メインコンテンツに移動
SEMICON Japan 2024

 

bmt配信ニュース

ボド・メラー・ケミー、日本法人設立の記者会見を開催

14時間 2 分 ago
ボド・メラー・ケミー、日本法人設立の記者会見を開催kat 2024年10日29日(火) in

 ドイツに本社を置く接着剤や潤滑剤、コーティング剤(プリント基板用コンフォーマルコーティングなど)といったスペシャリティ・ケミカルズの大手専門商社であるボド・メラー・ケミー(Bodo Möller Chemie)社は10月28日、東京都港区のJETROイノベーションガーデン(アーク森ビル内)で、本年8月に登記した日本法人ボド・メラー・ケミー・ジャパンの設立記者会見を開催した。

記者会見のようす:左が日本法人社長のジュリアン・ベイショア氏、
右がテクノロジー担当バイスプレジデントのクリストフ・シュネル氏

 

 ボド・メラー・ケミーは1975年に設立、BASFやダウ、デュポン、エボニック、メルクなど約200社の化学品メーカーから最終製品と原材料を仕入れて、商社ながら340人の社員の約半数を占めるという技術スタッフの専門知識と五つの研究所の充実した設備による信頼性・耐久性試験や技術コンサルティング、アプリケーション技術サービスを提供し、サステナビリティやEモビリティー、5Gといったメガトレンドに着目しながら60カ国の市場をカバー(その内37カ国は現地法人化済み)しつつ事業を拡大、2023年には2億200万ユーロ(約324億円)の売上を達成している。

 創業から30年程度は欧米を中心に拠点を拡充してきたが、2015年の中国拠点設立以降、インド、ベトナム、タイ、韓国とアジアでのビジネスを強化、今回、メガトレンドの一角をなす自動車関連や二次電池、エレクトロニクス、水素活用などで先行し三秒分野で重要な地位を占める日本の市場を開拓すべく、ボド・メラー・ケミー・ジャパンを設立、日本法人社長として、スペシャリティ・ケミカルズ大手企業で自動車を中心に日本市場開拓の豊富な経験と実績を有するジュリアン・ベイショア氏を任命した。

 記者会見当日は、テクノロジー担当バイスプレジデントのクリストフ・シュネル博士が登壇し、上述のボド・メラー・ケミー社の概況を説明するとともに、「商社ながら技術が売り」といった特色・独自性について強調した。

 また、ベイショア日本法人社長が日本法人の役割について、研究所内での小分けなどのリパック作業や解析、調合の最適化、技術コンサルティング、技術トレーニングといった万全のサポート体制によって、①パートナー企業(メーカー)に代わって日本国内のユーザーへの販売=市場開拓を行う。特に国内に日本法人や代理店がないパートナー企業についてはボド・メラー・ケミー・ジャパンが国内総代理店となり、二次代理店も使って拡販していく、②日系企業の海外工場に販路を開拓すべく国内でのスペイン活動を行う、③日系化学品メーカーのオンリーワンの製品技術を発掘して海外に輸出する、④後継者のいない商社(従業員10〜30人程度の規模)を数社M&Aによってグループ化し、国内での販売力を強化する、と発表した。

 製造時のカーボンフットプリントを削減するバイオベースのエポキシ樹脂システムや、水素貯蔵向け高圧容器に適用できるエポキシ系炭素繊維トウプレグ、希少資源を再利用できるように接合部分の接着剤のデボンディング(はく離)ができるサステナブルな易解体性接着剤など、ボド・メラー・ケミー社が得意とする環境対応製品を、日本が強みを持つ自動車や水素関連、エレクトロニクス、二次電池などの分野に提案していく。

 日本の厳しいユーザーの要求に対し、アフターサービスや信頼性試験に基づくデータ提出などが迅速に行えるよう、数年後をめどに国内に研究所を設ける予定だ。研究対象としては接着剤に限らず潤滑剤やコーティング剤など、新規開拓案件に応じて、適宜日本製の試験評価装置を導入しつつ、フレキシブルに拡充していく。また、従業員も10人程度まで増員していき、5年後の2029年までに30億円/年の売上を目指す。

