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SEMICON Japan 2024

 

表面技術協会、第73回通常総会・協会賞など各賞授与式を開催

 表面技術協会( https://www.sfj.or.jp/ )は2月28日、オンライン会議システムを利用したリモート方式により「第73回通常総会および各賞授与式」を開催した。

第73回通常総会のもよう
第73回通常総会のもよう

 会の冒頭、光田好孝会長は「コロナ禍であるため2年続けてオンラインでの開催となった。会長に就任した年は対面での総会開催となったが、この2回はオンラインとなったことをご了承いただきたい。また、皆様ご多忙の中、第73回通常総会にご参加いただき感謝する」と挨拶を述べた。

挨拶する光田会長
挨拶する光田会長

 続いて第72期事業報告、会計報告が行われた後、第73期事業計画、収支予算について審議、満場一致で可決された。事業報告では、第143回講演大会(3月4日~5日)と第144回講演大会(9月16日~17日)は新型コロナウイルス感染拡大の状況を踏まえオンライン方式で開催したこと、延期していたINTERFINISH2020 -20th Interfinish World Congress(第20回表面技術国際会議)を2021年9月6日~8日にオンライン開催したこと、日本溶融アルミニウムめっき協会からの依頼により表面技術協会が日本規格協会との窓口となり溶融アルミニウムめっき関連企画(JIS H 8642:1995、JIS H 8672:1995)の改正作業を進めていることなどを報告した。事業計画では、3月の第145回講演大会をオンライン開催とすることや9月の第146回講演大会を埼玉工業大学で開催すること、ISO/TC107からの提案事項の審議や電波遮断金属薄膜応用部品の密着力測定に関する国際標準化調査を行うことなどを確認した。

 任期満了に伴う役員改選では、今期より会長に松永守央氏(北九州産業学術推進機構 理事長)、副会長に幅﨑浩樹氏(北海道大学 大学院工学研究院 教授)、山本渡氏(山本鍍金試験器 代表取締役社長)が新たに選任された。坂本幸弘氏(千葉工業大学 工学部 教授)と久保祐治氏(日鉄ケミカル&マテリアル 常務執行役員)は前期に引き続いて副会長を務める。

 理事を代表して挨拶に立った松永新会長は「私が当協会副会長を務めさせていただいたのが第60期・61期で12年前になる。今回、総会に出席させていただいて昔とそれほど変わっておらず安心している。コロナ禍で丸2年間東京に行っていない。それ以前は月に3~4回は行っていた。こんなことは初めてだ。コロナ禍もそろそろ終わってもらいたいと思っているとともに、皆様とお会いして様々なことを議論したいと思っているので、皆様のご助力をお願いしたい」と述べた。

挨拶する松永新会長
挨拶する松永新会長

 当日の席上では、「2022年度 表面技術協会 各賞授与式」が行われ、各賞選考委員長が受賞者と業績、受賞理由を述べた。協会賞には、竹内貞雄氏(日本工業大学 基幹工学部 教授)が業績「ドライプロセスによる炭素系硬質膜の合成ならびに機械的諸特性の解明」で受賞。竹内氏は、主にダイヤモンド膜合成に関わる周辺技術の開発から基礎物性・機械的特性評価、応用評価までの幅広い領域について、先駆的な研究開発を進めてきた。独自の工夫を盛り込んだ密着力の評価試験機、摩耗試験機、疲労試験機などを製作して、ダイヤモンド膜の残留応力と摩耗特性の関係、ボロン添加と機械特性の関係、工具応用に不可欠な繰返し変形に対する疲労特性などを明らかにしてきた。さらには応用評価として、切削分野はもとより塑性加工分野におけるダイヤモンドコーテッドダイスによるステンレス鋼板の絞り加工を実現している。主たる研究成果としては①チャンバーフレーム法による高品質ダイヤモンドの合成とCL(カソードルミネッセンス)分光分析による結晶欠陥の評価②2次核形成の制御による多層構造ダイヤモンド膜の合成技術の確立と多層化に伴う破壊強度の向上効果の検証③多結晶ダイヤモンド膜に残留する圧縮応力と耐摩耗特性の関係の解明、摩耗特性を迅速に評価できる摩耗試験機の開発④ボロンドープによるダイヤモンド膜の耐摩耗性、機械特性の向上効果の検証、⑤繰返し変形を受けるダイヤモンド膜、DLC膜の疲労特性の評価、が挙げられる。これらの研究成果は同協会を中心とした学術論文として報告されている。以上のように、竹内氏はドライプロセスによる炭素系硬質膜に関する合成技術の確立、基礎特性・機械特性評価、応用評価までの一連の研究によって、表面技術の発展に顕著な貢献をしている。よって、同協会は表彰規定第4条により2022年度協会賞に相応しいと判定した。

