NDF、DLC国際標準化の最新動向を解説するセミナーを開催
ニューダイヤモンドフォーラム(NDF、 http://www.jndf.org )は3月4日、東京都目黒区大岡山の東工大蔵前会館で、「DLC標準化特別委員会 セミナー ―DLC国際標準化と技術動向の最前線―」を開催した。
冒頭、挨拶を行った中森秀樹氏(DLC標準化特別委員会 委員長、ナノテック 代表取締役社長)は、3月15日にISOとして正式に登録されるISO18535(DLC膜のボールオンディスク法による摩擦摩耗試験規格)までの同委員会の活動経緯を述べてから、「DLC標準化特別委員会はDLC膜の国内企業への啓蒙のほか、DLCにおける国内のISO審議団体としての活動が加味される。内容としては、DLC膜の規格登録に関する維持・管理、国内企業発展のためのさらなるDLC膜の規格登録の推進が挙げられる。具体的には、ISO/TC107(金属および無機質被膜)国際会議での他国からの規格修正要望や、関係各国との同意・承諾・調整等の交渉が必要になる。さらに、経済産業省の方針に国際標準化の幹事国引き受け数の増加があり、日本が多くの分野でTCの幹事国となるための組織作りが必要となる。これらの理由により、当委員会は、より幅の広い対応ができる責任ある独立した組織として、2017年度より一般社団法人DLC工業会へと改組し、NDFと協調しながらDLC膜の国内普及に邁進する予定である」と続けた。
基調講演では、大竹尚登氏(東京工業大学 教授)が「DLC国際標準化と技術動向の最前線」と題して講演。DLCの量産機械部品に対しての適用拡大やクロムめっき代替として使用されるには1/2~1/10のコストダウンが求められることや、1分あたり1μm以上の高速化と厚膜化が必要になると話した。また、今後さならなるDLC膜の高機能化を図ることが必要とし、表面や界面を含む膜の設計が重要になり、これにより機械的機能と化学的機能を高い次元で併せ持つ膜の開発などに期待を寄せた。標準化に関しては、DLCを含む炭素膜の分類を確定すること、学術的な分類と産業的分類の納得できる関係の構築が必要であるとして、産業における適材適所のためにも必要であると見解を示した。
続いてシュピンドラー千恵子氏(ナノテック 常務取締役)が「DLC国際標準化の動向」で登壇。DLCの標準化で取り組んでいる3項目に関しての状況を述べた。最も進展しているDLC膜のボールオンディスク法による摩擦摩耗試験の規格化については、日本が提案した内容について賛成13カ国、反対0カ国で規格FDIS(ファイナルドラフト)が承認され、DLC関連としては世界初となるISO規格(ISO18535)が3月15日に発行されることを報告した。またDLCの分類提案(カーボン膜全体で6種類)についてもドイツとの共同提案により現在進行中で、今後約2年でISO化を目指すという。さらに、DLC膜の分光エリプソメトリによる光学測定評価法についても今年中に規格提案を行う予定だ。加えて、2017年1月に千葉県柏市でISO/TC107国際会議が行われることを発表した。
引き続き、平塚傑工氏(ナノテック 表面分析センター 試験所長)が「DLC膜評価試験の国際標準化と適用事例」で講演。非破壊で短時間の定量試験により、膜厚や屈折率、消衰係数をモデル式とのフィッティングにより算出する分光エリプソメトリによる光学測定について解説を行った。講演では、実例として様々な成膜法でコーティングしたシリコンウエハ上のDLC膜の測定結果を公開し、インデンテーション法による硬さとの相関関係などを各膜種について示した。現在ISO提案が進んでいるDLCの分類において簡易に実施できる評価法として提案を行っていく。また、ISO18535の規格内容や測定事例についても解説を行った。
こうしたDLCにおける国際標準化の動向のほか、馬渕 豊氏(日産自動車 材料技術部)「エンジンの省燃費化に向けたDLC膜の適用開発」、瀧 真氏(オンワード技研)「T型フィルタードアーク法で成膜した硬質DLC膜について」、平栗健二氏(東京電機大学 教授)「DLCコーティングが創製するバイオマテリアル―高機能DLCコーティングの標準化―」の最新技術動向についての発表も併せて行われた。
※DLC国際標準化の記事は下記URLにまとめてあります。
「DLCの規格・標準化の現状」
https://surface.mechanical-tech.co.jp/node/730