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メカニカル・テック配信ニュース

日産、EV救急車がゼロエミッション東京の実現に向け東京消防庁で稼働開始

3年 10ヶ月 ago
日産、EV救急車がゼロエミッション東京の実現に向け東京消防庁で稼働開始kat 2020年5月29日(金曜日) in

 日産自動車は、東京消防庁池袋消防署へ納車した日本初のゼロエミッション(EV)救急車が稼働を開始したと発表した。

ゼロエミッション(EV)救急車

 

 車両サイズは全長5548mm、全幅2070mm、全高2499mmで車両総重量は3.5t、乗車定員は7名。モーターは最大出力55kW、最大トルク220Nmで、駆動用バッテリーは容量33kWh、充電AC200V 最大 7kw 普通充電(タイプ2)。装備品用バッテリーは容量 8kWh、充電AC100V 1.5kW。駆動方式は前輪駆動。

 本車両は、東京都が推進する「ゼロエミッション東京」の取組みの一環として、東京消防局に初のゼロエミッション(EV)救急車として導入されたもので、同車は池袋消防署のデイタイム救急隊で運用される予定。

 本車両は、救急隊員の負担を軽減するための電動ストレッチャーや、すべてのシートに乗員の安全性を向上させるシートベルトが装備されている。

 また、救急車には患者や隊員の身体的な負担軽減が求められることや精密医療器具を搭載する必要があることなどから、静粛性が高く、振動の少ないEVのメリットは大きいと見られている。

 さらに、本車両は33kWhと8kWhの二つのリチウムイオンバッテリーを搭載しているため、電装機器やエアコンをより長時間作動させることが可能で、停電時や災害時には移動電源としても活用できる。

 本車両は、同社が欧州で販売中の「NV400」をベース車両としており、日本法規への適合や専用の救急架装については、日産パラメディックでの豊富な実績を持つオートワークス京都に委託した。

 内外装は欧州の緊急車両架装大手であるGruau社に委託、堅牢で合理的な救急架装パッケージを採用している。

kat

ファナック、加工機・ロボットによる自動化システムの簡単スタートアップパッケージを販売開始

3年 10ヶ月 ago
ファナック、加工機・ロボットによる自動化システムの簡単スタートアップパッケージを販売開始kat 2020年5月29日(金曜日) in

 ファナックは、切削加工機・放電加工機・射出成形機など加工を司る「ロボマシン」とロボットを組み合わせたシステム構築に必要な基本要素をパッケージ化した QSSR (Quick and Simple Startup of Robotization) を開発し、販売を開始した。

 QSSRを使用したシステム構築により、設計工数やシステム立上げ時間を大幅に短縮し、ロボマシンとロボットによる自動化システムの簡単設置、簡単設定、簡単操作を実現する。

 小型切削加工機「ROBODRILL α-DiBシリーズ」と「LR Mate 200iD」による 「ROBODRILL-QSSR」は、加工ワークの自動交換に最適なロボットシステム。ロボット取付架台、安全柵、簡単接続機能、ロボットのサンプルプログラムなど、ロボットシステム構築に必要な基本要素をパッケージ化し、加工現場の自動化を実現する。側面自動ドアは、サーボモータ駆動式も選択可能で、エアシリンダ駆動式に比べドア開閉時間が約40%と高速で、さらにロボットとの同時動作によりワーク脱着時間の大幅な短縮が可能。

ROBODRILL-QSSR

 

 電動射出成形機「ROBOSHOT α-SiAシリーズ」と「LR Mate 200iD」による 「ROBOSHOT-QSSR」は、成形品の取出しや成形後の組立に最適なロボットシステム。ロボット取付架台、安全柵および安全装置、ロボットのサンプルプログラムなど、システム構築に必要な基本要素をパッケージ化し、成形現場の自動化を実現する。あらかじめ組み込まれたロボットのサンプルプログラムに、アプリケーションに合わせた位置教示を追加することで、ロボット動作のカスタマイズが可能。

ROBOSHOT-QSSR

 

 ワイヤカット放電加工機「ROBOCUT α-CiBシリーズ」と「M-20iA」による「ROBOCUT-QSSR」は、加工ワークの自動交換に最適なロボットシステム。ロボット取付架台、安全柵および安全装置、ロボットのサンプルプログラムなど、システム構築に必要な基本要素をパッケージ化し、加工現場の自動化を実現する。コア・ステッチ機能は、荒加工後に除去が必要な中子をワークに一時的に固着。仕上げ加工前にロボットで中子の除去を行うことにより、ワークの自動交換と合わせて、長時間の連続無人運転が可能となっている。

ROBOCUT-QSSR


 

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DMG森精機、工作機械にニコンの非接触レーザースキャナーの搭載を開始

3年 10ヶ月 ago
DMG森精機、工作機械にニコンの非接触レーザースキャナーの搭載を開始kat 2020年5月28日(木曜日) in

 DMG森精機は、ニコンと2019年11月に包括的な業務提携を行うことで基本合意し、本年3月に正式契約を締結しているが、今回、この包括的な業務提携の一環として、同社の工作機械にニコンの非接触レーザースキャナー「LC15Dx」を搭載することが決定し、両社は売買契約の締結に関し基本合意した。

ニコンの非接触レーザースキャナー 「LC15Dx」搭載イメージ

 

 ニコンの非接触レーザースキャナー 「LC15Dx」は高性能データ処理機能の搭載により、接触式の三次元測定機と同等の精度で、さらに高速に多点測定が可能なほか、タッチプローブでの測定が困難な小寸法や複雑な形状の被検物など様々な部品を非接触で効率よく測定できる。

 DMG森精機は独自の非接触機上計測システムにこの「LC15Dx」を組み込み、オプションとして一部の工作機械に搭載、今秋から販売を開始する。航空機や建設機械、エネルギー産業向けの大型ギヤやタービンブレードの計測・測定に最適で、加工工程の改善、加工精度の向上に貢献する。搭載機種は順次拡大していく予定。

 同社と光利用技術と精密技術をコアとし幅広い技術力を持つニコンのそれぞれのリソースを組み合わせることでシナジーを創出、両社がともに革新的なソリューションを顧客に提供していく考えだ。

 

カラーマップ:設計データとの誤差カラーマップ

 

トポグラフ:ベベルギヤ歯面評価結果

 

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ジェイテクト、産学連携によるコオロギの食糧資源化を推進

3年 10ヶ月 ago
ジェイテクト、産学連携によるコオロギの食糧資源化を推進kat 2020年5月27日(水曜日) in

 ジェイテクトは2019年6月11日に徳島大学と新領域分野での研究開発・事業化を推進する目的で横断的産学共同研究事業を立ち上げ包括連携協定を締結したが、このほどその取組みの一環として、徳島大学発ベンチャー企業であるグリラスと食用コオロギ(昆虫食)の安定生産において業務提携した。将来の食糧不足回避に向けて、安定した循環型エコシステムの構築を目指す考えだ。

 徳島大学では約30年前からコオロギの研究に取り組んでおり、2016年から食用コオロギの研究を開始、ジェイテクトはこの取組みに2019年から共同研究として参画している。食用コオロギは飼育時の環境負荷が牛などの家畜に比べて非常に小さいことから、将来の食糧危機を回避することや、持続可能なたんぱく源となることが期待されている。

 今回、グリラスのコオロギの飼育技術とジェイテクトの自動化技術やIoT技術、品質管理技術(統計的手法の活用)といったものづくり技術を融合し、高品質なコオロギを量産することを目的に業務提携を行うもの。ジェイテクトはものづくり技術を活かしたコオロギの自動飼育システムの実用化を推進することで、高品質な食用コオロギの大量・安定供給を実現し、SDGs開発目標として掲げられる「飢餓をゼロに」への貢献を目指す。

 ジェイテクトは、コオロギ飼育に最適な環境を精密に制御し、生産性を向上する自動飼育システムを、IoT技術を応用して開発し、安心・安全なコオロギの安定供給の実現を目指す。これにより、徳島大学、グリラスの食用コオロギの研究・事業化を支援し、食糧の安定確保と持続可能な社会の実現に貢献していく。また、関係機関とともに循環型エコシステムの構築を目標とし、様々なSDGsのゴール達成に貢献していく。

 

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フェローテック、磁性流体・ペルチェ素子・絶縁放熱基板の利点を活かし自動車分野で応用・展開へ

3年 11ヶ月 ago
フェローテック、磁性流体・ペルチェ素子・絶縁放熱基板の利点を活かし自動車分野で応用・展開へkat 2020年5月12日(火曜日) in

 フェローテックは2018年1月に「オートモーティブプロジェクト」を立ち上げた。

 それから3年目を迎えた本年4月にはオートモーティブプロジェクトが組織として独立、自動車のマーケットの部門横断的な攻略が本格化してきている。

 この間、自動車用温度調節シート向けで多くの採用実績を持つ「サーモモジュール(ペルチェ素子)」や、創業の技術であり車載スピーカーで実績のある「磁性流体」、さらには自動車のエンジンやモータ、パワーステアリング、ヘッドランプなどの制御装置の基板として採用されている絶縁放熱基板を中心に、自動車市場の様々な課題へのソリューションを提起し、徐々に具体的な適用に向けた検討案件が増えている。

 今回、それらコア技術の適用によるメリットと、様々な利点を活かした自動車分野での各種課題解決のためのソリューションについて、同社オートモーティブプロジェクト長の水杉一史氏、同プロジェクト課長の二ノ瀬 悟 氏、鐘 享璟氏、サーマルマテリアル部長の八田貴幸氏、マグネティックマテリアル部長の廣田泰丈氏に話を聞いた。
 

左から、八田 氏、鐘 氏、水杉 氏、二ノ瀬 氏、廣田 氏

 

フェローテックのコア技術 磁性流体

 磁性流体は、流体でありながら外部磁場によって磁性を帯び、磁石に吸い寄せられる機能性材料で、磁性微粒子、界面活性剤、キャリアとなるベース液(潤滑油)からなる。直径約10nmの極小の酸化鉄粒子が、凝集を防ぐ界面活性剤で被膜され、安定的に分散したコロイド状の液体となっている。

 自動車分野では、磁性流体の放熱効果やダンピング効果などによる高音質化や小型化などからスピーカーに採用されている。

 

 

ペルチェ素子

 ペルチェ素子は、対象物を温めたり冷やしたりする半導体冷熱素子のことで、N型とP型という異なる性質を持った半導体素子を組み合わせたモジュールに、直流の電気を流すと熱が移動し、一方の面が吸熱(冷却)し、反対の面が放熱(加熱)するというペルチェ効果を応用したもの。電源の極性を逆にすると、吸熱と放熱を簡単に切り替えることができる。

 ペルチェ素子のこうした特性を活かし自動車分野では温調シートで多数の実績を持つ。
 

 

絶縁放熱基板

 絶縁放熱基板は、セラミックス基板に銅回路板を接合したもので、放熱性・絶縁性・耐久性が高いアルミナセラミックス基板に銅製(Copper)の回路と放熱板を共晶反応で直接接合させた構造のDCB(Direct Copper Bonding)基板を自社開発し世界第2位のシェアを持つ。

 最近では、窒化ケイ素や窒化アルミニウムを基板とした、より信頼性の高いAMB(Active Metal Brazing:活性ロウ付け法)方式の技術を開発。新工場に量産設備を導入してサンプル出荷を開始している。

