メインコンテンツに移動
第9回ものづくりワールド名古屋

 

ナノフィルム社、SGXに上場、受託加工増強で上海第2工場稼働へ

 シンガポールに拠点を置くNanofilm Technologies International(ナノフィルム社)は昨年10月30日、シンガポール証券取引所(SGX)に上場した。新規公開株(IPO)で4億7000万シンガポールドル(約366億6000万円)以上を調達し、市場価値19億ドルとシンガポール初の技術ユニコーン企業となった。2017年以降のSGXでは、不動産投資信託を除き最大のIPOとなる。

 同社ではまた、受託成膜加工の増強を目的に本年春に上海第2工場の新設を予定。上海第1工場と合わせて、大型炉100台以上の受託加工の大量生産体制が確立される。

上海第2工場完成時のイメージ
上海第2工場完成時のイメージ

 

 ナノフィルム社は、Shi Xu博士が開発したフィルター型カソーディック真空アーク(FCVA)技術の事業化を目的に、ナンヤン工科大学からスピンアウトして1999 年に設立。高硬度ダイヤモンドライクカーボン(DLC)膜、水素フリーDLC膜であるta-C(テトラヘドラルアモルファスカーボン)膜の量産対応成膜装置の開発を機に、操業を開始した。

 FCVA成膜によるta-C膜はドロップレットの生成がなく、平滑性・均一性に優れる成膜表面を実現できることから、ハードディスクドライブ(HDD)の高記録密度化に貢献するヘッド保護膜や、ガラスレンズ金型の離型膜として適用が進んだほか、近年では、携帯端末・コピー機器などの装飾・機能膜などにも採用されている。ドロップレットの生成防止によって表面仕上げなどの後処理を大幅に軽減でき生産性向上や生産コスト低減に寄与できることや、10μm以上という厚膜・高硬度化を実現したことなどにより、近年では自動車分野でも適用が進んできている。

 現在では、シンガポール、日本、中国、ベトナムに拠点を構え、1400人の従業員を抱える。総売上も2017年に1億360万シンガポールドル(約80億8080万円)、2018年に1億2280万シンガポールドル(約95億7840万円)、2019年に1億4290万シンガポールドル(約111億4620万円)と堅調に伸びてきていた。

 ナノフィルム社ではta-C膜の量産対応FCVA成膜装置を販売するほか、成膜サービスを強力に展開している。2002年に設立された上海第1工場では、受入検査、洗浄ライン、成膜ライン、OQC、試験評価と万全な体制で、機能性膜の安定的な高性能化や装飾膜の美観の均質化などを実現。2016年には大型炉80台以上が稼働する大規模自社工場として、顧客のトータルコスト削減のため、成膜サービスのほか基材の調達、成膜後のアセンブリー等のサービスも提供している。

 成膜サービスの量産体制をさらに拡充すべく、本年春には上海第2工場を新設、稼動を開始する。上海第一工場と併せて大型炉100台以上の受託加工の大量生産体制が確立されることとなる。

 日本法人であるナノフィルムテクノロジーズ ジャパン・他力誠司社長は、「上海第2工場の稼働によって、自動車部品など量産品の受託加工に十分に対応できる体制が構築される。この機会にぜひ、均一性・再現性に優れ、表面仕上げを必要としない平滑な表面粗さのta-C膜を試していただきたい」と語っている。

今春新設予定の上海第2工場
今春新設予定の上海第2工場