 当日はまた、商売繁盛、社運隆盛を願っての、高崎産だるまへの「開眼式」が執り行われた。

だるま開眼式のようす

 

kat

11月5日~10日開催! JIMTOF2024に見る、工作機械向けbmt関連製品・技術

21時間 24 分 ago
11月5日~10日開催! JIMTOF2024に見る、工作機械向けbmt関連製品・技術 in kat 2024年10日29日(火) in in

 世界最大級の工作機械見本市「JIMTOF2024(第32回日本国際工作機械見本市)」(主催:日本工作機械工業会(日工会)/東京ビッグサイト)が11月5日~10日の6日間にわたって、東京都江東区の東京ビッグサイトで開催される。

 JIMTOF2024は、東京ビッグサイト全館を利用して総展示場面積11万8540m2で開催、合計出展者数が1262社/5743小間と、2022年に開催した前回JIMTOF2022に比べ175社/125小間増えた、60年以上の歴史で最大規模の開催となる。中国、台湾、ドイツ、スイス、韓国、米国など19カ国・地域の企業・団体が出展する、国内最大規模のB to B展示会に位置付けられる(JIMTOF2024全体の見どころ紹介はこちら)。

 ここでは、工作機械の高精度化や大型部品加工に対応する大型化、周辺機器を取り込んでの自動化といったトレンドに対応するベアリング&モーション技術(bmt)関連製品・技術の一端を紹介する(掲載は50音順)。

イグス

小間番号:東3ホール E3005

 イグスでは、工作機械業界向けに、エンジニアリングプラスチック技術を活かしたケーブル保護管や可動ケーブル、すべり軸受、リニアガイドなど幅広い可動部品向け樹脂(モーション・プラスチック)製品を紹介する。

 また、製造現場の自動化に貢献する、ロボットの3D動作用ケーブル保護管や、ロボット関連製品(協働ロボットや走行軸など)の展示も行う。

 さらに、本年日本語対応アプリをリリースした、機械や設備などの画像からAIが無潤滑化による環境負荷の低減やコストカットにつながるモーション・プラスチック部品を提案するアプリ「igusGO(イグスゴー)」も提案する。igusGOは、環境に優しく高品質・長寿命なモーション・プラスチックの活用・置き換えをユーザーがタイムリーで手軽に検討できるように開発されたアプリ。自動車や建設機械、ロボットなど、可動機構を持つ幅広い対象物をAIが認識し、ベアリングやリニアガイドなど、活用・置き換えの可能性があるイグスの無潤滑部品をユーザーに提案する。
 

イグス 「igusGO」

 

NTN

小間番号:西2ホール W2052

 NTNは、「工作機械主軸用グリース潤滑軸受向け樹脂保持器」を初披露する。グリース潤滑軸受用の成形樹脂保持器として業界最高水準の高速回転性能となるdmn値(ピッチ円直径(mm)×回転速度(min-1))で135万を実現。解析や回転試験、強度試験を重ねて耐熱性の高い材料を採用することにより、高速回転に伴う発熱による変形を抑制する。従来の樹脂保持器では対応できなかった高速回転領域への適用が可能となり、エアオイル潤滑からグリース潤滑への切り替えを後押しする。 初出展としてはまた、工作機械向け「高速サーボモーター用深溝玉軸受」を展示する。工作機械に使用されるサーボモーター向けの軸受として、同社従来品比40%向上となるdmn値190万の高速回転性能と、振動を従来品比で約50%低減する低振動性を実現。保持器は、材料を変更して遠心力による変形を抑制するとともに、形状も見直すことで、潤滑性を向上させている。さらに、保持器のポケット形状を改良し、保持器と転動体の接触を安定させることにより、低振動化を実現している。
 

NTN 工作機械向け「高速サーボモーター用深溝玉軸受」

 