 自動車分野では、電動パワーステアリング用など各種モータの制御用インバータの基板などで採用されている。

 

 

 

自動車における磁性流体適用のメリットと課題解決のソリューション

 磁性流体の自動車分野でのアプリケーションとしては、圧倒的に高いシェアを持つ車載用スピーカー向け磁性流体に加えて、セミアクティブダンパーやリニア振動・触覚(ハプティック)デバイスへの応用など、新しい用途での検討が進んできている。

 ここでは、2018年以来、3回にわたり出展した「EV/HEV駆動システム技術展」を通じて具体的なサンプル要求が増えてきている「感温性磁性流体を用いた熱輸送システム」の利点と、自動車の課題解決のためのソリューションについて紹介する。

感温性磁性流体を用いた熱輸送システム ◆自動車での課題と感温性磁性流体適用のメリット

 自動車においては、エンジンのオーバーヒートを防止するためのラジエーターによる冷却など、熱マネージメントが早くからなされているが、電気自動車(EV)など電動車両の本格化に伴い、例えばバッテリーとなるリチウムイオン電池が温度にセンシティブであり、高温/低温のいずれにおいても特性が大きく変化したり劣化が進みやすいといった、熱関連の新たな問題が顕在化してきている。

 バッテリーやインバータなどの発熱を伴う機器の冷却において、熱の集中を防ぐためのループ循環系の熱輸送システムを構築するには、一般的に流体を循環させるためのポンプといった機械的駆動力が必要となり、そのための設置スペースが必要となる上、バッテリーの消費にもつながる。さらにポンプなどの重量が加算されることで電力消費(電費)は増大する。

 これに対しフェローテックでは、温度に反応して磁化が大きく変化する「感温性磁性流体」を開発。これを用いた熱輸送システムを提案している。

 感温性磁性流体を用いた熱輸送システムでは、磁性流体を封入した流路に、冷却される区間の「低温部」と加温される区間の「高温部」を設けて、磁性流体に温度勾配を作る。それから、低温部と高温部の間に磁石を設置。高温部の磁性流体中の磁性微粒子は温度上昇に伴って磁化が減少する一方で、低温側の磁性流体は磁化が変わらずに磁石へと強く引き寄せられる。これによって、低温側から高温側へと感温性磁性流体の流れ(駆動力)が発生して、流体の自己循環が可能となる。つまり、機械的な動力なしに、熱を輸送できるというわけである。

感温性磁性流体を用いた熱輸送システムの駆動メカニズム

 

 局部的に熱が偏在することによる問題を低減するため、全体的な熱マネージメントを進めたい自動車メーカー、電源を使用せずに熱効率を高めるヒートパイプを構築して自動車メーカーに提示したい自動車部品メーカー、さらには発熱密度の増大によって処理速度の低下や高温による故障など多くの熱問題を抱える電子機器メーカーなどから、具体的な引き合いが増えており、実用を想定した研究が活発になっている。

 すでに挙げたバッテリーやインバータをはじめ、自動車内部には多くの場所で熱源が存在するため、熱的に相互を補填し合うことで効率を追求することが重要になってくる。例えば冬場の暖房は、熱機関駆動の自動車では容易にエンジンからの熱を活用できるが、EVではPCTヒーターなど電熱線で発熱させることなどにより冬場の電費効率は著しく下がるが、他の部位からの熱源を活用することで効率改善が期待できる。後述のペルチェ素子とのコンビネーションなど、他の熱管理技術との組み合わせによっても、さらなる領域での活用を考えることができる。

 また自動車からの水平展開として、熱が問題となる身の回りの課題にも着目すべきである。身近ではスマホ、ノートPC、フラットパネルTVの発熱などは日常気になるものであるし、産業分野においてもLED、レーザー、ロボット、製造装置、サーバーといったように、チラーなどで強制的に冷却を行っている用途に展開できると考えられている。

 

感温性磁性流体を用いた熱輸送システムの実験での駆動確認感温性磁性流体を用いた熱輸送システムの加熱位置による駆動の向き

 

◆実用に向け大きな進展となる新たな感温性磁性流体を開発

 感温性磁性流体の基礎研究は国内外の拠点で長年進められてきたが、製品レベルの設計開発は約5年前から加速している。磁性流体は前述のとおり、磁性ナノ粒子、界面活性剤、キャリアとなるベース流体からなるが、感温性磁性流体のベース流体にはケロシンなどの有機溶剤が主に用いられてきた。

 有機溶剤が用いられてきたのは、磁性ナノ粒子を分散することが比較的容易であるためであるが、ガソリンを使う内燃機関とは違い、EVや家電製品では、そうした可燃性流体の使用は避けたいとの要望が強く、不燃性流体をキャリアにした感温性磁性流体は長年の目標とされてきた。

 フェローテックでは今回、磁性ナノ粒子および界面活性剤の組成、分散に関するコーティング技術・工程ノウハウを駆使して、初めての「水ベース感温性磁性流体」を開発することに成功した。水単体は当然のことながら0℃で凝固し100℃で沸騰するが、独自の配合技術によって、最新の開発試作品では-70℃という凝固点を実現。概ねの用途における使用温度範囲は-40℃~+80℃程度のため、低温側の要求も高温側の要求もカバーできると見る。

 ここでのコーティング技術は、10nmという極めて小さいナノ磁性粒子を個々に界面活性剤で覆うもので、これによって各磁性ナノ粒子が凝集することも沈降することもなく、非常に優れた分散性を実現できる。本来、水は極性が強い特殊な液体のため、安定な分散を得るのは難しい材料であるが、今回は開発グループにより比較的最近に見出した材料・工程を積極的に適用し、有機溶剤ベースと比べても遜色ないレベルに分散性に優れた水ベース感温性磁性流体を世に出せることに至った。

 また、磁性流体中の磁性ナノ粒子の濃度は、熱輸送のために駆動させるためには重要なパラメータである。すなわち粒子濃度が高いほど、ヒートパイプ中の感温性磁性流体の駆動力は強まることになる。スピーカーなど一般産業機器向けの磁性流体の粒子濃度は100~200ガウス程度、また水ベース磁性流体としての粒子濃度上限も300ガウス程度がこれまでの上限であったが、今回開発した感温性磁性流体は、これまでに類を見ない600ガウス以上という高い粒子濃度を達成。

 また、同社米国拠点では、別の用途向けの水ベース磁性流体をtonレベルで大量生産できる施設を所有しており、量産時の供給能力とコスト対応能力も充分に確保できているものと見られる。

 一方、具体的な熱輸送システム全体の効率を上げるには、高性能の感温性磁性流体を使用するだけでなく、熱輸送の効率を高めるために適切に温度勾配を持つように設計されたループが構築されることになるが、そういった個々の熱輸送システムでの性能を保証することも材料メーカーであるフェローテックの責務の一つである。そのため同社では、駆動環境による熱輸送効率の違いなど、熱輸送実用に向けた各種試験データを取得し知見を高める活動も大学と共同で進めている。

 直近では、本年6月をめどに開発品のサンプル販売を開始すべく、最終的な準備に取り組んでいるところだ。一方、長期的な取組みにはなるが、水ベースの感温性磁性流体という今まで世の中にない全く新規の製品となるため、分類や試験評価手法を含めた国際標準化についても研究機関と協力しながら進めていく考えだ。

自動車におけるペルチェ素子適用のメリットと課題解決のソリューション

 ペルチェ素子を用いた自動車でのアプリケーションとしては、自動車用温度調節シート向けで多くの採用実績を持つほか、近年では、海外の自動車OEMで採用実績がある温度制御が可能な車載用カップホルダーや、バッテリーおよびキャビンの温調システム、車載カメラのCMOSイメージセンサ用クーラーなどで引き合いが増えてきている。

 ここでは、具体的な採用に向けて検討が進んできているバッテリーの温度コントロールのアプリケーションを中心に、ペルチェ素子採用の利点と、自動車の課題解決のためのソリューションについて紹介する。

バッテリー/キャビンの温度コントロール ◆温調システムとしての高い効率

 ペルチェ素子は、冷却・加熱の双方に対し既存の手法に比べて、微妙な温度制御が可能なことや電力消費抑制につながる軽量・小型化が図れるなど優位性が多い一方で、特に過熱に使用した際の吸熱の利得が大きいことはあまり知られていない。

 ペルチェ素子から放熱される熱量(Qh)は、吸熱量(Qc)と総消費電力(VI=ジュール熱)との総和となるため、ジュール効果によって発生する熱エネルギー(ジュール熱)に比べ、小さな電気で大きな加熱ができる省エネヒーターを構成できる。フェローテックでは、キャビンヒーターにおけるQcの利得による効果を周知させ、自動車分野での適用を進めていく考えだ。

キャビンヒーターにおけるQcの利得効果

 

 一方で、ペルチェ素子の放熱面の温度(Th)と吸熱面の温度(Tc)が逆転すると冷却効率(COP)が極端に上がる、というメリットも浸透しているとは言えない。特に、夏場にペルチェ素子の放熱側である環境温度Thが30℃でペルチェ素子の吸熱面となるバッテリーの温度Tcが60℃といった場合には、温度差が-ΔTとなりCOPは200%、250%という高効率クーリングシステムを構成できる。同社では、こうした高効率の温調システムとしてのペルチェ素子の有用性についても訴求していく。
 

バッテリークーラーにおけるκ(Th-Tc)の利得効果:TcがThよりも高い場合、熱伝導による損失κ(Th-Tc)が逆に利得となり効率が大きく改善

 

◆パーソナル冷暖房システムとしてのメリット

 自動車の断熱性能には限界があり、窓が増えたり大型車になると表面積が大きくなるため、放出され損失される熱も大きい。つまり、エアコンでは熱貫流量Qが、熱貫流率Kや、車内温度Tiと外気温Toとの差、冷暖房の対象となる自動車表面積Aによって左右されるため、自動車の燃費や電費の観点からは効率の良い冷暖房システムとは言えない。

 そこで、燃費や電費を抑制する観点や室内の快適性を高める観点から、ペルチェ素子を採用した現在のシート温調システムの進化系のような、パーソナルに乗員の体を温めたり冷やすというシステムも一部検討されており、そうした中でペルチェ素子採用の可能性も拡大してきている。

 エアコンを用いた冷暖房は上述のとおり表面積に比例して熱効率のロスが発生することに加えて、たとえばキャビンの温度が低くエンジンおよびエアコンユニットが冷えている状態で暖房運転を開始した場合、エアコンユニット内の空気を暖めてから暖かい風が出てくることから、数分程度の立ち上がり時間を要する。これに対してパーソナルな冷暖房システムであるペルチェ素子では、システムがコンパクトなこともあり、数秒でドライバーや同乗者の体を温めたり冷やしたりすることが可能となっている。

 自動運転ではドライバーもリラックスした状態に置かれ、室内の快適化がますます要求されてくることから、欧州の高級車ではすでに、アームレストや屋根やダッシュボードにまでペルチェ素子を搭載してパーソナルな冷暖房を実現しようという取組みも始まっている。同社では、“高級ホテル空間”とでも言える車室内の快適性向上では、ペルチェ素子を用いたパーソナル温調システムの果たす役割は増えてくるものと見る。

