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SEMICON Japan 2024

 

日本アイ・ティ・エフ、アーク放電を用いた新型のDLCコーティング装置を開発

 日本アイ・ティ・エフ( https://nippon-itf.co.jp/ )は、アーク放電を用いた新型のDLC(Diamond-Like Carbon)コーティング装置「MF720」を開発、装置販売とともに受託加工サービスを開始した。

日本アイ・ティ・エフ「MF720」
MF720

 DLC膜は摩擦抵抗が少ない膜として知られ、各種工具、金型、機械部品、自動車部品の分野で広く適用されている。DLC膜の中でも、アーク放電を用いた水素を含まない膜は、ダイヤモンドに次ぐ硬さからセラミック並みの硬さまで硬度の制御が可能で耐久性に優れているが、一方で膜表面が粗く、コーティングした部品と組み合わせた部品が摩耗してしまう場合があるため、成膜後に仕上げ研磨が必要だった。

 今回開発した装置は、膜表面の粗さを改善するため、成膜中に発生する不要な粗大粒子と成膜成分を磁気フィルターで分離し、成膜成分のみを基材側に導くフィルタードアーク方式を採用している。従来のフィルタードアーク方式は、フィルターの部分が大きく、複数のユニットを取り付けて量産性を高めるには不向きであり、またメンテナンスも大変手間のかかるものだったという。同社では、この点を重点的に研究し、コンパクトでも粗大粒子の捕獲効率の良いフィルターを開発、基材を出し入れする扉にも取り付けることができ、内部の清掃も容易な構造としメンテナンス性を向上させた。

 これにより、粗大粒子が少なく、欠陥の少ない緻密な被膜を成膜できるようになり、膜厚1μmあたりの表面平均粗さを、従来比の1/6である0.02μmまで改善した。また、本装置はカソード材料供給機構を備え、最大で膜厚20μmまでの厚膜が成膜可能。同時に開発した密着層の成膜プロセスと合わせ、膜と基材との密着性にも大変優れている。DLC膜の膜硬度も15~75GPaと広い範囲での制御が可能で、さまざまな用途に適用できる。

 装置の有効成膜エリアは直径720mm×高さ750mmと大きく、量産に使用できるサイズとなっている。現在はこのサイズ1種類のみだが、今後は小型装置のラインアップを充実していく予定。6月より機械部品、自動車部品を製造する内製メーカー向けに装置の販売を開始するとともに、順次、受託加工サービスを受け付けていく。