メインコンテンツに移動
SEMICON Japan 2024

 

NIMSなど、金属酸化膜トランジスタの開発に成功

 物質・材料研究機構(NIMS、 http://www.smm.co.jp )国際ナノアーキテクトニクス研究拠点の塚越 一仁 主任研究者、生田目 俊秀 統括マネジャーらは、理化学研究所ナノサイエンス研究施設 柳沢 佳一テクニカルスタッフと共同で、従来にない原子材料構成による金属酸化膜トランジスタの開発に成功した。

試作素子の光学顕微鏡写真と模式図:室温基板に対して、DCスパッタでIWOターゲットから薄膜をSiO2/Si基板上に成膜し、電極を形成したのちに100℃にて熱アニールを行った。基板上の電極をソース・ドレイン電極とし、基板をゲート電極として特性を計測。試作素子の光学顕微鏡写真と模式図:室温基板に対して、DCスパッタでIWOターゲットから薄膜をSiO2/Si基板上に成膜し、電極を形成したのちに100℃にて熱アニールを行った。基板上の電極をソース・ドレイン電極とし、基板をゲート電極として特性を計測。

 NIMSらは、酸化インジウムに酸化タングステンを極微量添加するだけで、薄膜トランジスタとして動作するIWO薄膜を開発した。開発した材料には、アモルファス状態で制御が難しい元素であるガリウムや亜鉛を含まない。また、この新材料は、基板加熱などなしに低エネルギーでスパッタ成膜するだけで、均質なアモルファス膜を作ることができることから薄膜化が容易であり、従来よりも薄い膜厚10nmで保護膜なしの構造であっても、高い特性を有するトランジスタとして動作するという。このため、原料単価の高いガリウムを省けるだけでなく、薄膜原料量も減らせることから材料コストを低減する効果もあり、製造効率も向上する。

 今回の成果は、爆発的に普及が進んでいるスマートフォンでのバッテリーの大きな消費源であるディスプレイの低消費電力化に有効なだけでなく、テレビの高精細化のための周波数向上に有効な技術として期待される。

 金属酸化膜トランジスタは、現在のテレビ、コンピュータ、スマートフォンなどのフラットパネルの画素をスイッチするアモルファスシリコントランジスタの次世代材料として、研究・技術開発が進められている。現状のアモルファスシリコントランジスタを用いたディスプレイでは、高精細化やタッチパネル化によって消費電力が激しく増加している。その特性の改善には限界があることから、アモルファスシリコン薄膜に代わる新材料が必要とされていた。

 近年、インジウム、ガリウム、亜鉛、を酸化させて混合したターゲットからつくるIGZO膜トランジスタが高い電界効果移動度で動作することが発見され、実用化展開のためのプロセス開発が進められている。しかし、金属酸化膜を半導体薄膜としてトランジスタ化するためには、材料の酸素や水分に対する制御が極めて難しく、これらの制御開発が課題となっていた。このために、扱いやすい原子で構成される新たな金属酸化膜で、トランジスタ動作が可能な材料の探索が続けられていた。