 

自動車における絶縁放熱基板適用のメリットと課題解決のソリューション

 パワー半導体用の放熱基板として用いられるDCB基板は、内燃機関車からHEV(ハイブリッド車)やPHEV(プラグインハイブリッド車)といった電動化、さらには先進運転支援システム(ADAS)の搭載などを背景に、需要の増加するモータ制御用インバータ回路の基板として引き合いが増えてきている。さらに、高圧バッテリーに蓄えた直流電力を交流に変換し走行用モータを駆動するための動力変換装置IGBTなど放熱が必要な新しいアプリケーションでも、攻略を進めている。

 特に窒化ケイ素基板を用いた新開発のAMBは、高い信頼性に加えて、車載のパワーデバイスとして用いられる炭化ケイ素(SiC)と熱膨張係数の点で相性が良いといったことから、車載向けの各種アプリケーションで引き合いが増えてきている。自動車メーカーからは、-55~300℃といった温度変化を1000~2000サイクル実施しても、銅パターンのはく離やセラミックス基板のクラックが発生しないといった、強度の向上や寿命の延長を要求されており、設備や工程の改善、技術の確立を急いでいる状況だ。

 

今後の展開

 自動車分野では電動化へと向かう大きな変革の中にあって、新規参入の機会が増えてきている。フェローテックでは、ペルチェ素子、磁性流体、絶縁放熱基板という各製品事業では自動車分野での採用実績も少なくないものの、自動車の新しい潮流の中での新たな課題に対して、部門独立し人員も増強された横断的な組織である「オートモーティブプロジェクト」として、最適なトータルソリューションを提供して課題解決に努めつつ事業を拡大していく。

 同社では、上述のような具体的な案件を成約させることで今年度は数千万円程度のビジネス獲得から始めて、3年後には50億円程度のビジネスに育てていく考えだ。
 

●フェローテックの自動車関連事業をさらに知るには

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日本ベアリング、高精度・高剛性アクチュエータの短納期対応を開始

3年 11ヶ月 ago
日本ベアリング、高精度・高剛性アクチュエータの短納期対応を開始kat 2020年5月7日(木曜日) in

 日本ベアリングは、高精度・高剛性が特長の、スライドガイドと精密ボールねじを一体化したコンパクトなアクチュエータ「BG形」について、実働10日以内の出荷という短納期対応を開始した。数量5セットまで対応する。

BG形アクチュエータ

 

 BG形アクチュエータは、曲げモーメントやたわみに対する剛性が大きいU字形状のガイドレールを採用しつつ、直動運動部に大きな負荷が受けられる4条列4点接触構造を採用することで、コンパクト設計にもかかわらず高い剛性と、高い繰返し位置決め精度(上級±3μm、精密級±1μm)を実現する。高剛性化によって、2、3軸での片持ち仕様にも最適。

BG形アクチュエータの高い剛性

 

 短納期対応の形番はBG15、BG20、BG26、BG33、BG46、BG55で、ロングブロック、ショートブロック、カバー有無、ローハウジングなど様々なタイプを用意している。

ブロックタイプ/カバー有無/ローハウジング

 

 なお、低コスト仕様の高剛性・高精度アクチュエータ「BH形」についても、実働10日以内での出荷に対応している(数量10セット以下、形番BH15、BH23、BH30、BH45)。

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日本トライボロジー学会、2019年度学会賞を発表

3年 11ヶ月 ago
日本トライボロジー学会、2019年度学会賞を発表kat 2020年4月28日(火曜日) in

 日本トライボロジー学会(JAST)はこのほど、「2019年度日本トライボロジー学会賞」の受賞者を発表した。ベアリング、潤滑管理関連では、以下などが受賞した。

技術賞

「建設機械用オイル状態監視システムの開発」秋田秀樹氏、倉迫 彬氏、櫻井茂行氏(日立建機)

 本研究は、油圧ショベルの実稼動下におけるセンサを用いたオイルの状態監視技術に関するものである。近年、建設機械業界ではICT(情報通信技術)を活用した機械稼動情報提供サービスを逐次開始している。情報提供サービスのーつで潤滑油の継続的な状態監視が行われているが、現在の潤滑油の状態監視は一定間隔でオイルを採取し分析を行うオフライン分析手法であるため、状況に応じた的確なサービスを提供できないことや、故障前駆現象に起因する突発的なオイル性状変化を捉えることが難しいのが実情である。この解決策としてセンサを用いたオンラインでのオイル性状の常時監視が求められている。

 そこで本研究はセンサによるオイルの状態監視、およびその運用に関する技術についての検討を行った。主な検討内容は、建設機械に対応可能なオンライン形式の性状監視センサの選定、そのセンサの最適な設置方法の検討、これまでオフラインで行っているオイル分析のオイルの汚染、劣化、オイル中の摩耗を示す指標との相関関係についての検証である。この結果を受けて、計測値の統計的処理をはじめ、IoT(モノのインターネット)を活用したセンサデータ収集ロジック、従来から行われているオイル分析手法を基とした状態判断基準の作成、これらを用いた自動オイル性状判断ロジック構築を行い、さらにWeb等デジタルデバイスを活用した顧客への情報通知システムを整備することでオイル状態監視の運用システムの構築、運用を行った。これにより潤滑油状態の“見える化”が可能となり、顧客や同社にとってスピーディな対応が可能となったのみでなく、顧客で使用している建設機械のダウンタイム低下、機体ダメージの低減、適切なサービスの提供などにより一連のエコシステムの構築ができた。

 今回のオイル状態監視システム(ConSite OIL)は建設機械業界としては初のシステムである。今後は同社内の機種展開を図るのみではなく、トライボロジー的観点から潤滑油の状態監視をキーとした機械の稼働状監視保全技術の最適化に寄与していく。 

建設機械用オイル状態監視システムの特徴(画像提供:日立建機)

 

奨励賞

「EHD接触における膜厚と破断率の同時測定-グリース潤滑の場合」前田成志氏(日本精工)

 本研究は、電気インピーダンス法を用いて、転がり軸受における接触域内の膜厚と破断率の同時測定を行い、油潤滑下とグリース潤滑下の比較から、低速度域におけるグリース潤滑のメカニズムを考察したものである。
近年、地球温暖化を背景として、軸受のさらなる低トルク化が求められており、潤滑剤の粘度を下げる、あるいは潤滑剤の封入量を減らすといった手段が講じられている しかし、それらの方法はEHD(elastohydrodynamic)接触域における油膜の破断を促し、軸受しゅう動面における様々な表面損傷の原因となる。そこで、研究グループでは、従来の電気インピーダンス法を改良し、EHD接触域における膜厚を光干渉法と同等な精度で測定でき、さらに、破断率も同時に測定できる手法を開発した。本手法は、実際の転がり軸受に適用可能であることから、軸受のさらなる低トルク化と長寿命化を両立する上で非常に重要な技術である。

 本研究では、アキシアル荷重を負荷した深溝玉軸受を用い、内輪の回転数を低速から高速へ変化させた際の軸受トルク、軸受外輪温度および電気インピーダンス法から得られるEHD接触域の平均膜厚と破断率を同時に測定した。潤滑剤には、ウレアを増ちょう剤としたグリースと、その基油(ポリアルファオレフィン油)を用いた。基油の試験から、軸受外輪温度が上昇しない低速度域において、膜厚がHAMROCK-DOWSONの式による理論値と一致し、破断率が上昇する低速度域において、同じタイミングで軸受トルクが上昇する結果を得た。一方、ウレアグリースの試験から、低速度域において、膜厚が理論値および基油の膜厚よりも厚くなり、破断率が上昇しないにも関わらず、軸受トルクが上昇する結果を得た。これらの結果から、基油を用いた場合、低速度域で油膜が破断し、金属接触が生じるため、軸受トルクが上昇したと推察される。一方、ウレアグリースを用いた場合、低速度域において      接触部における増ちょう剤濃度が上昇し、グリースの等価粘度が増加することで軸受トルクが上昇したと推察される。

 以上のように、本研究では開発した電気インピーダンス法を用いて、転がり軸受で広く用いられているグリース潤滑のメカニズムの一端を、実験結果に基づいて考察した。今後、本手法は様々な条件下において、転がり軸受の潤滑メカニズム解明に貢献し、低トルクかつ長寿命を両立する転がり軸受の実現に貢献することが期待されている。 

 

奨励賞

「転がり接触によるピーリングの発生メカニズムとピーリング抑制に及ぼす黒染処理の影響(第1報・第2報)」長谷川直哉氏(NTN)

 自動車や産業機械の摩擦低減の取組みの中で、潤滑油の低粘度化の動向がある。これに伴い、転がり軸受は希薄潤滑条件で使用される機会が増えるため、当該条件での転動疲労はく離のメカニズム解明とその対策技術の確立は機械部品の信頼性向上のための重要な技術課題と考えられる。
ピーリングは希薄潤滑条件で発生する転動疲労はく離の代表であり、大きさが10μm程度の微小はく離の集合体のことを指す。従来の研究から、ピーリングの原因は転動部で油膜切れが起こり、真実接触部の直下に過大な繰返し応力が作用することであると分かっているが、初期き裂の発生メカニズムについては不明な点があった。

 本研究の第1報では、ピーリングのき裂発生メカニズムを転動面の高倍率観察、表面形状と残留応力の測定、および表面粗さ解析の結果に基づいて多面的に考察した。その結果、ピーリングの初期き裂が転動面の塑性変形の繰返しによって形成された切欠き部から発生することを明らかにした。また、転動面に化成処理の一種である黒染処理を行うことでピーリングが抑制される効果についても検討し、黒染品では運転中の表面粗さの低下(なじみ)が促進されるため、相手面の塑性変形が軽減してピーリングが起こりにくくなることを明らかにした。さらに、このなじみの促進が黒染処理時に母材表面の凹凸が小さくなる現象と、転動中に凸部の黒染層が摩耗することの両方によってもたらされることも明らかにした。

 本研究の第2報では、第1報で得られたピーリングのき裂発生メカニズムと黒染処理によるピーリング抑制効果を、転動面の真実接触部直下に繰り返される応力(繰返し応力)の推定結果に基づいて定量的に検討した。繰返し応力の推定では、転動面に生成される3軸の残留応力の影響も考慮している。検討の結果、第1報で得られた結論は繰返し応力の観点からみても妥当性が高いと考えられた。

 上記の研究成果は、ピーリングの発生メカニズムに対する理解を深める新しい知見であるだけでなく、ピーリング対策の指針となる実用的にも有用な知見と考えられる。

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エボニック、ドイツで透明ポリアミドの生産能力を増強

3年 11ヶ月 ago
エボニック、ドイツで透明ポリアミドの生産能力を増強kat 2020年4月25日(土曜日) in

 独エボニック インダストリーズのグラニュールズ&コンパウンズ事業部門は、透明高機能ポリアミド「トロガミドⓇCX」(日本国内ではダイセル・エボニックが販売)の独マール工場での生産能力増強を予定どおり本年2月に完了、その生産能力を2倍に高めた。

 部門の責任者ヴィヴィアナ パパ(Viviane Papa)氏は、「この増強は、トロガミド®CXの需要の伸びに対応するもので、これにより引き続き顧客の成長に貢献し、支援していくことができる」と述べている。

