東レ( http://www.toray.co.jp )は、新たな分子設計技術と架橋技術により、高い耐薬品性や耐熱性を実現しながら170℃の低温硬化ができ、かつ残留応力が従来の低温硬化型材料の約半分となる13MPa以下のポジ型感光性ポリイミドコーティング材「フォトニースLTシリーズ」を開発した。
微細化、高速化が進む次世代半導体デバイスでは、信頼性と歩留まり向上のため低温硬化・低応力な保護膜が必要とされており、これに適した感光性コーティング材料が求められている。これまでも200℃程度で硬化できる感光性材料はあったが、低温処理への要求はさらに強まっており、具体的には170℃程度で硬化できる材料が期待されていたという。
また、これまで低温硬化型材料は、露光した部分が不溶化するネガ型のものが主流だったが、半導体分野では、より高い解像性が得られることから、露光した部分が可溶化するポジ型の感光性ポリイミドへの要求が高くなっていた。
ネガ型の場合は、露光した部分が架橋反応を起こし、現像処理で残るために、耐薬品性や耐熱性の向上が比較的容易である一方で、ポジ型は光分解反応を用いるために、光反応による物性の向上ができないことが大きな課題となっていた。
同社が今回開発したポジ型ポリイミドは、新たなポリイミドの分子構造設計とともに、パターン加工時に加える120℃の熱処理では反応せず、また、170℃で充分に反応する独自の架橋剤設計を行うことにより、半田バンププロセスに耐える高い耐薬品性と、高い耐熱性を実現した。これにより、これまで不可能であったエポキシ樹脂と同等の170℃での低温硬化を世界で初めて実現すると同時に、残留応力13MPaとこれまでの低温硬化材料の約半分の低応力を達成し、チップ積層時に問題となるウェハーの反り量の大幅な低減を可能とした。
さらに、ポジ型の優れた解像性を有するとともに、可溶性ポリイミド樹脂との相溶性が良く、かつ汎用のアルカリ水溶液に溶解する感光成分を開発し、それらをナノレベルで均一に相溶化させることで、アルカリ現像が可能になる。
現在、半導体保護膜向けコーティング剤の市場規模は約200億円と推定され、今後も増加傾向の継続が見込まれているという。同社のポジ型感光性ポリイミドコーティング剤「フォトニース」は、高い感光性能と寸法加工精度を有する材料として広く採用されており、ポジ型感光性ポリイミドとしては世界でトップシェアを獲得している。同社は、今回開発した低温硬化型ポジ型感光性ポリイミドを新たに製品ラインナップに加えることで、次世代以降の半導体保護膜、再配線、TSVなどの新規用途開拓を推進し、ポジ型感光性ポリイミドで50%以上のシェア獲得を目指す。