黒田精工

小間番号:東2ホール E2001

 黒田精工は、精密平面研削盤で培った技術を生かした新商品として、精密ロータリー研削盤「GSR-600」を展示する。独自の油動圧とベアリングを組み合わせた高精度テーブルを有し、優れた操作性、さまざまなアプリケーションの対応で高精度な加工を容易にする。

 また、精密平面研削盤「GS-126CVs」を紹介する。高効率加工を実演するウルトラファイルバブルをはじめとしたオプションを搭載し、省エネ、省スペースを両立した環境対応モデルとなっている。

 さらに、従来の段取り時間を80%削減できる精密油圧治具「ハイドロリックツール」を紹介。時間のかかる「芯出し作業」を誰でも簡単に実現する精密油圧治具で、ブースでは、精密減速機、半導体市場に向けた用途別の対応例を多数展示する。自動化提案としては、そのハイドロリックツールと協働ロボットを搭載した精密成形平面研削盤「GS-45Vs」を披露、加工から測定までを高精度に自動化できることを訴求する。

黒田精工 「ハイドロリックツール」

 

ジェイテクト

小間番号:東3ホール E3014/E3015

 ジェイテクトは、グリース潤滑での高速回転に対応した、工作機械主軸用軸受「ハイアビリーJFASTTM」を紹介する。消費電力の大きいオイルエア潤滑に置き換わるグリース潤滑によって、カーボンニュートラルに貢献できる。

 グリース潤滑用に最適設計したPEEK樹脂製の保持器を採用した、高速性と低昇温性に優れた工作機械主軸用軸受で、アンギュラ玉軸受では、世界初のグリース潤滑でdmn値(ピッチ円直径(mm)×回転速度(min-1))で180万を達成(同社調べ)。軸受の昇温は従来品比約30%低減し、グリース寿命は約20%向上した。円筒ころ軸受では、グリース潤滑でdmn値150万を達成。軸受の昇温は従来品比約40%低減し、グリース寿命は約20%向上した。この二つの軸受を採用することで、#40サイズで20000min-1の回転が可能な主軸を提案。これにより、主軸の潤滑方式をオイルエア潤滑からグリース潤滑へ置き換えることができ、主軸エア消費量をオイルエア潤滑に比べて約60%削減できる。
 

ハイアビリーJFAST アンギュラ玉軸受(左)とハイアビリーJFAST 円筒ころ軸受(右)

 

THK

小間番号:西2ホール W2017

 THKは、ISO規格準拠寸法の超低ウェービング ボールリテーナ入りLMガイド「SPH形」を初披露する。8条列構造と小径ボールを採用することで直動案内トップクラスの超低ウェービングを実現。これにより、測定精度の向上や位置決め精度の向上、加工面品位の向上に寄与し、ナノメートルオーダーの運動精度が求められる分野にも対応が可能。従来の超低ウェービングLM ガイド「SPR/SPS形」は、同社独自寸法を採用したことで適用範囲が一部装置の案内部など限定的だったが、SPH形はISO 規格に準拠した寸法(世界標準寸法)のため、既存製品からの置き換えが可能。4方向等荷重で、あらゆる姿勢で使用できる。

 また、旋削加工を支える。高速回転と高剛性を両立する複列アンギュラリング「BWH形」を展示する。ボールを保持器で整列させる構造により、安定したスムーズな動きが可能。ローラーに比べ温度上昇を抑制、高速回転を実現する。適切な予圧が付与されており内外輪の取付穴で製品を直接組み付けられるので、組み付け時に予圧調整や押さえ部品が不要。

THK ISO規格準拠寸法の
超低ウェービング ボールリテーナ入りLMガイド「SPH形」

 

日本トムソン

小間番号:西2ホール W2020

 日本トムソンは、潤滑部品Cルーブ内蔵のリニアローラウェイスーパーX「MX Master Grade」を披露する。標準の超ロングユニットに対して脈動を大幅に低減し、高精度で高品位な加工が要求される超精密加工機などの軸案内に最適な製品であることをアピール。会期中は、初出展のデモ機を展示する。