 常に透明なこのポリアミド樹脂は微結晶を持つため、他の透明非晶性樹脂に比べて、耐薬品性、耐ストレスクラック性に優れている。また、紫外線への高い耐性、低吸水、高寸法安定性といった優れた品質のほか、加工性が良好なため設計の自由度も併せ持つ。

 このユニークな特性の組み合わせによって、水まわり部品やフィルター製品、研究・医療機器、化粧品容器などの幅広い用途に適している。スキーゴーグルなどスポーツ用品のデザイナーは、その設計の自由度に加えて、優れた機械特性と保湿クリームやヘアスプレーに含まれる化学物質への耐薬品性を高く評価。内装材向けのサンスクリーン試験で実証されたこの耐薬品性は、耐擦傷性と並ぶ、自動車等の内装部品にも要求される特性となっている。

トロガミドCXは、日焼け止めクリーム等に日常的に繰り返し触れるような用途でも、品質の劣化が見られない
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イグス、静電気散逸ポリマー製のボールトランスファを開発

3年 11ヶ月 ago
イグス、静電気散逸ポリマー製のボールトランスファを開発kat 2020年4月22日(水曜日) in

 イグスは、導電性および高耐久性を備えた静電気散逸ポリマー「クシロデュールF182」製のボールトランスファを開発した。新開発のボールトランスファは最大許容荷重300N、潤滑剤不要でスムースにあらゆる方向に動かすことが可能なため、静電気対策が必要な搬送用途に最適。

 

 製造現場では、突発的な静電気放電から作業員や搬送物を保護する目的から、導電性のある材質が必要になる。これに対しイグスはこのほど、「クシロデュールF182」製のボールトランスファを開発した。新開発の高性能ポリマークシロデュールF182の採用によって、耐摩耗性および耐久性に優れスムースで無潤滑の搬送が可能なうえ、静電気を消散することができる。潤滑剤の使用で絶縁性を持ってしまい静電破壊を引き起こす可能性がある金属製ボールトランスファの適用が難しい、静電気散逸部品が必要なコンピュータ産業や半導体業界での使用に最適。

 イグスでは、広さ3800㎡の試験施設でボールトランスファの導電性試験を実施。結果、クシロデュールF182の表面抵抗は105Ω未満で、DIN EN 61340-5-1による導電性カテゴリーに分類され、クシロデュールF182製ボールトランスファを使用することで、搬送物や作業員を静電気放電から守り安全な搬送を実現できることを検証している。

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「ハノーバーメッセ2020」開催中止が決定、次回開催は2021年4/12~16

4年 ago
「ハノーバーメッセ2020」開催中止が決定、次回開催は2021年4/12~16kat 2020年4月10日(金曜日) in

 世界最大の産業技術見本市「HANNOVER MESSE(ハノーバーメッセ)2020」の開催中止が、3月27日に正式決定された。新型コロナウイルス(Covid-19)の感染拡大に伴い、当初の4月開催から7月開催への延期が決まっていたが、世界保健機関(WHO)のパンデミック声明を受け、また、世界的な公共機関や経済活動の制約などを背景に、主催者のドイツメッセが開催中止を決めたもの。1947年の第1回開催以来、中止となるのは今回が初めて。

 次回「ハノーバーメッセ2021」は、ドイツ・ハノーバー国際見本市会場において、来年4月12日~16日に開催される予定だ。
 

来年4月12日~16日の「ハノーバーメッセ2021」の開催に備えるハノーバー国際見本市会場

 

 開催中止を決定した主催者ドイツメッセのCEOを務めるJochen Köckler氏は、「こうした状況においてハノーバーメッセ2020の開催実施はかなわなくなったものの、出展者から来場者に伝えられるはずだった製品・技術・ソリューションに関する情報は、我々が蓄積してきた多様なウェブベースのフォーマットで提供し、出展者と来場者をつないでいきたい。ライブストリーミング配信によって専門家のインタビュー映像やパネルディスカッション映像なども世界中に発信できる。また、オンライン出展者・製品検索も強化されており、出展者と来場者がダイレクトに連絡できるような機能を付与している。こうした未曾有の危機の中にあってこそ、今後の経済の課題や技術的ソリューションに関する情報の交換が重要になる」と述べている。

 ドイツ機械工業連盟(VDMA)会長のThilo Brodtmann氏は、「ハノーバーメッセ2020の開催中止は苦渋の選択だったと思うが、唯一の正しい選択と言える。機械産業界は現在、産業界におけるパンデミックの影響を最小限に留めるべく、一丸となって取組みを開始している。2021年4月のハノーバーメッセ2021では、すべてのエンジニアがハノーバーに集結できるよう、取組みを強化したい」と語っている。

 また、ドイツ電気・電子工業連盟(ZVEI)会長のWolfgang Weber氏は、「ハノーバーメッセ2020が開催されないことは電気・電子産業界にとっても手痛い損失ではあるが、正しい決定だと受け止めている。コロナウイルスによって産業および経済に悪影響が及ぼされることのないようマネージし、来年のハノーバーメッセ2021では、当連盟会員企業から、インダストリー4.0および将来のエネルギーシステムのための最新の製品およびソリューションを提案していただきたい」と述べた。

 世界の製造業が技術的変革に直面する中、「ハノーバーメッセ2021」でもデジタル化、個別化、環境保護、人口変動という四つのメガトレンドに対する、産業用AI、産業用5G、製造およびロジスティックスのスマート化、カーボンニュートラルな生産、などへのソリューションが示されると見られる。

 産業用AIでは、生産プロセスの中で蓄積されていく膨大なデータから意味を抽出し生産効率向上につなげていくことが重要であり、機械やシステムがつながり相互に情報を共有、状態監視やシミュレーションに役立てていく中で、データ活用は生産効率化の原動力としてAIや機械学習の必要条件としてますます重要になる。

 産業用5Gでは、産業のデジタルインテグレーションでは膨大な情報をリアルタイムに伝達しつつ高度なデータセキュリティ保持を実現する5Gは必要不可欠と見られている。
製造およびロジスティックスのスマート化では、製造ラインにおいて定時に正確な場所に正確な数量のワークの受け渡しを行う無人搬送車(AGV)などのソリューションが提起されている。

 カーボンニュートラルな生産へのソリューションでは、エネルギー消費の多い産業界の命題であるカーボンニュートラルへの取組みとして、水素・燃料電池の技術や電気自動車のためのインフラ技術に関するソリューションが用意されている。

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THK、プレス機向け高負荷ボールねじの受注を開始

4年 ago
THK、プレス機向け高負荷ボールねじの受注を開始kat 2020年4月6日(月曜日) in

 THKは、プレス機向け高負荷ボールねじ「HBN-P形」の受注を開始した。

 

 新製品は、プレス機用途向けに専用設計を施したボールねじで、許容荷重を既存製品の約2倍に向上したことで小径ねじ軸の選択が可能となり、装置のダウンサイジングを実現する。

 既存製品「HBN」、「HBN-K」に比べ、許容荷重を約2倍に向上。許容荷重が高いため、既存製品より小径のねじ軸を選択することが可能で、その結果、周辺部品の大型化を抑えることができ、装置のコンパクト化を実現できる。


 

既存製品との許容荷重比較

 

ボールねじナット外径比較
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木村洋行、アプリケーション志向の電動アクチュエータ技術を展開

4年 ago
木村洋行、アプリケーション志向の電動アクチュエータ技術を展開kat 2020年4月6日(月曜日) in

 木村洋行(http://www.bearing-pro.jp/)は本年1月から、スウェーデンに本社を置くEWELLIX(エバリックス)の直動製品の取扱いを開始した。エバリックスは、SKFグループだったSKF Motion Technologiesを前身とする直動製品メーカーで、スイス、スウェーデン、ドイツ、フランス、アメリカ、中国に生産拠点を有する。アプリケーションごとのニーズに合わせたカスタマイズのソリューションに定評があり、自動機などの一般産業機器向けのほか、高度な安全性が求められる医療機器向けや協働ロボット向けでも実績が多い。
 ここでは、電動アクチュエータを中心に独自の直動製品の技術を紹介するとともに、その特徴を活かした既存のアプリケーションや、日本国内における今後の展開などについて紹介する。

 

直動製品のラインナップと独自技術

 エバリックスの直動製品としては、まず電動アクチュエータのピラー型がある。ストローク量や荷重、速度、偏荷重など、アプリケーションごとの仕様条件に合わせた提案が可能で、低騒音で堅牢で高荷重に対応できるため、厳しい仕様条件のニーズにも対応できる。電圧は120V ACおよび24V DCに対応、最大定格荷重(押し/引き)はシリーズによって最大6000N、ストロークは700mm以上、動作速度も無負荷時で最速42mm/秒かつ最大負荷時で最速31mm/秒を実現している。

ピラー型アクチュエータ


 また、シリンダ型の電動アクチュエータは最大定格荷重500kN、最速1050mm/sの動作速度や最大ストローク2000mmを実現するモデルもあり、高いデューティサイクルにも対応できる。いずれも装置の電動化によって、省エネ化やメンテナンス性の向上に大きく貢献できる。

シリンダ型アクチュエータ

 

ローラースクリュー

 

電動アクチュエータへの置き換えによる電動化の効果

 

 それから、高効率、高精度、高耐久性を兼ね備えたボールスクリューとローラースクリューがある。特にローラースクリューに特徴があり、ねじとねじとのしゅう動によって高剛性化を実現。同サイズのボールスクリューよりも高荷重を受けられ、動定格荷重3994kNまで対応できるため、コンパクト化と高耐久性を図れる。
さらに、顕微鏡のステージや検体検査サンプラーなどに用いられる、クロスローラーガイドなどの高精密レールガイドもラインナップしている。

 

電動アクチュエータの特長を活かした適用事例 医療機器

 日本国内では長年にわたりSKFが販売を展開、上述の直動製品が医療機器向けの規格IEC 60601-1を取得していることなどから、医療機器向けの適用が多い。たとえば歯科医療などで診察台の上げ下げや、2軸使用によってリクライニング動作などに使われる。
電動のため油圧作動に比べ制御しやすく、油漏れの心配もなく、静音化が図れる。また、位置決めでのフィードバック制御や2台をリンクさせて動かすことなどが容易となっている。
医療分野では万が一機器が故障した際に患者の生命にかかわることもあることから、医療機器は高い安全率をとった設計がなされるが、エバリックスの直動製品は医療機器向けの各種規格に適合しているため、医療機器メーカーが優先的に選定することも多い。
また、欧州のメーカーながら医療機器メーカーが独自性を打ち出すためのカスタマイズに対応していることも採用を後押ししている。

診察台での適用例

 

産業用途

 医療機器では断続運転が多いのに対して、ファクトリーオートメーション・自動機といった産業用途では連続運転が要求され、連続運転に対応するエバリックス製直動製品が適用されている。特に連続運転で高速に動かす用途では、シリンダ型の電動アクチュエータが適用されている。一方、高荷重を支持しつつ上げ下げする用途(下図は、自動車生産ラインにおけるボディの支持・昇降の適用例)では、ピラー型アクチュエータが4点使いなどで用いられている。

自動車生産ラインにおけるボディの支持・昇降の適用例

 

