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SEMICON Japan 2024

 

超硬工具協会、ダイヤモンドコーティングエンドミルなど協会賞を発表

 超硬工具協会( http://www.jctma.jp )はこのほど、工具業界で活躍した人や目覚しい技術開発や改善合理化を図った人を称える「平成24年度超硬工具協会賞」の受賞者を発表した。業界功労賞で故・森清氏(富士精工)が受賞したほか、技術功績賞17件、作業・事務・生産技術等の改善賞5件が選定された。

 技術功績賞でコーティングを施した主な工具、受賞者などは以下のとおり。

フライス用CVDインサート材種GX2140の開発

日立ツ-ル 開発センター技師 福永有三氏、今井真之氏、久保田和幸氏
日立ツール「GX2140」日立ツール「GX2140」①技術の特徴
ミーリング加工での高能率加工による低コスト化と、高速乾式加工による長寿命化が図れるCVDコーティング技術を適用した切削工具である。その目的を達成すべく、工具すくい面、逃げ面における耐摩耗性、ならびにCVD技術の短所であった耐欠損性を改善させたCVD被覆技術を開発した。この技術を用いて、上記の耐摩耗性と耐欠損性に優れた高寿命のコーティングインサート工具の量産供給を開始した。
②新規性/独創性
工具寿命を支配する耐摩耗性は、コーティング工具の場合、その膜厚が大きく影響を及ぼす。 従来より厚膜の成膜が行えるCVD膜の適用が検討されたが、耐欠損性に課題が残り適用拡大が進まなかった。今回、新技術開発によるTiCNの微細化柱状組織・硬質皮膜により、耐摩耗性と耐欠損性を改善し、更にアルミナ結合膜改善により密着性を向上し、特に高速乾式加工で従来CVD膜比較で1.7~2.5倍の高寿命化を図り、高能率加工を実現した。
③協会に対する啓発度
炭素鋼をはじめとした軟鋼のミーリング加工における荒加工での高能率加工において、特に問題となる工具すくい面、逃げ面に発生する摩耗が大幅に抑制され、加工コストの大幅低減に貢献した。さらには、従来のCVD技術の短所とされていた耐欠損性を大幅に改善し、CVD技術の進歩に貢献した。 また、高速高送り加工を可能としたことで、加工時間の短縮によるコスト低減に貢献した。

高硬度鋼用コーテッドCBN材種BC8020の開発

三菱マテリアル 清水博康氏、小口史朗氏、宮下庸介氏
三菱マテリアル「BC8020」三菱マテリアル「BC8020」①技術の特徴
本製品は高硬度鋼加工の汎用材種として、特に切込、送り量が大きい高負荷加工や断続加工においても優れた切削性能を発揮することを目的として開発されたコーテッドCBN材種である。この為に、従来の汎用コーテッドCBN材種に対して本来トレードオフの関係にある耐摩耗性と刃先靭性を同時に向上させた点に大きな特徴を持つ。
②新規性/独創性
従来コーテッドCBN材種では高負荷加工や断続加工において、特にクレータ部から欠損する事で寿命が充分でない場合があった。これを改善するために高靭性CBN粒子と耐クレータ摩耗性の高い高純度TiNをベースとしたバインダーを採用したが、これだけでは焼結性に課題があった。そこで独自技術である『粉体活性焼結法』を改良し、焼結阻害因子をさらに低減する事で焼結性を向上させたことに新規性がある。
③協会に対する啓発度
従来コーテッドCBN材種に対して耐摩耗性では約1.2倍、刃先靭性では約1.3倍の性能を実現した。加工条件の高負荷化や高効率化によって加工時間の短縮および電力削減などで、社会・顧客に貢献できる製品を提供した。

超硬合金加工用ダイヤモンドコートエンドミルの開発

ユニオンツール 渡邉英人氏、渡辺裕二氏
ユニオンツール「UDCLB」ユニオンツール「UDCLB」①技術の特徴
本開発は超硬合金金型の製作におけるコスト削減とリードタイム短縮を狙ったものである。
 従来、超硬合金の金型製作は放電加工やダイヤモンド砥石を用いた研削加工が用いられるのが一般的である。放電加工では電極製作の手間や電極の消耗による生産コスト増加、また研削加工では加工精度の問題や異形加工が困難であるなど、超硬合金の金型製作においては様々な問題がある。
 その問題に対し、本開発によるダイヤモンドコーティングエンドミルでは従来では不可能であった深い切込み量での加工ができ、超硬合金を鋼材のように“サクサク”と通常のマシニングセンターで高精度に加工することが可能となった。
②新規性/独創性
超硬合金の切削工具としては、単結晶ダイヤ、多結晶ダイヤ、CBNを母材とした工具や電着工具が一般的である。その中でも、単結晶、多結晶ダイヤにおいては工具単価が非常に高く、単結晶・多結晶ダイヤ、CBN工具における切込み量は数μm単位での加工しかできない。また、電着工具では摩耗により高精度な加工が不可能である。
 本開発のダイヤモンドコーティングは、コーティング前処理を改善し工具超硬母材との密着性を高め、さらに膜組織を工夫することにより耐摩耗性を飛躍的に高めた。それらにより、切込み量を百μm単位で加工することが可能となった。また、耐摩耗性の向上により一般的な鋼材と同じ高精度な加工が可能となった。
③協会に対する啓発度
超硬合金を通常のマシニングセンターで鋼材のように高精度に削れることにより、超硬合金金型を放電加工を使わずに製作することが可能となり、電極製作の削減、リードタイム短縮、金型精度の向上に寄与できた。