 また、従来のニアローラウェイスーパーXに対して、ローラー寸法の変更やローラー幅(長さ)方向の押さえ構造の変更などを行い、低脈動の頂点である「走行振れ0」に挑戦したコンセプトモデル「次世代リニアローラウェイスーパーX  ZERO」も披露する。

 さらに、カーボンニュートラルに向けたエコプロダクツの提案として、Oil MinimumをキーワードにCルーブ・メンテナンスフリーシリーズや液晶潤滑シリーズを紹介、調達時の大幅なCO2削減が図れることを訴求する。

日本トムソン CルーブリニアローラウェイスーパーX「MX Master Grade」

 

日本ベアリング

小間番号: 西2ホール W2058

 日本ベアリングは、同社の強みとする、スライドウェイ・スライドブッシュを中心に直動製品を多数展示する。

 スライドウェイはローラーを使用した非循環方式のクロスローラーガイドで、リニアガイドと比較して、①コンパクト設計、②軽く滑らかな動き、③高剛性・高精度の特長があり、半導体製造装置、検査装置、光学機器で主に適用されている。

 特に新開発の高剛性・高負荷容量・コンパクト化を実現したスライドウェイ「HV形シリーズ」では、従来品と比べ許容荷重・定格寿命距離が向上。従来品のSV形シリーズと完全互換性があるため、置き換えだけで装置・設備の耐久性向上に貢献し、同等性能でサイズダウンとコンパクト化が可能となる。腐食しやすい箇所でも十分に性能を発揮するオールステンレス仕様もラインアップしている。

 同社ブースでは、スライドウェイを使ったことがない来場者にも分かりやすいように、製品の特長や使い方を説明したパンフレットを用意しているほか、直動製品の具体的な使用方法や設計のヒントになるよう、製品活用事例集やデモ機も配置する。
 

日本ベアリング スライドウェイ「NV形・HV形」

 

日本精工

小間番号:西2ホール W2026

 日本精工は、工作機械主軸用精密単列円筒ころ軸受「ロバストライド™(ROBUSTRIDE™)」を紹介する。電力消費量が少ないグリース潤滑方式におけるグリース寿命と許容回転数の向上により、軸受の長寿命化と高速化を実現。軸受の交換頻度の低減や、使用回転速度域の拡大など、工作機械の生産性向上に貢献する。

 また、工作機械向け低フリクションボールねじ「MT-Frix™」を披露する。独自の解析技術でボールと溝の接触状態を高精度に解明して内部仕様を最適化し、寸法はそのままに、剛性を維持しながら動摩擦トルクを低減。これにより、大幅な低発熱化を実現し、工作機械の高い位置決め精度を維持するとともに省エネルギーに貢献する。

 さらに、設備診断エキスパートが支援する「状態監視ソリューション」を紹介する。ユーザーの重要な設備における保全の最適化、省人化、製品品質の改善など、ものづくりDXを実現。高度診断AIと経験豊富な診断エキスパートによる遠隔監視が可能となる。

日本精工 工作機械主軸用精密単列円筒ころ軸受「ロバストライド」

 

ハイウィン

小間番号:西2ホール W2051

 ハイウィンは、日本初出展製品として、トルクモーターロータリーテーブル「RAB630」を披露する。同社のロータリーテーブルはゼロバックラッシュ・ダイレクトドライブ(DD)方式で豊富なラインアップが特長。RAB630は最高回転数 1000min-1、5軸同期加工を可能にする高速型で、航空宇宙部品や医療、EV等の産業における需要急増に応える、高い加工効率と精度を実現。特にフライス加工や複合旋盤の進化に貢献する。

 また、スマートマニュファクチャリングに貢献する状態可視化システム搭載の直動製品「i4.0シリーズ」を紹介する。温度や振動の異常検知、機器の寿命予測を可能にし、チョコ停を予防することで高い生産効率を維持するほか、スマート潤滑機能により給油量を適切に減らすことで、環境負荷の低いものづくりを後押しする。ボールねじi4.0BS®のほか、半導体業界で活躍するリニアガイドウェイi4.0GW®、モジュール設計でスマートな生産管理を推進するi4.0単軸ロボットを展示する。
 

