIMSの各挑戦者が、表面を工夫した2.0㎏の鉄製コースターを350gのウイスキーグラスを載せて滑らせ、滑走距離を競った。公平な対戦環境を実現する目的で、鋼製コースターをステンレス製カウンターの上で初速2.8m/sで真っ直ぐに押し出す「射出機」としては、アイエイアイの高精度・高剛性・高加減速の電動アクチュエータが採用された。
対戦は潤滑下と無潤滑下の2種で行われ、12日に放映された、潤滑液を使用しての対決では、最高滑り記録3m42cmのNIMSに対し、不二WPCは15mのステンレス製カウンターを滑り切り、勝利した。また、19日に放映された無潤滑下での対決では、最高滑り記録2m2cmのNIMSに対し、不二WPCは最高滑り記録10m74cmで勝利した。
ここでは、圧倒的勝利をおさめた潤滑下での対決について放映されたなかった技術を含めて報告したい。
明暗を分けた潤滑剤の供給技術
鉄とステンレスは滑らせにくい組み合わせの最たるものだ。そのため、今回の対決で勝利をおさめるには、それら2面の直接接触をいかに減らすかがキーとなる。つまり、潤滑下対決では、ステンレス製カウンターを鋼製コースターが滑走する間に、いかに油膜を切らさないかが勝負を分けることになる。
ここで、NIMSはコースターの接地面に多孔質ガラスを貼り付け撹拌機で泡立たせた潤滑液を含侵させ、毛細管現象によって、摺動面に供給させようと企図した。ところが、潤滑液が予想以上にガラスのポーラス内に保持され、供給が追い付かず、コースターは最高で3m42㎝の走行地点でスティックし停止した。
これに対し不二WPCは、WPC処理によってコースター接地面に深さの違う孔を形成するとともにDLCコーティングを被覆、孔に粘度の違う潤滑剤を保持させ、コースターの滑走中に常に潤滑剤を供給させることに成功し、15m完走した。
完走を実現した各技術の詳細について、以下に報告したい。
WPC処理による潤滑剤供給技術
コースターの接地面に潤滑剤を保持するための孔と供給するための孔をそれぞれ設けるという目的から、直径0.5mmの鋼球と0.05mmのセラミック球をメディアとして用いてWPC処理をコースター接地面に施した。これにより油だまりとなる深孔とつながって設けられた浅い孔から油が供給されるテクスチャ構造を確立した。また、接地面の摩擦を下げるために、WPC処理後にDLCコーティングを施した。
同時に、ステンレス製カウンターの歪みを考慮して、コースター接地面の外周に緩やかなテーパー加工を入れ、歪み部分との接触を回避することを試みた。
保持され供給される潤滑技術
潤滑剤は、潤滑油添加剤や潤滑油基材など幅広い界面化学品を手掛けるADEKAが協力して開発された。
設置しているコースターを加速によって油膜で分離させ、その後は部分的に接触しながらも浮かせたまま走行するという開発コンセプトから、スタート時にコースターを速やかにステンレス製カウンターから離陸させるための低粘度の潤滑剤や、コースターが傾いた場合やステンレス製カウンターのうねりなどによってコースターがカウンターに接触した場合の摩擦を小さくするための比較的高い粘度の潤滑剤といった数種類の潤滑剤が配合された。
加速によってコースターをカウンターから分離させる潤滑剤としては、蒸発性のある低粘度の組成とした。カウンターの歪みなどで接触した際の摩擦を低減し減速させずに走行し続けるための潤滑剤としては、コースター底面に油を留めるための「まとわりつく性質」や接触時の低摩擦などを含めた「油性」が高くなるような組成とし、それらをバランスよく配合した。
WPC処理とDLCコーティング、独自配合した潤滑剤の組み合わせによって、滑りを良くした状態で、潤滑剤がコースター底面で保持され、途絶えることなく供給されて、15m完走を実現できたのである。(協力:不二WPC、ADEKA)