東京都立産業技術研究センターと表面技術協会の表面改質・硬化部会、材料機能ドライプロセス部会、電鋳・金型の表面処理研究部会は11月7日、東京・青海の東京都立産業技術研究センター本部 東京イノベーションハブで、“高イオン化”スパッタリング技術(通称HiPIMS:High Power Impulse Magnetron SputteringまたはHPPMS:High Power Pulse Magnetron Sputtering)をテーマに、公開シンポジウム「ドライプロセスの新潮流ー次世代“高イオン化”スパッタリング技術交流会ー」を開催、約120名が参加した。
放電の極短パルス化により瞬間電力をDC放電より1、2桁上げるHPPMS/HiPIMSの技術は、マグネトロンスパッタリングの長所にアーク蒸着法の特徴である高いイオン化率による成膜の長所を付加、密着性が良好で緻密で平滑なコーティングを実現する。今回のシンポジウムでは日本国内外の研究者により以下のとおり講演が行われ、HPPMS/HiPIMSを用いることでDLC膜の高密度化や高sp3化(水素フリー化)など膜質をコントロールできることや、HPPMS/HiPIMSの短所である低い成膜レートを改善する装置技術や高密度プラズマ生成の電源技術などが紹介されたほか、切削工具への適用では高硬度と高い残留応力の付与で加工性能を改善できる可能性が示された。
「基調講演1 大電力パルススパッタとプラズマ電位制御による薄膜構造の変化」中野 武雄 氏(成蹊大学理工学部)
「基調講演2 Highly Ionized Carbon Fluxes Obtained using HiPIMS for Deposition of DLC」Ulf Helmersson氏(Linkӧping University)
「招待講演1 高出力パルスマグネトロンスパッタ法で発生したイオンと中性種の組成の時間変化とエネルギー分析」戸名 正英 氏(アヤボ)
「HiPIMS2012 国際会議参加報告」清水 徹英 氏(首都大学東京システムデザイン学部)
「基調講演3 HiPIMS-innovation in Process Engineering and Coating Development」Jones Alami 氏(INI Coatings)
「特別講演1 HPPMS,UBMS,AIPプロセスにおける皮膜特性および相対イオン化率の比較」廣田 悟史 氏(神戸製鋼所)
「特別講演2 An Innovative Approach to New Hybrid Coatings based on HiPIMS Technology」Jörg Vetter 氏(Sulzer Metaplas)
「招待講演2 Latest Developments using HiPIMS and Superimposed Pulse Power Technology( SIPP )」Güenter Mark 氏(MELEC)
「特別講演3 Plasma Diagnostics in High Power Impulse Magnetron Sputtering Discharges」Yolanda Aranda Gonzalvo 氏(Hiden Analytical).
「特別講演4 大電力パルススパッタによる真性カーボン膜(ICF)製造技術と応用
-DLCから進化した高機能膜ICF-」平塚 傑工 氏(ナノテック)
「特別講演5 Characterization of Hard Coatings Deposited by HiPIMS System and Their Cutting Performance」Saleh Abusuilik 氏(日立ツール)
講演会の終了後は、上記の講演者と講演ポスターを交えた懇談会「ポスター交流会」が開催された。
講演のもよう