ハイウィン 状態可視化システム搭載のボールねじ「i4.0BS」

 

不二越

小間番号:西1ホール W1056

 不二越は、切削バリの極小化を実現する切削工具「バリレスシリーズ」に、アルミ合金など非鉄金属用の水素フリーDLCコート工具などの新ラインアップを紹介する。

 アルミ合金を含む非鉄金属は、切削加工の際に被削材が工具の刃先に凝着しやすく、バリの増大といった品質の低下や工具損傷を引き起こす場合がある。また、これらの被削材は圧縮の力を与えると変形しやすい特性があり、ドリルの先端角によって発生する圧縮の力で、鋼と比べて抜けバリが大きくなる。

 これに対し新開発の「DLC-REVOコーティング」は、ダイヤモンドに次ぐ膜硬さで耐熱性の高い水素フリーDLCの表面に摺動特性を付加し、低摩擦(耐凝着性向上)を実現。さらに膜厚を薄くすることで、バリレスに求められる切れ味(シャープ性)を担保している。ブースでは、DLC-REVOコーティングを施した新開発の「DLC-REVOドリルバリレス」と「DLC-REVOミルバリレス」を披露、一層のバリ極小化ソリューションを提示する。

不二越 「DLC-REVOドリルバリレス」

 

ミネベアミツミ

小間番号:南3ホールS3031

 ミネベアミツミは、がたつくことなくアキシアル荷重、ラジアル荷重、モーメントを受けることが可能な高剛性を有しているため、より高い加工精度を実現するアキシアル/ラジアルベアリング(myonic製)や、可動式のノズルで切削油やエアを揺動噴射することで金属加工の効率を向上させる切削油噴射装置「Wavy Nozzle(ウェイビーノズル)」を紹介する。

 また、小型から大電流まで豊富なラインナップを揃える防水コネクタや豊富な採用実績と高い信頼性のある多芯角型コネクタ、小型で高速伝送かつ堅牢性を兼ね揃えた0.8mmピッチI/Oコネクタ、小型・軽量化が進む産業機器・協働ロボット等の装置内部に対する配線課題に考慮した、狭小スペース向け小型中継コネクタを展示。さらに、センシングデバイスとしては、金型内の樹脂圧・温度を管理、記録ができる金型センシング統合システムや低容量、高精度、高速回転、高速応答を実現した低容量軸トルクメータTMRSを紹介する。そのほか、コイル部と回路基板をエポキシ樹脂にてモールドすることにより、外部要因からファンモーターを守る耐環境性のポッティングファンやミネベアパワーデバイスのIGBT・SiCモジュールも展示する。
 

ミネベアミツミ 切削油噴射装置「Wavy Nozzle」

 

kat

NTN、工作機械主軸用のグリース潤滑軸受向け潤滑油給油ユニットを開発

1日 ago
NTN、工作機械主軸用のグリース潤滑軸受向け潤滑油給油ユニットを開発kat 2024年10日29日(火) in in

 NTNは、工作機械主軸用グリース潤滑軸受の長寿命化を可能とする「グリース潤滑軸受向け潤滑油給油ユニット」を新たに開発した。グリース潤滑軸受の高速回転時の課題であるグリースの劣化を抑制し、高速回転領域であるdmn値(軸受ピッチ円径(mm)×回転速度(min-1))190万におけるグリース潤滑軸受の採用を可能にする。同社では、高速回転用途で一般的に使用されてきたエアオイル潤滑からグリース潤滑への切り替えを後押しすることで、工作機械の省エネルギー化やカーボンニュートラルに貢献していく。同社では、開発したグリース潤滑軸受向け潤滑油給油ユニットについて、工作機械主軸(マシニングセンター、複合加工機、旋盤)向けなどに提案を進め、2027年度に1億円/年の販売を目指す。

 

工作機械主軸用「グリース潤滑軸受向け潤滑油給油ユニット」


 