今後の展開

 日本では現在のところ医療機器向けでの採用がメインだが、木村洋行では人材を増強しながら、医療向けで培ったノウハウを横展開させて、グローバルで実績のある産業用オートメーション向けなど、産業向けアプリケーションを強化していく考えだ。エバリックスはSKFの品質に対する徹底したこだわりを実現する組織を継承しつつ、独立系企業としてのフレキシブルな考え方を併せ持っている。両社の取組みの相乗効果によって、日本市場における産業用アプリケーションの開拓を強力に推進していく。

 上述のとおり産業向けでは生産性向上につながる、信頼性の高い連続運転が求められる。これに対し、連続運転で高速運転や高荷重対応が可能で使い勝手の良い電動アクチュエータを中心に提案を進めていく。

 昨年12月に開催された「2019国際ロボット展」では、ユニバーサルロボット(UR)社の6軸協働ロボットのオプションとして採用されている、ピラー型アクチュエータを用いた「LIFTKIT」をURに接続して、段ボール箱のピック&プレース作業のデモンストレーションを実施。協働ロボットに適用することで、設置面積を抑えながらロボットの昇降移動を実現できることとなり、アームリーチの有効範囲が拡大できる。エバリックス社では、URに限らずロボットメーカー各社とタイアップを進めている。

 このようにロボットを上下動させて可動範囲を広げるアプリケーションでは、壁に直動製品を取り付けてロボットを上下動させるというアイデアもあるものの、壁に取り付けられる直動製品の剛性や壁の剛性などがネックになる。これに対して高荷重に耐え、省スペースでロボットの上下動が可能なピラー型アクチュエータに対して、無人搬送車(AGV)にロボットを取り付けて工作機械までワークを運び加工部までのワークの受け渡しをするような用途で、引き合いが出てきているという。

 木村洋行はケイドンなど海外メーカーの日本総代理店として、長年にわたり、要求レベルが世界一厳しいとされる日本のメーカーの要求を海外メーカーにフィードバックし、現場の課題の解決を実現してきた。同様に木村洋行が産業分野での厳しいニーズを吸い上げて、カスタマイズにこだわるエバリックスにフィードバックすることで、メーカーとしての課題解決力にさらに磨きがかかると見る。

 エバリックスの直動製品はピラー型アクチュエータなど独自製品を含めてラインナップが多岐にわたり、また、各工場ともカスタマイズを重視しているため、各種直動製品をユニット化して、それぞれの産業用途に適合する提案が可能となっている。海外メーカーはレスポンスが悪い、カスタマイズへの対応がなされないといったイメージが持たれがちだが、エバリックスではリードタイムの短縮や、迅速な試作品の製作など、欧州メーカーとしてのものづくりへのこだわりと小まめさがバランスよく両立している。現場の声を聴き課題をとらえて、課題解決に挑戦していく木村洋行と同社との化学反応によって、ユーザー志向の、高付加価値なカスタマイズ商品の開発につなげていきたい考えだ。

■エバリックスの直動製品の情報は、こちら

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ハイウィン、ロボット事業拡大へ

4年 ago
ハイウィン、ロボット事業拡大へkat 2020年3月27日(金曜日) in

 ハイウィンは、日本国内でのロボットの導入提案を強化している。

 同社では先ごろ、繰返し位置決め精度±0.02mmの高精度と12インチウエハまで対応できる高剛性のウエハ搬送ロボット「RWS/RWDシリーズ」を開発、市場に投入した。
 

ウエハ搬送ロボット

 

 同ウエハ搬送ロボットでは、高価なDD(ダイレクトドライブ)モータをはじめACサーボモータ、ボールねじ、リニアガイドウェイといった主要コンポーネンツがすべて自社製のため、高性能ながらリーズナブルな価格を実現している。

 中でも、減速機構を必要としないダイレクトドライブ方式を採用したDDモータは、モータと荷重とをクロスローラーベアリングを介して高剛性で結合、サーボドライバ制御により高い加速度と運動の安定性を実現する。中空軸を通してケーブルおよび関連アクセサリをつなげるため、自動化タスクなど幅広い用途を持つ。
 

DDモータ

 

 同ウエハ搬送ロボットでは、この高精度・高剛性の自社製DDモータ採用による繰返し位置決め精度±0.02mmの実現により、その後の工程においてアライメントがスムーズになり、タクトタイム短縮につなげることができる。

 さらに、ギヤがなくバックラッシュなしのダイレクトドライブ方式という非接触で経年劣化が少ない設計に加え、部品点数も少ないことから、メンテナンス工数も軽減できる。
 エンドエフェクタはオプションで真空吸着、把持、反転と方式を選択できる。マッピングセンサは、スイープ機能を搭載し、オプションのマッピングセンサ使用時にはピックアンドプレースの前に、カセット内のウエハや基板の重なり、傾斜を検出する。小型で持ち運びやすいデザインのティーチングペンダントは、分かりやすいアイコンで簡単に操作できるほか、安全スイッチ付きで、ロボットの誤動作を防止する。

 同社では同ウエハ搬送ロボットについて、シングルアーム、ダブルアームをラインアップしているほか、ウエハ搬送用途にとどまらず、PCB(プリント基板)搬送用途やガラス基板搬送用途のカスタム対応や、ロボット自体の搬送軸も仕様に合わせて提案しており、用途、数量は明かしていないものの、すでに数件の受注を得ているという。

 同社ではこのほか、並列リンク機構の採用により自由度の高い運動を実現するDeltaロボット(パラレルロボット)「RD401」を提案。0.3sという短いサイクルタイムと繰り返し精度±0.05mmの高精度を実現。エンドエフェクタの交換により、高精度で迅速な移載作業や組立作業、整列作業、包装作業などに対応できる。
 

パラレルロボット

 

 さらに、自社開発部品を用い、敏捷・高精度で自由度の高い運動を実現するスカラロボット「RS406」も提案。エンドエフェクタ交換により、プラスチック産業、自動車産業、電子産業、製薬産業、食品産業など幅広い分野における、平面作業環境での高速搬送・組み立てを実現する。
 生産自動化に向けた各種ロボットの導入・応用が進む中、同社は直動案内機器やメカトロ機器のメーカーであるとともにロボット導入のシステムインテグレータとして、エンドユーザーのSI(システムインテグレーション)のニーズに対し、自社製の直動案内機器、モータ、ロボットのそれぞれを完全にマッチングさせた最適なトータルソリューションとして迅速に提供できるという強みをアピールしながら、ロボット事業の拡大に努めていく考えだ。
 
 

スカラロボット
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機械要素技術展が開催、軸受・直動製品の技術が集結

4年 1ヶ月 ago
機械要素技術展が開催、軸受・直動製品の技術が集結kat 2020年3月6日(金曜日) in

 「第24回 機械要素技術展」(主催:リード エグジビション ジャパン)が2月26日~28日、千葉市美浜区の幕張メッセで開催された。軸受および直動製品では、以下のような展示がなされた。

会場のようす

 

 エバオンは、多様な種類と豊富なサイズで動力を的確につなぐ韓国ドゥリマイテック社製のカップリングを紹介した。高品質なアルミ合金材質の採用で、より少ない慣性での伝達が可能。また、あらゆる精度を高次元で実現したドゥリマイテック社製の精密研磨ロックナットは、直角度、平面度に優れ、高速回転、高バランスに大きく貢献するとした。さらに、ドイツFanke社製の「ワイヤー・レース・ベアリング」を披露。コンパクト・軽量化が図れるほか、隙間調整が可能で回転がよりスムーズになる、4点接触軸受並みの高荷重が受けられる、設計の自由度が高く材料の選択肢が豊富、といった利点をアピールした。

エバオン ブースのようす

 

 THKは、予兆検知のIoTサービスシステム「OMNI edge」を紹介した。LMガイドやボールねじなどの機械要素部品にセンサを装着し、収集したデータを数値化、状態を可視化でき「THK SENSING SYSTEM(TSS)」を用いて、LMガイドの損傷や潤滑状態を数値化したデータをウェブ上でモニタできるほか、ユーザーで設定したしきい値を超えた場合は、アラートメールを発報し、設備の突発停止を防止するとともに、コミュニケーションプラットフォーム「Omni THK」とも連動させて、部品調達を遅滞なく行えるようにする。LMガイドに続く第二弾としてボールねじの予兆検知にも対応していくことをアナウンスした。

THKブースのようす


 日本トムソンは、ローラーの優れた特性を最大限に活かし、剛性、負荷容量、走行精度、振動減衰性など各特性で高い性能を実現した「CルーブリニアローラウェイX」の直曲案内機構とBECKHOFFのドライブテクノロジーXTSとの融合によって、5㎏までの質量を載せて搬送できる(通常のXTSでは1㎏の質量しか搬送できない)ようにしたことをアピール。これまでリニアモータ駆動で搬送システムを構築できなかったものまで、この直曲案内機構の搭載によって設計の幅を広げ、生産現場における最適な搬送システムを構築できるとした。
 

日本トムソン ブースのようす

 

 日本ベアリングは、高剛性、高減衰性・高運動精度のローラーガイド「EXRAIL(エクスレール)」を披露した。小径で長さのあるニードルローラーを転動体として採用しローラーの総数を増やすことによって、1個あたりのローラーが受ける荷重は小さくなり、各ローラーの弾性変形量が小さくなった結果として、剛性を1.5倍以上に高めている。また、ローラーの数が増えたことで動摩擦力が比較的大きくなり素早く振動が収まることによって、従来の1.5倍以上の高減衰性を実現。さらに、荷重を多数の小径ニードルローラーで受けるため、ガイド駆動時に発生するウェービングを1/2以下に減少させ、運動精度を高めている。切削・研削加工時の振動吸収によって、加工面品位の向上に貢献できることをアピールした。
 

日本ベアリング ブースのようす
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フェローテック、「オートモーティブワールド2020」で、自動車の内装、バッテリー、自動運転へのソリューションを披露

4年 2ヶ月 ago
フェローテック、「オートモーティブワールド2020」で、自動車の内装、バッテリー、自動運転へのソリューションを披露kat 2020年1月28日(火曜日) in

 フェローテックは1月15日~17日に東京都江東区の東京ビッグサイトで開催された「オートモーティブワールド2020 第11回EV・HEV駆動システム技術展」に出展した。

 同社は2018年1月に「オートモーティブプロジェクト」を立ち上げ、以降、自動車用温度調節シート向けで多くの採用実績を持つ「サーモモジュール(ペルチェ素子)」、さらには創業の技術であり車載スピーカーで実績のある「磁性流体」を中心に自動車市場の攻略を進め、徐々に具体的な適用案件が増えてきている。

 今回の展示では自動車分野で検討が進んでいるシステム分野別に、同社のコア技術を活かした各種のソリューションを提示した。
 

「オートモーティブワールド2020」での展示ブースのようす

 

内装分野でのソリューション スピーカー用磁性流体

 磁性流体は、流体でありながら外部磁場によって磁性を帯び、磁石に吸い寄せられる機能性材料で、磁性微粒子、界面活性剤、キャリアとなるベース液(潤滑油)からなる。直径約10nmの極小の酸化鉄粒子が、凝集を防ぐ界面活性剤で被膜され、安定的に分散したコロイド状の液体となっている。

 

 

