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SEMICON Japan 2024

 

トライボコーティング技術研究会、第1回研究会・総会を開催

 トライボコーティング技術研究会は8月28日、埼玉県和光市の理化学研究所 和光本所 生物科学研究棟 鈴木梅太郎記念ホールで「令和2年度第1回研究会および総会」を開催した。

開催の様子
開催の様子

 当日は、大森 整会長(理化学研究所)の開会挨拶に続いて、以下のとおり講演がなされた。

・特別講演「マイクロアレイ・バイオチップを用いた検査システム」伊藤嘉浩氏(理化学研究所)…被験者の傍らで医療従事者が小型分析器などを用いてリアルタイムに短時間で行うポイントオブケア検査(POCT)システムとして開発した、光固定化マイクロアレイ型バイオチップを用いた多項目検査用システムについて紹介した。バイオチップ研究の歴史について解説した後、同氏が考案した光固定化を応用したタンパク質固定化法では、様々な有機分子、生体分子からウイルス、細菌までを安定して再現性高く固定化でき、臨床検体を用いての測定に利用できることを明らかにした。臨床に応用するために開発した装置は、微量採血(検体量20μL)、41項目を同時に30分で検査できる多項目・迅速測定、ELISA法を基本とした高い定量性、全自動測定による検査の簡便性、などの特徴を持つ。このため、アレルギーのスクリーニング診断から自己免疫疾患の診断、感染症免疫履歴の診断、さらには食品分析や環境分析、化粧品分析など広い分野で応用できるほか、将来的にはAI技術を使って光固定化マイクロアレイ型バイオチップ・システムを発展させ、さらなる精密診断と医療の発展につなげたいと述べた。

伊藤氏
伊藤氏

・会員講演「英国PCS Instruments社製トライボロジー試験機」藤田浩史氏(島貿易)…同社が国内総代理店を務めるPCS Instruments社は、インペリアル・カレッジ・ロンドンのトライボロジーグループの研究者により設立され、同社が設計・開発した潤滑油評価用試験機は、トライボロジー分野で世界的なシェアを持つ。本講演では、PCS Instruments社製トライボロジー試験機として、光干渉法により潤滑油・グリースの弾性流体潤滑状態での油膜厚さをナノオーダーで自動測定できる「EHD油膜厚さ試験機」と、幅広い転がり・滑り条件下における摩擦特性を全自動で評価可能な、ボールオンディスク、ピンオンディスクタイプのベンチトップ型試験機「MTMトラクション試験機」、せん断速度が106s-1~107s-1、温度40~150℃での計測が可能な全自動粘度装置「USV高せん断粘度計」、短時間でギヤ・カム・ベアリングなどのピッチング評価が可能な3点接触型疲労摩耗試験機「MPRマイクロピッチング試験機」の各々について、概要や試験機の仕様、試験の事例などを紹介した。たとえばEHD油膜厚さ試験機を用いた試験では、基油のみの場合に比べて添加剤を入れた基油において、低速での著しい膜厚の増加があったことなどが示された。

藤田氏
藤田氏

 研究会に続いて総会が開催され、令和元年度 活動報告・会計報告がなされ、令和2年度 活動計画が発表された。役員改選では、会長に大森 整 氏(理化学研究所 主任研究員)、副会長に熊谷 泰 氏(ナノコート・ティーエス社長)と野村博郎 氏(理化学研究所 大森素形材工学研究室 嘱託)が再任された。

大森会長
大森会長

 

熊谷副会長
熊谷副会長

 また、大森会長より「第13回岩木賞(トライボコーティングネットワークアワード)」について業績の募集ならびに表彰費用賛助の募集がなされたほか、東京都板橋区主催により同区内の小中学生を対象とした「いたばし未来の発明王コンテスト」アイデア募集の案内がなされた。