マシニングセンターと工作機械主軸における適用箇所(赤丸部分)

 

 工作機械は加工時間の短縮を目的に、主軸の高速回転化が進んでいる。主軸の回転を支える軸受の潤滑方法にはエアオイル潤滑とグリース潤滑があり、一般的にdmn値で140万を超える高速回転用途にはエアオイル潤滑が用いられる傾向にある。

 しかし、エアオイル潤滑は長期にわたって安定した潤滑が可能な一方で、圧縮空気やエアオイルの供給装置などの付帯設備が必要となるため、省エネルギー化を図りにくいという課題がある。

 これに対しグリース潤滑は、初期に封入したグリースで潤滑を行うため、エアオイル潤滑のような付帯設備が不要となる一方で、軸受の発熱などによりグリースが劣化するために、高速回転用途では潤滑寿命が短くなるという課題があった。

 近年、カーボンニュートラルの達成を目的に工作機械の省エネルギー化が進められている中で、従来はエアオイル潤滑軸受しか対応できなかった高速回転領域にグリース潤滑軸受を適用するニーズが高まってきている。

 これに対しNTNでは、高速回転環境下におけるグリース劣化を抑制し、潤滑耐久性を確保することで、長期間の使用を可能とするグリース潤滑軸受向け潤滑油給油ユニットを開発したもの。

 本開発品は、主軸用軸受に隣接する間座に独自の給油機構を内蔵した間座ユニットで、外輪間座と内輪間座には、給油機構に加えて、潤滑油タンク、センサーおよびセンサーによる検出データの処理回路、無線モジュール、自立電源を搭載している。主軸の回転により発電し、電装品の駆動に必要な電力を供給するため、外部からの給電が不要で、単独での動作が可能。

 給油は基礎試験の結果やグリースの劣化メカニズムの解析に基づき、予め設定した時間間隔で行う仕組みとしており、グリースの潤滑寿命を同社従来品比2.5 倍以上に延ばすことが可能。将来的には内蔵センサーを用いて潤滑剤の枯渇状態を検出し、最適な給油タイミングで必要量の潤滑油を供給することで、同15倍以上の長寿命化を目指す。

 本開発品を用いることで、高速回転環境下におけるグリースの潤滑耐久性を確保し、dmn値190万の高速回転用途でもグリース潤滑軸受の適用が可能となる。

構造

 

連続運転時間(dmn値190万)の比較結果

 

kat

TOKYO PACK 2024開催、イグスがPFAS規制対応すべり軸受などを披露

1日 21時間 ago
TOKYO PACK 2024開催、イグスがPFAS規制対応すべり軸受などを披露kat 2024年10日28日(月) in in

 「TOKYO PACK 2024 (2024東京国際包装展)」(主催:日本包装技術協会)が10月23日~25日、東京都江東区の東京ビッグサイトで開催された。

会場のようす

 

 同展は、包装資材、包装機械から包材加工機械、食品機械、関連機器類、環境対応機材、物流機器類に至る生産・包装・流通の技術振興をはかるとともに、相談や交流および包装の最新情報発信の場として、国際的な視野に立った社会の発展に資することを目的に開催されている。

 ベアリング&モーション技術(bmt)関連では、イグスが出展し、改正食品衛生法やFDA(米国食品医薬品局)規格、今後の厳格化が予想されるPFAS(有機フッ素化合物)規制などに対応した食品包装機械向け製品として、自己潤滑性に優れる可動部品向けエンジニアリングプラスチック(モーション・プラスチック)「イグリデュール」製のすべり軸受やリニアガイド、コーティング材などを幅広く紹介した。

改正食品衛生法・FDA規格・PFAS規制に対応したすべり軸受やリニアガイドなど

 

 イグスの食品包装機械向けモーション・プラスチック製品は、粉塵・薬液・高温・摩耗対策に適している点が特徴で、ブースではまた、イグス本社のあるドイツにおいて食品機械装に採用されたアプリケーションとして、ハンドやローラー、軸受に自己潤滑性に優れるモーション・プラスチック「イグリデュール」を使用したボトル搬送用グリッパーなどの実物を展示した。

