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トライボコーティング技術研究会、令和2年度 第4回研究会を開催

 トライボコーティング技術研究会は12月11日、東京都江東区の東京都立産業技術研究センター(都産技研)で「令和2年度 第4回研究会」を開催した。

開催の様子
開催の様子

 

 当日は、大森 整会長(理化学研究所)の開会挨拶に続いて、以下のとおり講演がなされた。
                                                            
・「ポリマーブレンドの加水分解特性と構造色について」白波瀬朋子氏(都産技研)…高分子および高分子の多様性、プラスチックの加熱時の応答による分類(熱可塑性プラスチックおよび熱硬化性プラスチック)と構造による分類(非晶質プラスチックおよび結晶性プラスチック)、ホモポリマー、コポリマーを組み合わせて混ぜて両者の特徴を併せ持った材料を作り出す「ポリマーブレンド」の技術について解説した後、原材料を100%植物とする熱可塑性プラスチックのポリ乳酸(PLLA)をベースにした、使用中は安定(分解制御)して廃棄後は分解挙動を示すポリマーブレンドの加水分解特性の研究結果を紹介した。PLLAブレンドの加水分解性では、組成に応じて分解速度を制御できること、分解後の表面に非分解性ポリマー相を形成する系においては、非分解性ポリマーを少量添加することによって分解が促進するという結果を示した。また、ポリマーブレンドの加水分解性を利用した、材料骨格と空隙(貫通孔)がそれぞれ三次元的に一体となった共連続構造を有する多孔質材料であるモノリスの創製について紹介。数nm~100nmの孔を有する多孔質体を創製、分解前の熱処理条件によって構造由来の発色現象(構造色)を呈したことを発表した。今後は、構造色の要因や表面平滑性による色の違い、吸着特性や分離特性などモノリスの用途について探求していくとした。

講演する白波瀬氏
講演する白波瀬氏


                        
・「塗装による熱処理木材の耐候性向上」村井まどか氏(都産技研)…新国立競技場など公共建築物などでの木材の利用が進む中で、変形や干割れ、変色、目やせ、カビ汚染、腐朽といった外装木材の劣化の問題に対して、木材に耐久性を付与できる熱処理木材が、耐久性と寸法安定性があり、薬品を用いずに200℃超の水蒸気/窒素雰囲気下での熱処理だけで製造できるため、環境に配慮した材料として利用が拡大していることを紹介。一方で長期の屋外暴露によって変色やひび割れ、目やせといった課題があり、美観の維持に熱処理木材保護用の塗料の開発が望まれていることから、熱処理木材の劣化機構の解析(表面割れの形態的解析や、変色を引き起こす光の波長の解析、表面割れ抑制の効果と塗膜の機械的性質の関係の解析)を行い、塗料開発に活用できる柔軟性・強度などの樹脂設計、最適な紫外線吸収剤および顔料の配合を検討した。各種評価試験から、①促進耐候試験により、表面全体に面積が小さい表面割れが発生する傾向があった、②分光照射試験により、長波長側の紫外線〜青の可視域で変色しやすい、③硬く靭性のある塗膜が表面割れの抑制効果が大きい、④塗膜のガラス転移点が表面割れの発生に影響しやすい、との結果を得た。以上より、熱処理木材用の塗料の方向性として、①硬く靭性のある塗膜が適している、②長波長側の紫外域~青の可視域をカットする紫外線吸収剤および顔料の配合が必要、③使用環境の気温と塗膜のガラス転移点の関係を考慮する必要がある、との知見を得た。

講演する村井氏
講演する村井氏

 

 講演に続いて、都産技研内のIoT開発セクター(IoT支援サイト)の見学会が行われ、IoTの製造業やレジャーでの活用事例やメリットなどについて紹介がなされたほか、IoTシステムの構成要素・全体像の解説があり、機械のセンシングデータを収集しクラウド上で各種データを利活用可能にし、異常時に管理者と機械の双方にフィードバックすることで生産性の低下を抑えるIoTによるスマート工場のメリットなどを紹介した。

IoT開発セクターの見学会のようす
IoT開発セクターの見学会のようす

 第5回研究会は、来年2月26日に埼玉県和光市の理化学研究所 和光本所における「第23回トライボコーティングの現状と将来」シンポジウムとして開催される予定。