ヤマハ発動機( https://global.yamaha-motor.com/jp )は、静岡大学 菊池将一准教授と東京電機大学 井尻政孝助教と共同で、チタン合金表面を加熱することなく硬質な窒化層を短時間で形成させることに成功した。
軽くて強くて錆びないチタン合金は構造材料として実用されているが、チタン合金の適用範囲拡大には摩擦摩耗特性に乏しい点を克服することが不可欠となっている。そのため、窒素拡散を利用した表面硬化法が広く用いられているが、チタン合金を窒素雰囲気で長時間加熱する必要があった。
研究では、常温・大気環境で窒素含有微粒子を高速投射するプロセス(ショットピーニング)により、チタン合金表面に硬い窒化層が形成されることを明らかにした。処理時間はわずか30秒ほどで、従来手法と比較して大幅に短縮された。さらに、従来手法の課題であった加熱によるチタン合金組織の粗大化を防ぐこともできる。
窒素含有微粒子によるショットピーニングにより、窒素含有微粒子の一部がチタン合金の表面に付着し、短時間でチタン合金表面に硬い窒化層が形成されることを明らかにした。さらに、窒素含有微粒子の衝突時にチタン合金の表面組織が改質されることも明らかにした。従来手法では加熱によってチタン合金組織が粗大化したが、本研究ではチタン合金の表面組織を微細化させることにも成功した。
同社では今後、本研究で得られた成果が優れた摩擦摩耗特性と強度特性を併せ持つ多機能チタン合金の開発につながると考えており、航空機、自動車、生体医療分野などへの応用展開が期待される。