ドイツ製の食品機械に採用されたボトル搬送用グリッパーなどの実物展示

 

kat

イグスの移動式陸上電力供給システムがPorts and Harbor Innovation of the Year賞を受賞

1日 22時間 ago
イグスの移動式陸上電力供給システムがPorts and Harbor Innovation of the Year賞を受賞kat 2024年10日28日(月) in

 「接続のジレンマ」を解決するイグスの移動式陸上電力供給システム「iMSPO (igus Mobile Shore Power Outlet)」が、アムステルダムで開催された展示会「Electric & Hybrid Marine Expo Europe 2024」において、港湾分野での革新的な技術やプロジェクトを表彰する「Ports and Harbor Innovation of the Year賞」を受賞した。

 

 本年6月にアムステルダムで開催された展示会「Electric & Hybrid Marine Expo Europe」は、海洋・港湾分野でのエネルギーを電化・ハイブリッド化する技術に特化した展示会で、持続可能性と環境に配慮した技術に焦点をあてている。本展示会でイグスが受賞したPorts and Harbor Innovation of the Year賞は、港湾の持続可能性や効率、安全、運営の向上に寄与する新しいアイデアやソリューションを持つ企業や団体に与えられるもの。陸上電力供給(陸電)とは陸上の電力を電源から船舶に接続し、停泊中の船舶が必要とする電力を供給するもので、停泊中のディーゼルエンジンをオフにすることで船舶のアイドリングストップが可能になるためCO₂を削減できるが、同社の陸電システムiMSPOは、審査委員会より「iMSPOは港湾電化の重要な要件に対応している」との評価を得てPorts and Harbor Innovation of the Year賞を受賞したもの。

 欧州では、気候変動政策「Fit to 55」で「2030年までに温室効果ガスの純排出量を少なくとも55%削減すること」を目標に掲げ、港湾事業者に対しても環境に優しい技術への転換を求める声が高まっており、本賞の受賞は業界の発展に大きな影響力を持つ。日本においても、2020年から国交省が陸電に関する検討をはじめており、カーボンニュートラルポート(温室効果ガス排出ゼロを目指し港湾機能が整備された港)の実現に向けて国内主要港が陸電設備設置のためシステム等選定に動きだすなど、重要性が増していきている。

 港湾では大小さまざまな船が停泊するため、船ごとに適した停泊位置が異なるほか、船側の給電位置が水平・垂直方向につど変化する。港湾側で設けた給電ソケットが1カ所に固定されている場合に、船の形状によって電源まで距離が発生し、給電ができない「接続のジレンマ」が問題となる。とはいえ、港湾に複数の給電ソケットを設置することは費用・運用の面から現実的ではない。

 その接続のジレンマを解決するソリューションとして、イグスは世界で初めて、岸壁を移動する方式で船舶に電力を供給するiMSPOを開発した。iMSPOは、給電ソケットが岸壁を移動することにより400m以上の距離をカバーできる。1台で大小さまざまなサイズ・種類の船へ給電でき、港湾事業者は設置、運用、メンテナンスのコストを抑えながら、柔軟に陸電設備の設置を計画できる。

 iMSPOは、ドイツのハンブルク港をはじめ、大型船が寄港する世界各地の港で採用され、稼働している。イグスでは、今後国内で陸電設備の設置が加速するにあたり、海外実績から得たノウハウ・提案を武器に、iMSPOおよびイグスのソリューションの提供を通じてカーボンニュートラルポートの形成に貢献していく。

岸壁を移動する陸電システムiMSPO


 

kat

ジェイテクト、グリース潤滑での高速回転に対応する工作機械主軸用軸受を開発

5日 ago
ジェイテクト、グリース潤滑での高速回転に対応する工作機械主軸用軸受を開発kat 2024年10日25日(金) in in

 ジェイテクトは、グリース潤滑での高速回転に対応した、工作機械主軸用軸受「ハイアビリーJFASTTM」を開発した。消費電力の大きいオイルエア潤滑に置き換わるグリース潤滑によって、カーボンニュートラルに貢献していく。