 フェローテックの磁性流体は、生産工程においてボイスコイルのセンタリング(中心保持)が不完全なことからコイルの断線などによる低い生産歩留まりに悩んでいたスピーカーメーカーが、磁性流体をエアーギャップ(磁気空隙)に注入したところセンタリング効果が現れ、生産歩留まりが大幅に向上したことで採用が始まった。磁性流体を充填したスピーカーを従来のスピーカーと比べると、最大許容入力の向上(放熱効果)や周波数特性の改善(ダンピング効果)、システムコストの低減、高調波歪の減少など多くのメリットが得られることから、車載用スピーカー向けでも採用が進み、今や圧倒的な高シェアを誇る。

 今後の自動運転の普及に伴い、快適な車内環境への要求からスピーカーでもさらなる高音質化が求められる一方で、限られた車内空間からスピーカーに許されるスペースはますます制約される環境下で、200℃に達すると言われるスピーカーの駆動発熱部の放熱が必要となる。同社の磁性流体は他社製に比べて非常に高い耐熱性を有するため、長期間にわたり安定に放熱の役割を果たし、高い音質を実現できる。
 

磁性流体を充てんしたスピーカー

 

振動制御用磁性流体

 車内空間での快適性向上につながる静粛性・静音性への要求から、振動や騒音などを解消するダンパー技術が求められている。
フェローテックでは、磁気応答性や印加磁場によるせん断力(粘性)変化、分散性(再分散性)、潤滑・摩耗特性などで優位性のある「MCF(Magnetic Compound Fluid:磁気混合流体)」を開発し、セミアクティブダンパーへの応用を提案している。

 従来の磁性流体よりも大きい磁性粒子を主成分とすることで、印加磁場によって磁性粒子の配列を制御し、アクティブダンパーや様々な振動吸収に適用できる。市場にある類似の磁気粘性流体(MRF)はおしなべて粒子が均一に分散せず沈殿してしまうのに対し、新開発のMCFは分散性が良好で1ヵ月以上経過しても沈殿が少ないというデータを得ている。
 自動車には足回りやエンジン回りの振動のほか、あらゆる振動系が組み込まれている。同社ではMCFの優れた分散性と耐摩耗性能でMRFなどとの差別化を図り、採用を促していく。
 
 

MCFを充てんしたセミアクティブダンパーでのダンピング特性のデモンストレーション  車載用ドリンクホルダー

 ペルチェ素子(サーモモジュール)は、対象物を温めたり冷やしたりする半導体冷熱素子のことで、N型とP型という異なる性質を持った半導体素子を組み合わせたモジュールに、直流の電気を流すと熱が移動し、一方の面が吸熱(冷却)し、反対の面が放熱(加熱)するというペルチェ効果を応用したもの。電源の極性を逆にすると、吸熱と放熱を簡単に切り替えることができる。

 

 

 フェローテックのペルチェ素子を用いた車載用ドリンクホルダーはすでに、海外の自動車OEMで採用実績がある。ドリンクを冷えたままに、あるいは温かいままに保つドリンクホルダーを車載する車両では、HVACユニット (Heating Ventilation Air Conditioning unit:暖房・換気・空調ユニット)が採用されるケースが多いが、エアコンの風を利用して冷却・加熱を行うこの方式では、冷却・加熱効率が悪く、また電力消費もばかにならない。
 これに対しペルチェ素子は小型・軽量・省電力のシステムで、冷却・加熱機能を0.1℃単位で設定できる。この省電力で積極的に温度制御が可能なドリンクホルダーに対し、国内の自動車OEMも関心を示している。 
 
 

ペルチェ式ドリンクホルダー;片方を冷やしながら同時に片方を温めることもできる  バッテリー分野でのソリューション バッテリーの温度コントロール

 ペルチェ素子の吸熱面となるバッテリー表面の温度が水冷されている放熱側よりも高い場合には、温度差が-ΔTとなり、冷却効率(COP)が100を超える高効率クーリングシステムを構成できる。さらに、電気自動車(EV)では重量の増加も電力消費の増大、航続距離の低下につながることから、軽量の温調システムとしてもペルチェ素子が評価されている。

 小型・軽量・省電力の特長を活かしたシステムとしては、48Vを使ったマイルドハイブリッドシステム向け小型バッテリーや超小型モビリティ向け小型バッテリーなどへの提案を強化している。
  

小型バッテリーの温度コントロール

 

自動運転関連分野でのソリューション CMOSイメージセンサ用クーラー

 自動運転車では、全周囲の距離や画像認識を行い、死角を少なくして安全性を確保するために、1台当たり20個程度のカメラが搭載されると予測され、その機能を担うCMOSイメージセンサ(相補性金属酸化膜半導体を用いた固体撮像素子)の市場拡大が見込まれている。このセンサは熱に敏感で、熱によって引き起こされるダークショットノイズ(暗電流)は、発熱量とともに増大して画像の精細さを欠く結果となる。これに対して車載カメラのCMOSイメージセンサに冷却用ペルチェ素子を装着することで高精細な画像を得ることを可能にしている。2026年に商用車から始まると見られる完全自動運転導入を控えて、OEMでの具体的な検討が始まってきている。
 

CMOSイメージセンサ用クーラー

 

自動車分野での新たな展開

 フェローテックでは今回、アルミナセラミックス基板に銅製(Copper)の回路と放熱板を共晶反応で直接接合させた構造のDCB(Direct Copper Bonding)絶縁放熱基板に続き新開発した、窒化ケイ素や窒化アルミニウムを基板とした、より拡張性の高いAMB(Active Metal Brazing:活性ロウ付け法)方式の絶縁放熱基板を披露。新工場に量産設備を導入してサンプル出荷を開始していることをアナウンスした。中でも窒化ケイ素基板を用いたAMBは、高い信頼性に加え、車載のパワーデバイスとして用いられる炭化ケイ素(SiC)と熱膨張係数の点で相性が良いといったことから、特に需要の高まってきているハイブリッド車(HEV)/EV用モータの制御用インバータ向けでの引き合いが増えてきているという。
 

窒化ケイ素を基板とした絶縁放熱基板「AMB」


 さらに、同社のペルチェ素子がソニーのインナーウェア装着型 冷温両対応ウェアラブルデバイス「REON POCKET」や富士通の「ウェアラブル冷却装置」に採用されている実績をもとに、二輪レースジャケットや工場での作業服での温度調整をイメージし開発したペルチェ素子利用のウェアラブルジャケット「ThermoArmour(仮称)」を参考出品した。本展での反響を見ながら、ウェアラブル分野における用途拡大も模索していく。
 
 

ペルチェ素子利用のウェアラブルジャケット「Thermoarmour(仮称)」

 

 バッテリーの冷却による保護や走行距離延長、さらには完全自動運転で必至とされるCMOSセンサやLiDAR(光による検知と測距)システムなどの搭載時では、軽量・省スペースで高効率な温調システムであるペルチェ素子への需要がますます高まると見られ、車内空間でますます求められる快適性に対しては、優れた音響特性やダンピング特性を実現する磁性流体の様々な製品・技術が対応できると見られる。さらに電動化の進展に対しては、量産体制の整った絶縁放熱基板「AMB」も高温環境における高い信頼性などから注目が集まってきている。

 フェローテックはペルチェ素子および磁性流体のNo.1サプライヤーとして、また高信頼性AMB基板のリーディングサプライヤーとして、自動車分野における各種の技術課題へのソリューションを引き続き示していく考えだ。 

 

●フェローテックの自動車関連事業をさらに知るには

 

kat

日本工作機械工業会、2020年新年賀詞交歓会を開催

4年 3ヶ月 ago
日本工作機械工業会、2020年新年賀詞交歓会を開催admin 2020年1月14日(火曜日) in

 日本工作機械工業会は1月9日、東京都港区のホテルニューオータニで新年賀詞交歓会を開催した。

 会の冒頭、挨拶に立った飯村幸生会長(東芝機械 会長)は、「工作機械の競争軸は加工精度や剛性、Iot対応などの単なる機能性能から、工程集約や自動化、生産体制の構築、あるいは地域特性に合わせたカスタマイズなど生産設備全体のエンジニアリングの提案力にシフトしつつある。激しい変化の時期は競争環境が激化し、優勝劣敗の局面でもある。技術革新や競争軸の変化をビジネスチャンスとして世界市場でプレゼンスを向上することが求められている。当工業会は一昨年、1兆8000億円を超える空前の受注額を記録した。昨年は世界各地の景気後退と米中摩擦の長期化が設備投資の下押し圧力となり急な下り坂となった。2019年の受注総額は1兆2500億円を下回る見込みだ。本年については昨年同様、世界経済や社会を形作っている枠組みに対する国家間の齟齬が予見さる中、中国経済の動向、秋の大統領選に向けた米国の政治・経済状況、ブレグジットを控えた欧州情勢など、世界の政治・経済の行方が非常に見通しづらい状況にある。内需については、政府の経済対策による景気下支え効果や自動化・省力化投資の発現が見込まれる。外需に関しては、総じて軟調に推移するものと見ている。受注はしばらく一進一退の局面が続くと思われるが、内外の生産技術革新に向けた根強いニーズに支えられれて設備投資マインドは徐々に好転し、今年前半に受注の底を打ち、緩やかに反転すると期待している。以上を踏まえて、2020年の日工会の受注額を1兆2000億円と見通している」と今年の見通しを述べた。

挨拶する飯村会長

 また、来賓を代表して経済産業大臣政務官の宮本周司氏が挨拶。「我が国は自由貿易の旗手として、また自由で公正なルールづくりをしっかりと主導していく。その中にはデータ化やデジタル化といった我々がまず積極的に取り組まないとならないものがある。特にデジタル技術やデータを最大限に活用する新たなビジネスやサービスを生み出すことが求められている。また、デジタル市場のルール整備や5G時代の情報通信技術の確立、これまでの発想にとらわれない大胆な政策を講じて日本中でイノベーションの創出を強く後押ししていく覚悟だ。特に基幹産業である工作機械業界のさらなる発展には、デジタル技術やデータ活用が極めて重要だと考えている。AIやIotを活用した知能化技術、ロボットとの連動による自動化・省人化に加えて、製造工程全体の自動化、また工場に留まらない製造業全体の生産性向上を支えていただくことに大なる期待が寄せられていると拝察している」と述べた。

挨拶する宮本氏

 

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日本半導体製造装置協会、半導体・FPD製造装置の需要予測を公表、2021年に初の3兆円超えへ

4年 3ヶ月 ago
日本半導体製造装置協会、半導体・FPD製造装置の需要予測を公表、2021年に初の3兆円超えへkat 2020年1月9日(木曜日) in

 日本半導体製造装置協会(SEAJ、会長:牛田一雄ニコン会長)は1月9日、2019年~2021年の半導体・FPD製造装置の需要予測を発表した。SEAJ半導体調査統計専門委員会(メンバー13社)およびFPD調査統計専門委員会(メンバー7社)による需要予測と、SEAJ理事・監事会社20社による市場規模動向調査結果を総合的に議論・判断し、SEAJの総意としてまとめたもの。

半導体・FPD製造装置の概況と今後の見通しについて語る牛田会長

 

