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SEMICON Japan 2024

 

高機能トライボ表面プロセス部会、第6回例会を開催

 表面技術協会 高機能トライボ表面プロセス部会は12月16日、名古屋市中村区のウィンク愛知で、「第6回例会」を開催した。今回は応用物理学会 プラズマエレクトロニクス分科会 新領域研究会との共催で開かれた。

 分野横断的な議論を通して高機能トライボ表面のためのプロセス革新に向けた検討を行う場として、今回は以下のとおり講演が行われた。

 「マイクロ波励起高密度近接プラズマによる高速DLC成膜の開発」篠田 健太郎 氏(ブラザー工業)…DLC成膜コストを下げる手法としての「小ロット連続加工成膜装置」を成立させる三次元形状部品の表面に超高速で成膜する要件に対し、高硬度の高速(100μm/h)成膜が可能なマイクロ波励起高密度近接プラズマ(MVP)法に着目。MVP法を用いて180秒でDLC成膜可能なプロセスを開発し、工業用ミシンの摺動負荷が大きい部品に成膜し実機耐久試験をクリアする品質であると確認。一方で、より低コストの成膜システムを目指すには、生産性(成膜レート)の一層の向上が必要とした。

 「PVD法による厚膜化の現状とピストンリングへの応用」小野田 元伸 氏(日本ピストンリング)…地球環境保全からクロムめっきリングからガス窒化リング、PVDリングへと変遷した経緯を説明、PVD被膜の開発、改質経緯について述べた。爆発にさらされるリングは緻密な膜だけでは層間はく離が起こりやすいことから、ポーラスで応力を緩和させ靭性を高めた被膜と緻密で硬い膜とを積層し、耐摩耗性と靭性を両立したナノ積層・新PVD被膜を開発したことを報告。また今後のドライ複合被膜の例として、初期なじみ性、耐スカッフ性に優れるDLCと、耐摩耗性に優れ、高靭性・高ヤング率のPVD膜を積層させ、耐摩耗性とすべり性の良好な被膜を示した。

 「DLC膜による超低摩擦特性の自動車エンジン部品への応用と展望」加納 眞 氏(KANO Consulting Office)…自身が開発に携わってきたエンジン摺動部品へのDLC適用の進展状況を概説したほか、エンジン油潤滑下でのDLCの摩擦特性として、特にta-CとGMO添加PAOの組み合わせによる超低摩擦特性発現について豊富な試験データをまじえて紹介した。今後の実用化展望としてはピストンなどアルミ基材にタングステン微粒子ピーニングを施しa-C:Hを処理することで、高密着で高硬度の耐久性の高い表面改質が可能になった事例を紹介。①大幅な製品性能向上につながる超低摩擦特性など革新的な工業進捗性②グリーンテクノロジーである炭素元素主体の環境調和型材料③学術的に未解明で技術ノウハウが必須であり新規性・オリジナリティで差別化できる、といったDLCコーティングビジネスの拡大ポテンシャルを示した。

 「トライボマイクロプラズマの研究展開」中山景次 氏(メゾテクノロジー研究所)…摩擦接触点の隙間に発生するマイクロスケールのプラズマ「トライボマイクロプラズマ」を発見し、その全体像の撮影に世界で初めて成功したことを紹介。トライボマイクロプラズマは絶縁体、半導体、金属酸化膜を含むほとんどあらゆる材料の摩擦に伴い発生するが、プラズマの制御によって温度が上がらなくても潤滑油添加剤を活性化させたり低摩擦ポリマーを生成できるなど、摩擦低減システムの構築への応用の可能性を示した。

 「炭素系硬質膜の低摩擦発現に及ぼす大気圧プラズマ照射の影響」上坂裕之 氏(岐阜大学)…プラズマ照射によって摺動に伴う摩耗が促進され移着膜の形成を促して低摩擦につながる、というモデルを検証。数種のポリマーとDLCとをプラズマ照射下で摺動させ、摩擦係数の変化や表面分析を実施した。結果、たとえばポリアセタールとDLCの摺動ではプラズマ照射なしでは1000m程度の摺動距離の後に移着膜が形成されて摩擦係数0.07と低摩擦化したのに対し、プラズマ照射によって短い摺動距離で移着膜を形成し摩擦係数0.06の低摩擦を実現したことを報告した。プラズマ照射がなじみ過程をアシストできる可能性を示した。

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