 また論文賞では、吉兼祐介氏(奥野製薬工業)ら7名が業績「濃厚塩化カルシウム水溶液からの硬質3価クロムめっき」で受賞。この論文は、濃厚塩化カルシウム水溶液からの硬質3価クロムめっきについて検討したもの。既存浴へのホウ酸およびノニオン系界面活性剤の添加によって光沢めっき皮膜を得ることに成功し、カルボン酸を錯化剤とする3価クロムめっき皮膜と比較して炭素含有量が低く、結晶性の金属クロム相を得た。水素発生というこの濃厚塩化カルシウム水溶液の特徴より、電流効率は従来の3価クロムめっきや6価クロムめっきを大きく上回る60~70%を示した。めっき皮膜の硬度および耐摩耗性は6価クロムめっきと同等であり、加えて熱処理時の変化が小さいという点で、6価クロムめっきに対する優位性を確認している。このように本論文では、濃厚塩化カルシウム水溶液を使用し自由水を減少させることにより、電析における水素発生の抑制に成功し、さらに炭素含有量の抑制により結晶性の高いクロムめっき皮膜を実現、硬質めっきとして実用に資する皮膜特性が示されたことなどが論文賞としてふさわしい内容であると判断された。

 受賞者、業績などの一覧は以下のとおり。

協会賞

・竹内貞雄氏(日本工業大学 基幹工学部 教授)
業績「ドライプロセスによる炭素系硬質膜の合成ならびに機械的諸特性の解明」

功績賞

・川口 純氏(日本パーカライジング・日本カニゼン)
・小坂幸夫氏(東京都立産業技術研究センター)

論文賞

・吉兼祐介氏・瀬戸寛生氏・片山順一氏・長尾敏光氏(奥野製薬工業)、大澤燎平氏・北田敦氏・邑瀬邦明氏(京都大学)
業績「濃厚塩化カルシウム水溶液からの硬質3価クロムめっき」
(表面技術 第71巻 第12号 815~820頁)

技術賞

・該当なし

進歩賞

・加藤友人氏(小島化学薬品 表面技術事業部)
業績「微細配線向け新規無電解貴金属めっきプロセスの開発と実装特性に関する研究」
(表面技術 第72巻 第2号 110~116頁ほか)
・堀内義夫氏(関東学院大学 総合研究推進機構 講師)
業績「UV照射による表面改質法を用いた無電解めっきパターンの形成に関する研究」
(表面技術 第68巻 第3号 158~164頁ほか)

技術功労賞

・加藤美由紀氏(日本製鉄 技術開発本部 尼崎研究支援室)
・三澤孝夫氏(スズキハイテック 事業開発課)
・片山正人氏(清川メッキ工業 第五製造部)
・安田敬一郎氏(オジックテクノロジーズ ウエハ部兼技術部)
・冨澤 均氏(吉野電化工業 製造部)

会員増強協力者

・呉 松竹氏(名古屋工業大学 工学部 物理工学科)
・石﨑貴裕氏(芝浦工業大学 工学部 材料工学科)
・湯本敦史氏(芝浦工業大学 工学部 材料工学科)