 半導体/FPD製造装置の日本製装置販売高の予測では、2019年度は、半導体製造装置が8.1%減、FPD製造装置は6.8%減、全体で7.8%減の2兆5658億円と予測した。2020年度は半導体、FPDともに緩やかな回復を見込み、全体で7.2%増の2兆7511億円と予測した。2021年度はFPDに不透明さは残るものの、半導体投資が本来の成長軌道に戻ると見て、全体で2018年度の2兆7843億円を超える史上最高額となる、9.4%増の3兆89億円と予測した。

 また、半導体製造装置・日本市場販売高の予測では、2019年度はイメージセンサーの投資は好調だったもののメモリーメーカーの投資が想定以上に悪化したため、30.5%減の6865億円と予測した。2020年度はメモリー投資の復活と高水準のイメージセンサー投資継続で31.4%増の9021億円とした。2021年度は2020年と同水準と見て、0.3%増の9048 億円を予測した。

 半導体製造装置について、2019年度の日本製製造装置販売高はメモリー投資の抑制傾向が続くものの想定以上にロジック、ファウンドリー投資が好調な点を加味し、前回予測から2.9ポイント上方修正の前年度比8.1%減の2兆658億円と予測。2020年度はメモリー投資の復調が見込まれるため8%増の2兆2311億円、2021年度は12%増の2兆4088億円と予測した。2020年は、5G通信の普及が本格的に始まる年であり、関連してデータセンタ需要の復調も期待できる。半導体需要は、これまでのように電子機器の出荷台数に大きく依存するのではなく、5GやAI、IoT、自動運転など用途の広がりによって拡大していくと見た。

 FPD製造装置については、G6基板のOLED(有機EL)、G10.5基板のLCDともに、中国が投資の8割を占める。2019年度はG10.5基板の投資で一部納期の延期が見られることから6.8%減の5000億円を予測。2020年度は4.0%増の5200億円、2021年度は1.9%増の5101億円と予測した。

kat

フェローテック、ペルチェ素子・磁性流体の技術で、自動車の内装、バッテリー、自動運転への対応を促進

4年 3ヶ月 ago
フェローテック、ペルチェ素子・磁性流体の技術で、自動車の内装、バッテリー、自動運転への対応を促進kat 2020年1月8日(水曜日) in オートモーティブプロジェクト

 フェローテックは2018年1月に「オートモーティブプロジェクト」を立ち上げた。それから3年目を迎えるが、この間、自動車用温度調節シート向けで多くの採用実績を持つ「サーモモジュール(ペルチェ素子)」、さらには創業の技術であり車載スピーカーで実績のある「磁性流体」を中心に自動車市場の攻略を進め、徐々に具体的な適用案件が増えてきている。

 ここでは、本年1月15日~17日に東京都江東区の東京ビッグサイトで開催される「オートモーティブワールド2020 第11回EV・HEV駆動システム技術展」で出展予定の電子デバイス製品の技術について、自動車分野で検討が進んでいるシステム分野別に、同社の現状の取組みをまじえて、同社サーマルマテリアル部 部長の八田貴幸氏とマグネティックマテリアル部 部長の廣田泰丈氏、サーマルマテリアル部 オートモーティブ営業課 課長の二ノ瀬 悟氏 に話を聞いた。

 

左から八田 氏、二ノ瀬 氏、廣田 氏

 

フェローテックのコア技術 ペルチェ素子

 ペルチェ素子(サーモモジュール)は、対象物を温めたり冷やしたりする半導体冷熱素子のことで、N型とP型という異なる性質を持った半導体素子を組み合わせたモジュールに、直流の電気を流すと熱が移動し、一方の面が吸熱(冷却)し、反対の面が放熱(加熱)するというペルチェ効果を応用したもの。電源の極性を逆にすると、吸熱と放熱を簡単に切り替えることができる。

 ペルチェ素子のこうした特性を活かし自動車分野でフェローテックは、温調シートで多数の実績を持つ。

 

  磁性流体

 磁性流体は、流体でありながら外部磁場によって磁性を帯び、磁石に吸い寄せられる機能性材料で、磁性微粒子、界面活性剤、キャリアとなるベース液(潤滑油)からなる。直径約10nmの極小の酸化鉄粒子が、凝集を防ぐ界面活性剤で被膜され、安定的に分散したコロイド状の液体となっている。

 自動車分野ではすでに、磁性流体の放熱効果やダンピング効果などによる高音質化や小型化などからスピーカーに採用されている。

 

 

絶縁放熱基板

 絶縁放熱基板は、セラミックス基板に銅回路板を接合したもので、放熱性・絶縁性・耐久性が高いアルミナセラミックス基板に銅製(Copper)の回路と放熱板を共晶反応で直接接合させた構造のDCB(Direct Copper Bonding)基板を自社開発している。自動車のエンジンやモータ、パワーステアリング、ヘッドランプなどの制御装置の基板として採用されている。

 新たに窒化ケイ素や窒化アルミニウムを基板とした、より拡張性の高いAMB(Active Metal Brazing:活性ロウ付け法)方式の技術を開発。新工場に量産設備を導入してサンプル出荷を開始している。特に窒化ケイ素基板を用いたAMBは、高い信頼性に加えて、車載のパワーデバイスとして用いられる炭化ケイ素(SiC)と熱膨張係数の点で相性が良いといったことから、車載向けでの引き合いが増えてきている。自動車メーカーからは、-55~300℃といった温度変化を1000~2000サイクル実施しても、銅パターンのはく離やセラミックス基板のクラックが発生しないといった、強度の向上や寿命の延長を要求されており、設備や工程の改善、技術の確立を急いでいる状況だ。

 

絶縁放熱基板

 

システム分野別のソリューション

 本年1月15日~17日に開催される「オートモーティブワールド2020 第11回EV・HEV駆動システム技術展」では、自動車分野で検討が進んでいる内装分野、バッテリー分野、自動運転関連分野というシステム分野別に分けて、フェローテックのコア技術であるペルチェ素子および磁性流体、さらには絶縁放熱基板の適用について紹介、提案する。

 

内装分野

 自動運転時には、車内空間で乗員が快適に過ごせるように車内環境を快適にコントロールする必要がある。たとえば、より静粛性・静音性を保とうとすれば振動・騒音などを解消するダンパー技術が要求され磁性流体の出番となり、シートや飲料のカップホルダーの温度を心地よく調整しようとすればペルチェ素子の技術が有効となる。

 

振動制御用磁性流体

 フェローテックでは、磁気応答性や印加磁場によるせん断力(粘性)変化、分散性(再分散性)、潤滑・摩耗特性などで優位性のある「MCF(Magnetic Compound Fluid:磁気混合流体)」を開発し、セミアクティブダンパーへの応用を提案している。新開発のMCFは、従来の磁性流体よりも大きい磁性粒子を主成分とすることで、印加磁場によって磁性粒子の配列を制御し、アクティブダンパーや様々な振動吸収に適用できる。市場にある類似の磁気粘性流体はおしなべて粒子が均一に分散せず沈殿してしまう。これに対し、同社の新MCFは分散性が良好で1ヵ月以上経過しても沈殿が少ない。

 現在は一般自動車向けに先行して、特殊なダンパーや産業機器向けで検討が進んでいる。同社のMCFの配合を最適化し様々な要求に応じた具体的な提案ができる段階となっており、フィールドで実績を重ね、一般自動車分野での案件にフィードバックして適用を拡大していきたい。 自動車には足回りやエンジン回りの振動のほか、あらゆる振動系が組み込まれている。同社ではMCFの優れた分散性と耐摩耗性能で差別化を図り、採用を促していく考えだ。

 

MCFの優位性の例:良好な分散性

 

スピーカー用磁性流体

 フェローテックの磁性流体は車載用スピーカー向けでシェアが圧倒的に高い。これはトータルの特性・性能のバランスが車載要求仕様をしっかりと満たすことができる技術の賜物であり、特に耐熱性に優れていることも採用を後押ししていると思われる。

 自動運転の普及に伴い、快適な車内環境への要求からスピーカーでもさらなる高音質化が求められる。一方で、限られた車内空間からスピーカーに許されるスペースはますます制約される環境下で、200℃に達すると言われるスピーカーの駆動発熱部の放熱が必要となるが、当社の磁性流体は他社製に比べて非常に高い耐熱性を有するため、長期間にわたり安定に放熱の役割を果たし、高い音質を実現できる。

 

ハプティックデバイス

 磁性流体の粘性ダンピング制御を必要とするリニア振動・触覚(ハプティック)デバイスが普及してきている。タッチスクリーンパネルなど、触覚によって人が情報を積極的に取り入れるデバイスは 今後大きく伸びていく分野である。  現時点ではスマートフォン向けを中心に適用されてきているとのことだが、車載のタッチスクリーンや操作パネル用に適用は拡大していくと思われる。

 

ハプティックデバイス

 

車載用カップホルダー

 フェローテックのペルチェ素子を用いた車載用カップホルダーはすでに、海外の自動車OEMで採用実績がある。 ドリンクを冷えたままに、あるいは温かいままに保つカップホルダーを車載する車両では、HVACユニット (Heating Ventilation Air Conditioning unit:暖房・換気・空調ユニット)が採用されるケースが多いが、エアコンの風を利用して冷却・加熱を行うこの方式では、冷却・加熱効率が悪く、また電力消費もばかにならない。これに対しペルチェ素子は小型・軽量・省電力のシステムで、冷却・加熱機能を0.1℃単位で設定できる。

 このペルチェ素子を利用した省電力で積極的に温度制御が可能なカップホルダーに対し、国内の自動車OEMも関心を示しており、自動車OEMでの評価が始まっている。

 

ペルチェ式カップホルダー

 

バッテリー分野 バッテリーの温度コントロール

 特にペルチェ素子の吸熱面となるバッテリー表面の温度が80℃で、放熱側が水冷で60℃といった場合には温度差が-ΔTとなり冷却効率(COP)が100を超える高効率クーリングシステムを構成できる。さらに、EVでは重量の増加も電力消費の増大、航続距離の低下につながることから、軽量の温調システムとしてもペルチェ素子が評価されている。

 

バッテリーおよびキャビンの温度コントロールのモックアップ

 

感温性磁性流体を用いた熱輸送システム

 バッテリーなど発熱を伴う機器の冷却において、ループ循環系の熱輸送システムを構築するには一般的に流体を循環させるためのポンプなど機械的駆動力が必要となり、バッテリーを消費させることにつながる。 これに対しフェローテックでは、温度に反応して磁化が大きく変化する「感温性磁性流体」を用いた熱輸送システムを提案している。

 感温性磁性流体を用いた熱輸送システムでは、流路の高温側と低温側の間に磁石を設置。熱源により加熱された磁性流体は温度上昇に伴って磁化が減少し磁石にあまり反応しないが、低温側の磁性流体は磁化の大きさが変わらず、磁石に強く引き寄せられる。これによって低温側から高温側へと、感温度磁性流体の流れ(駆動力)が発生し熱を輸送できる。すなわち機械的な動力なしに流体の自己循環が可能となる。

 すでに各業界で適用に向けた基礎研究が始まってきており、同社では実用化に必要な感温性磁性流体を鋭意開発中である。

 

感温性磁性流体を用いた熱輸送システムのデモ機

 

