メインコンテンツに移動
SEMICON Japan 2024

 

JCUと島津製作所など、電磁波透過膜の成膜技術を開発

 JCU( https://www.jcu-i.com/ )と島津製作所( http://www.shimadzu.co.jp/ )、きもと( https://www.kimoto.co.jp/ )の3社は、関東学院大学 材料・表面工学研究所と共同で、電磁波を透過するクロム膜を成膜する技術を開発した。この成膜技術の応用により、ミリ波レーダーを搭載する自動車のエンブレムの電磁波透過膜を低コストかつ効率的にコーティングすることが期待できるという。

島津製作所の高速スパッタリング装置島津製作所の高速スパッタリング装置

 この技術は、素材の表面に特殊な塗料を使用して有機膜の下地層を形成し、スパッタリング法で下地層の上からクロムで被覆する。これを加熱すると、有機膜とクロム被膜の熱膨張率の違いから応力差が生じ、クロム被膜に極めて微細なクラック(ひび割れ)が発生する。このクラックによって、ミリ波を含む電磁波の透過が可能になる。
電磁波透過膜成膜プロセス「ELTRAコート」のイメージ 電磁波透過膜成膜プロセス「ELTRAコート」のイメージ 

 特殊な塗料を用いた有機膜の下地層の形成についてはきもとと関東学院大学 材料・表面工学研究所が共同で技術開発を行った。この特殊な塗料の塗布やクロムスパッタリングは、島津製作所の装置や技術を利用して実現した。JCUは、この成膜プロセスを自動車エンブレムの分野に応用することを提案したという。

 この電磁波透過膜の性能評価では、電磁波減衰率を低く抑えられることが確認されている。既存のミリ波レーダーが使用する周波数76GHz帯もしくは将来実用化が期待される周波数79GHz帯、いずれにおいても、従来のインジウムを用いる方法と比較して最大50%のコスト削減を実現しながら同程度の電磁波減衰率を実現した。

 ミリ波レーダー搭載用のエンブレムへの電磁波透過膜の成膜は、海外企業が開発したインジウム蒸着手法が主流となっている。新しい電磁波透過膜の成膜プロセスを「ELTRA(エルトラ)コート」と名付け、島津製作所が技術や装置を提供する事業を開始した。