マイクロ加工研究会が主宰運営するマイクロ加工懇談会は9月4日、東京都板橋区のMIC-2(板橋区立研究開発連携センター第二ビル)で、「第六十七回:マイクロ加工懇談会、第55回:マイクロ成形研究委員会」を開催した。
当研究会は、多くの先端材料に高い付加価値を与える「マイクロ加工」に対するニーズが高まる中、1998年に「マイクロ加工技術交流会」を設置、マイクロ加工分野における技術交流活動を開始。2000年からは「マイクロ加工研究会」と改称し、一層の交流の充実を目指し活動を進めてきた。さらに、2002年より「マイクロ成形研究委員会」を併設し、新しいマイクロ成形加工分野の活動を加えるとともに、近年ではマイクロ医療支援技術分野の新しい活動も取り込みながら交流を進めてきた。
当日は冒頭、代表幹事の大森 整氏(理化学研究所 主任研究員)が開会の挨拶を行った後、同じく大森代表幹事より前回のマイクロ加工懇談会でのトピックスと議論について、さらに本年8月7日に開催された第13回MIRAI会議の報告ならびに概要紹介がなされた。MIRAI会議は、当研究会のテーマであるマイクロ加工と、グリーンテクノロジーを取り扱う国際会議として毎年活発に開催されているとの説明がなされた。
その後、最近の微細加工・成形加工およびその応用に関する技術トピックスとして2件の講演が行われた。1件目の東京電機大学 松村 隆教授の「形を創り表面の機能を創る切削加工」と題する講演では、微細構造による表面機能制御の基礎的考察から、マイクロディンプルによる機能表面加工、医療応用を狙った小径線材へのマイクロ加工、Whirling切削機構によるブレード・ディンプル加工、ウォータージェットによるガラスの微細加工など多岐にわたるマイクロ加工のトピックスが提供された後、出席者との活発なディスカッションがなされた。
2件目の講演として、大森代表幹事より「ダイラタンシー現象を利用した切削工具の超スムーズ研磨加工」と題して、国際コラボレーションによる研究報告がなされた。研究は、新たに検討されたダイラタンシー・スラリーを応用して、超硬チップの超スムーズ研磨加工を目指したもので、スラリーに含有させる砥粒種や粒度、集中度(含有率)と剪断速度などのパラメータによる研磨特性を調査し、Ra15nm前後の表面粗さを得ることができたとの報告がなされた。
講演に続いて、意見交換がなされたほか、本年10月27日に開催予定の第46回 & 第47回マイクロ加工シンポジウム(次回オープンシンポジウム)、板橋産業見本市・参画行事「いたばし未来の発明王コンテスト」などの紹介がなされた。
その後、MIC-2内にある理化学研究所 大森素形材工学研究室 板橋分室の施設見学会が行われ、マイクロナノファブリケーションからAI加工に関わる研究内容が紹介された。中でも、これまで同研究グループで開発が進められてきたオンデマンド加工システム(通称、ピコマックス)に、加工条件を自動調整できるAI加工:サイバーカットシステム原形が搭載され、加工実演が行われた。今回は、意図して段差を有するワークが用意され、工具が接触しないエリアでは送り速度を自動的に上げ、接触するエリアでは加工速度を自動的に落とす動作の実演が行われ、その間、参加者による熱心な意見交換が行われた。