自動運転関連分野 CMOSイメージセンサ用クーラー

 自動運転車では、全周囲の距離や画像認識を行い、死角を少なくして安全性を確保するために、1台当たり20個程度のカメラが搭載されると予測され、その機能を担うCMOSイメージセンサ (相補性金属酸化膜半導体を用いた固体撮像素子)の市場拡大が見込まれている。このセンサは熱に敏感で、熱によって引き起こされるダークショットノイズ(暗電流)は、発熱量とともに増大して画像の精細さを欠く結果となる。これに対して車載カメラのCMOSイメージセンサに冷却用ペルチェ素子を装着することで高精細な画像を得ることを可能にしている。OEMでの具体的な検討が始まってきている。

CMOSイメージセンサ用クーラー

 

今後の展開

 上述したとおり、バッテリーの冷却による保護や走行距離延長、さらには2026年に商用車から始まるとみられる完全自動運転で必至とされるCMOSセンサやLiDARシステムなどの搭載時では、軽量・省スペースで高効率な温調システムであるペルチェ素子への需要がますます高まると見られる。車内空間でますます求められる快適性に対しては、優れた音響特性やダンピング特性を実現する磁性流体の様々な製品・技術が対応できるだろう。 自動車分野における各種の技術課題や量産キャパシティー、コストなどに対して、フェローテックはペルチェ素子および磁性流体のNo.1サプライヤーとして、引き続き応えていく考えだ。 本年1月15日~17日に開催される「オートモーティブワールド 2020 第11回EV・HEV駆動システム技術展」のフェローテック ブース(青海展示棟A4-54)では、上述のような最新技術を紹介するほか、ペルチェ素子、磁性流体、絶縁放熱基板とテーマを変えて技術セミナーを実施する(下表参照)。

 ぜひ会場に足を運んで、自動車の諸課題に対応する最新ソリューションに触れていただきたい。

 

製品プレゼンテーションプログラム

 

●フェローテックの自動車関連事業をさらに知るには

kat

自動車工業4団体、新春賀詞交歓会を開催

4年 3ヶ月 ago
自動車工業4団体、新春賀詞交歓会を開催kat 2020年1月8日(水曜日) in

 日本自動車工業会(自工会)、日本自動車部品工業会(部工会)、日本自動車車体工業会、日本自動車機械器具工業会の自動車工業4団体は1月7日、東京都港区のホテルオークラ東京で、「2020年自動車工業団体新春賀詞交歓会」を開催した。

2020年自動車工業団体新春賀詞交歓会のもよう

 

 冒頭、豊田章男・自工会会長(トヨタ自動車 社長)の代行で挨拶に立った神子柴寿昭・自工会副会長(本田技研工業 会長)は、「日本の基幹産業として自動車産業の培ってきたものづくりの力を守り続ける上で、若者のクルマ離れが取り沙汰される中で昨年の東京モーターショーは、自動車業界の垣根を越えてオールインダストリーで共に未来を作っていく“Open the Future”のテーマのもと来場者130万人超と若者の関心も集め成功裡に終えることができた。一方で、昨年は度重なる自然災害に見舞われ高齢者のドライバーによるブレーキ/アクセルの踏み間違えによる事故が社会問題化し、こうした問題に対し我々は何ができるのか、何をすべきかをあらためて深く考えさせられた一年だった。災害時に自動車が、被災者の役に立っていくためには、電動車のさらなる普及、給電機能の装着率向上とともにそうした機能を分かりやすく伝えていく必要がある。また、交通事故ゼロを目指すこと」、これも自動車に関わる全ての人に共通した願いだと思っております。事故ゼロに向けた技術はどこのメーカーが先に出すがというような競争領域ではなく、むしろ同じ想いを持って業界が協力し合ってこそ、本当に役に立つ技術がいち早く届けられると考える。オリンピックパラリンピックの開催される本年は、東京を舞台にした自動運転の実証実験も始まり、世界に日本の技術力を示せる良い機会。オリンピックパラリンピックを機に、その究極の安全技術を飛躍させたい。安心・安全で環境にやさしく、走りの楽しさを実現できるモビリティーの実現に向けて業界が一丸となって、ONE TEAMで取り組んでいきたい」と語った。

挨拶する神子柴副会長

 

 続いて来賓の挨拶に立った牧原秀樹・経済産業副大臣は、「日本経済の屋台骨である自動車産業は製造業の売上全体の2割を占め540万人の雇用者を抱えている。すそ野の広い自動車業界で働く人がみな、働き甲斐のある環境となるよう共に務めるとともに、変化を求めて新しいことにチャレンジするのに良いとされる庚子の本年は業界の発展に全身全霊を尽くしたい」と述べた。

 また、青木一彦・国土交通副大臣は「自動運転の普及に向けては、議長国として自動操舵など安全に関する国際統一基準の策定で世界をリードしていく。世界を牽引する日本の自動車産業が安全で環境性能に優れた自動車を普及促進できるよう、共に努めたい」と語った。

kat

フェローテックマテリアルテクノロジーズが発足、セラミックス技術+成膜技術でシナジー効果創出へ

4年 3ヶ月 ago
フェローテックマテリアルテクノロジーズが発足、セラミックス技術+成膜技術でシナジー効果創出へkat 2020年1月5日(日曜日) in

 フェローテックホールディングス(https://www.ferrotec.co.jp/)100%子会社であるフェローテックセラミックス(FTC)は本年1月1日付けで、同じく100%子会社であるアドマップ(ADMAP)を吸収合併して「株式会社フェローテックマテリアルテクノロジーズ」に商号変更した。合併によって、セラミックス事業を行う FTCとCVD-SiC事業を行う ADMAPの両社の技術力と経営資源を最大限に活かし、顧客ニーズへの対応力および製品開発力の強化を図り、セラミックス事業およびCVD-SiC事業の発展・成長を促進する狙いだ。

 ここでは、昨年12月11日~13日に開催された「SEMICON Japan 2019」で展示されたFTCの二つのキーマテリアル、ファインセラミックスとマシナブルセラミックスの新技術とADMAPのCVD-SiC技術について紹介するとともに、新会社フェローテックマテリアルテクノロジーズにおける両社のシナジー効果について紹介する。

「SEMICON Japan 2019」のフェローテックブースのようす

 

 FTCは、高純度で優れた特性を備えたファインセラミックスと、精密・微細加工が容易であるマシナブルセラミックスを関西工場と石川工場で製造。近年は石川県に開発センターを設立し、新市場開拓に向けた製品開発を推進している。

 ファインセラミックスはその用途の7割が半導体製造プロセス向けで、同プロセスで要求される高純度・高剛性・高精度に加えて、耐摩耗・耐熱・耐薬品性を有する。特に純度99.7%のアルミナ「AS997QⅡ」はマイクロ波透過性が良好なことから、半導体製造プロセスにおけるプラズマ処理装置のチャンバー内部品に用いられるほか、純度99.9%の高純度アルミナ「AS999」は高純度が求められるウェハ搬送用部品などに用いられている。一方、ヒートショック性に優れる(ΔT(℃):700)窒化ケイ素は、機械部品や摺動部品、耐熱部品などに用いられている。そのほか、高い熱伝導性を持つ窒化アルミは絶縁部品などに用いられる。

 一方、マシナブルセラミックスは機械加工が容易に行えるセラミックスで、高精度・高品質の製品を短納期に提供できるのが特徴である。ガラス質をマトリックスとし、フッ素金雲母を均一に析出させた緻密な複合マイカセラミックス「ホトベール」で、電気絶縁性、耐熱性を持ち、絶縁部品や断熱部品などに用いられている。今回フェローテックブースでは、小型旋盤によるホトベールの快削性を示した。

小型旋盤を用いたホトベールの快削性のデモンストレーション

 

 特に半導体製造プロセスでは、機械的強度にも優れるマシナブルセラミックス「ホトベールⅡ」が、検査装置の部品(プローバーのガイド)に採用されている。穴径35μmの貫通孔を位置精度高く形成することが可能であり、角穴形状の高精度加工技術も確立している。一方、次世代プローバー向けハウジングでは熱膨張への対応が求められるが、製造プロセスを調整することなどでバリアブルに熱膨張率を調整することができるという。

ホトベールⅡのアプリケーション例

 

 一方、独自のCVD(化学蒸着法)で製作されたアドマップのSiC(炭化ケイ素)製品は、超高純度・高耐食性・高耐酸化性・高耐熱性・高耐摩耗性の特性を備えており、あらゆるフィールドで使用されている。同社のCVD-SiC技術としては大別して、コーティング技術と膜単体製造技術がある。

 前者では、等方性高純度黒鉛および各種焼結SiC基材に、高純度で均質性に優れたコーティングを提供。半導体をはじめ、産業機械、原子力、航空宇宙分野での高い評価を得ている。後者では、コーティング技術を応用し、緻密なSiC膜のみで構成された製品を提供。平板をはじめ、複雑形状まで幅広く適応可能で、半導体製造装置を中心に、超高温やプラズマの厳しい環境下での数多くの実績がある。コーティング技術のアプリケーションとしてはたとえば半導体製造装置用チューブ・ボートなどが、膜単体製造技術のアプリケーションとしてはSiCダミーウェハなどがある。

CVD-SiC技術のアプリケーション例

 

 上述のような独自技術を有する両社の合併によるシナジー効果について、フェローテックマテリアルテクノロジーズ 営業本部 営業一部 担当部長(元アドマップ営業部長)の斯波大二氏は、「我々のCVD-SiCは成膜速度が速いため、通常は密着性が低下するような、数ppmの不純物が入っている一般的な常圧焼結のセラミックス材料表面を高純度で均質なSiC膜で高密着にコーティングでき、ppbオーダーにパーティクル、不純物を抑制でき、半導体製造プロセスにおいてウェハ回りのコンタミネーションコントロールに一層貢献できる。また、ユーザーの要求によっては、たとえば熱伝導が良好な一方で純度が悪い材料にSiCを成膜することができるようになり、今まで1社では対応できなかった領域を、タッグを組むことで攻略できるようになる。これがシナジー効果の一つと考える。パートナーとなるFTCの扱うセラミックス材料は多種多様で、材料技術と成膜技術という両社の保有技術の組み合わせによるポテンシャルは非常に高いと考える」と語っている。

 また、フェローテックマテリアルテクノロジーズ 営業本部 営業一部 担当部長(元FTC営業部部長)の藤岡秀彰氏は、「FTCでは得意とするファインセラミックスおよびマシナブルセラミックスという材料技術の開発をたゆまず進めているが、高純度化などの問題を抱えている。そうした問題をアドマップが長年CVDで培ってきた豊富なコート技術知見で課題解決につながるものと期待している。一方で、チャンバー内では熱特性、電気特性、耐プラズマ特性など様々な材料特性が要求されるため、このような顧客の要求にも今後対応できたらと考えている」と述べる。

 両社のシナジー効果によって、現在主力の半導体分野での事業の拡大に限らず、医療分野や光学分野、航空機分野、さらには原子力発電分野といった新分野の開拓が見込まれている。斯波氏はさらに、「フェローテックグループとして考えた際、金属・樹脂以外のすべての材料技術、加工技術、成膜技術を保有していることから、フェローテックマテリアルテクノロジーズが窓口となって、多岐にわたるユーザーニーズへのそれぞれの最適解を提示できるようになると期待している」と語っている。

 

◆フェローテックのセラミックス製品をよく知るには

 

◆フェローテックのCVD-SiC製品をよく知るには

kat
Checked
3 分 2 秒 ago
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