nano tech 2012/ASTEC 2012開催、ライフ&グリーン・テクノロジーとしての表面改質/計測・評価技術
「nano tech 2012 国際ナノテクノロジー総合展・技術会議」や「ASTEC 2012 国際先端表面技術展・会議」、「SURTECH 2012 表面処理材料総合展」など8展が、2月15日~17日、東京・有明の東京ビッグサイトで同時開催された。
今回の8展共通テーマは、「Life & Green Nanotechnology 10-9 Innovation」。10のマイナス9乗メートルはナノメートルで、ライフ・ナノテクノロジーとグリーン・ナノテクノロジーは、ナノメートル(nm)レベルの薄膜や微粒子を使い、医療機器や医薬品、食品、化粧品など健康・安全に貢献し豊かな生活に役立つ製品や、自動車関連の次世代二次電池、LED照明、新エネルギー技術、土壌・水質浄化など環境問題の解決に役立つ製品を創出する技術。
今回は主にASTEC 2012 やSURTECH 2012ではグリーン・テクノロジーとしての表面改質技術が、nano tech 2012ではカーボンナノチューブやフラーレンなどのナノ粒子や、微粒子、微粉末、薄膜とその計測・評価技術が展示された。
ライフ&グリーン・テクノロジーとしての表面改質技術
ライフ・テクノロジーの表面改質技術として、たとえば大阪真空化学では、成形品に湿式・乾式で銅・ニッケルめっき、または塗装することでシールド効果を発現するEMIシールドを紹介、医療用機器の外装ケースなどへの適用を示した。
また、ナノテックではDLC(ダイヤモンドライクカーボン)薄膜の特性を物性により分類したICF(真性カーボン膜)を展示、優れた生体適合性から人工関節やステントなど医療機器などへの適用の可能性も紹介した。人工関節では経年による可動部分からの摩耗粉によって痛みや細胞の壊死などにつながり、置換手術後数年で、再手術を余儀なくされることがある。自身の耐摩耗性と相手材に対する攻撃性が少ないDLC膜を人工関節に施すことで、患者は長年にわたり自律的な生活を送ることができる。
グリーン・テクノロジーに貢献する表面改質として、プラズマイオンアシストでは燃料電池など各種新エネルギーの電極材料として、貴金属の代替や安価な材料の使用を可能にする導電DLCなどを出展した。
また、金型や工具の耐久性を高め省資源化につなげる表面改質として、オンワード技研では、PVDとP-CVDによる平滑・高硬度DLCコーティングや、セラミックス、チタン、フッ素コーティングなどを紹介した。
三菱電機ブースでは、環境リスクから使用が規制されてきている六価クロムを含まず、柿渋を使った化成皮膜処理技術を紹介した(アートビーム社開発)。耐食性・コストがクロメート処理と同等で、酸化クロム処理よりもコストメリットが出せるという。
神戸製鋼所では、プラズマCVDを搭載したロールツーロール方式により、ロール間で発生する放電を利用してSiOx(シリカ膜)を成膜しバリア性を生産性よく実現、太陽電池などグリーンエネルギーの高効率化を支援している。
表面改質層の試験・評価技術
DLC膜の国際標準化作業に携わるナノテックでは、DLC膜からの反射光の偏光状態から、硬さや密度と相関性がある膜の屈折率や消衰係数が求められDLC膜の膜質評価が可能で標準化に有用なツールとして分光エリプソメータを提案した。
またDLC薄膜の硬さ試験として、0.04nmの押し込み分解能、0.001μNの荷重分解能を持つため、バルク材の影響を受けずに薄膜自体の機械的強度を測定できるナノインデンターが、CSM Instruments社から展示された。同社ではまた、ステントに生体適合性を付与するDLC膜など各種コーティングの密着性をみるスクラッチテスターなどを紹介した。
東陽テクニカでは、1kVの低加速電圧で10nm以下の分解能を実現するコンパクトFE-SEM(電界放射型電子顕微鏡)を出展した。従来のデスクトップタイプSEMと比べ、電子ビームによる試料表面の帯電が非常に尐ないため、ナノ構造を被覆して埋めてしまう可能性のある導電性コートや、面分解能を落とす原因となる高電圧測定に頼る必要がなく、ガラスなど帯電しやすい試料から、高分子や薄膜、バイオマテリアルなどの電子線ダメージを受けやすい試料まで、幅広い試料の表面構造を高分解能で観察できるという。
表面改質技術は、潤滑剤に頼らずに、材料にない低摩擦特性を付与することで省エネルギー化に、優れた機械特性を付与することで材料やそれを使った部品、さらには機械を長寿命化させ、省資源化に寄与できるグリーン・テクノロジーである。また、生体適合性や耐久性などを付与することでインプラント製品などの耐久性を上げ健康で自律的な生活を支えるライフ・テクノロジーと言える。そうした表面改質技術とその開発を支援する各種試験・評価技術の発展によって、人と環境にやさしいライフ&グリーン・テクノロジーの進展を願うものである。