メインコンテンツに移動
SEMICON Japan 2024

 

表面技術協会、第135回講演大会を開催

 表面技術協会( http://www.sfj.or.jp/ )は3月9・10日の二日間、東洋大学 川越キャンパスで第135回講演大会を開催、研究発表90件、ポスター発表83件、依頼講演11件が実施された。今回行われた一般講演セッションは、「エネルギー関連科学技術の将来展望と表面技術」、「透明電動膜による帯電防止処理と電極形成」、「エレクトロニクス分野におけるマイクロ・ナノ表面技術の新展開」、「日本の将来の産業と新しいめっき技術」、「金属・半導体のアノード酸化の基礎と機能的応用」、「高機能トライボ表面のためのプロセス技術」。ここでは、表面改質関連のトピカルな発表の一端を紹介する。

・「反応性スパッタリングにより作製した非晶質窒化炭素の摩擦特性」坂本 幸弘 氏(千葉工業大学)…反応性スパッタリングにより作製した非晶質CNx膜、BN膜、DLC膜の硬度と無潤滑下および潤滑油中での摩擦係数を測定し、これらの機械的特性について検討した。この結果、CNx膜およびDLC膜の大気中無潤滑状態での摩擦係数は0.2前後と低いが、BN膜は0.7程度と高いこと、油中での摩擦係数はDLC膜が0.1であるのに対して、CNx膜およびBN膜は0.05以下と優れた摩擦特性を示すことが明らかになった。

・「自動車部品用DLC膜の開発」森口 秀樹 氏(日本アイ・ティ・エフ)…同社が開発した新型のDLC膜「ジニアスコートHAM」の特徴について報告。この被膜は、同社製のアーク式PVD装置を用いた膜厚1μmの水素フリーDLC。同被膜の膜組織、電気・機械的特性、摺動特性を評価した結果、水素フリーDLC上層に網目状のDLC組織を有しsp2比率が高くグラファイト的な性質を示したこと、低粘度油中で従来の水素フリーDLCよりも優れた耐焼付き性と耐摩耗性を示したこと、従来水素フリーDLCよりも42%低い摩擦係数を示したことなどを発表した。

・「CVA法で作製したDLC膜の摩擦係数に及ぼす湿度の影響」國次 真輔 氏(岡山県工業技術センター)…高硬度膜が作製可能なCVA(Cathodic Arc Ion-plathing)法を用いてDLCに水素を含有させたta-C:H膜の各種環境下において摩擦係数に及ぼす湿度の影響について調査を行った。摩擦係数の測定には振動摩擦摩耗試験機を使用した。その結果、ta-C膜同士の線接触摩擦においての摩擦係数は雰囲気中の湿度、窒素および酸素が非常に大きな影響を及ぼしており、そのメカニズムはそれぞれ異なっていることが予想されると報告した。

・「Ni系合金多層めっき膜の形成および膜特性に関する検討」兼元 大 氏(日立製作所)…硬度、耐食性、耐摩耗性に優れためっき膜・プロセス技術を目的にニッケル(Ni)と亜鉛(Zn)に着目し、多層膜の形成を試みるとともに得られた膜の諸特性について検討した。実験で得られたNi/NiZn多層膜はNi、NiZn単膜に比べて硬質化するとともにNi単膜に比べて耐食性が向上した。また、さらなる硬質化、耐摩耗性の向上を狙いNi層を硬質化するめっき条件で作製した硬質Ni/NiZn多層膜は、硬質Ni、NiZn単膜に比べて耐摩耗性が向上することを確認した。

・「アルミニウム基材へのめっき被膜密着性におよぼす微粒子ピーニングの効果」山本 裕之 氏(東京都市大学)…難めっき材とされるアルミニウムへのめっき密着性向上を目的に前処理として微粒子ピーニング(FPP)を適用するため、FPPによって形成された改質層の硬さ試験やEPMAによる分析を行った。また、改質層へのめっき密着性について評価を行い検討した。この結果、改質層はFPPで使用した微粒子により移着した成分の存在や加工効果などにより高い硬さを示すことや、微粒子硬さが基材に対し相対的に硬いほど硬質層が厚くなること、FPPによる前処理はめっき被膜密着性向上に有効と考えられることなどを見出した。

「高機能トライボ表面のためのプロセス技術」の講演のもよう「高機能トライボ表面のためのプロセス技術」の講演のもよう