 ハイアビリーJFASTTMは、2年前に開催されたJIMTOF2022でのユーザーの声を反映して開発された。

 工作機械主軸用軸受は高速回転が求められるため、通常はオイルエア潤滑が採用されるが、機械稼働中は常にエアを使用するため消費電力が大きくなるという課題があった。この課題に対し同社では、独自保持器設計技術により、グリース潤滑で対応できる高速回転領域を拡大し、省エネさらにはCO2排出量削減を実現するソリューションとして、本製品を開発したもの。

 ハイアビリーJFASTTMは、グリース潤滑用に最適設計したPEEK樹脂製の保持器を採用した、高速性と低昇温性に優れた工作機械主軸用軸受。

 アンギュラ玉軸受では、世界初のグリース潤滑でdmn値(ピッチ円直径(mm)×回転速度(min-1))で180万を達成(同社調べ)。軸受の昇温は従来品比約30%低減し、グリース寿命は約20%向上した。

 円筒ころ軸受では、グリース潤滑でdmn値150万を達成。軸受の昇温は従来品比約40%低減し、グリース寿命は約20%向上した。

 この二つの軸受を採用することで、#40サイズで20000min-1の回転が可能な主軸を提案。これにより、主軸の潤滑方式をオイルエア潤滑からグリース潤滑へ置き換えることができ、主軸エア消費量をオイルエア潤滑に比べて約60%削減できる。

 

ハイアビリーJFAST アンギュラ玉軸受(左)とハイアビリーJFAST 円筒ころ軸受(右)

 

ハイアビリーJFASTシリーズの特徴

 

ハイアビリーJFASTシリーズの主軸搭載位置(イメージ)

 

kat

イグス、創業60周年を記念し、廃プラスチック製自転車のワールドツアーを開始

5日 21時間 ago
イグス、創業60周年を記念し、廃プラスチック製自転車のワールドツアーを開始kat 2024年10日24日(木) in

 1964年10月15日創業のイグスはこのほど、創業60周年を記念して、廃プラスチック製自転車「igus:bike(イグスバイク)」で世界中を走行するツアーを実施する。本社を構えるドイツ・ケルンを出発点に、igus:bikeが世界の約16の国と地域を巡る。日本へは2025年春にigus:bikeが到着する予定。

 

 igus:bikeは、漁網を中心とした廃プラスチックを原料に使用したサステナブルな自転車です。プラスチックを開発・製造する企業としての社会的責任を果たすべく、イグスとMTRL社が共同で、「プラスチックの廃棄を循環に転換させる未来の移動手段」とのコンセプトで約4年を費やして開発した。プラスチック製自転車は長持ちすると同時に潤滑剤を使うメンテナンスが不要で、屋外使用での腐食や汚れに強い耐性を発揮する。この自転車は、イグスの「モーション・プラスチック(可動部に使用するプラスチック)」技術と環境に対する理念を体現する、イグスの象徴ともいえる製品に位置付けられる。

 イグスは10月15日にドイツ本社で、igus:bikeワールドツアーのプレスイベントを実施し、ツアーの開始を宣言したほか、総面積22000㎡に及ぶ新工場を披露した。

 ドイツでは1か月にわたり、igus:bikeでイグスと関係の深い顧客を訪ねたり、ハンブルク港、ライン川などのスポットを走るなど、国内を巡る。その後、igus:bikeはアジアへ輸送され、各地の都市、サイクリングスポット、顧客企業などを巡る予定。

イグスバイクに乗るフランク・ブラーゼCEO

 

イグスバイクが新工場から出発するようす

 

kat

ブルカージャパン、11/12に大阪で「BioAFMミーティング」を開催、参加登録を受付中

1週 ago
ブルカージャパン、11/12に大阪で「BioAFMミーティング」を開催、参加登録を受付中kat 2024年10日22日(火) in

 ブルカージャパンナノ表面計測事業部は11月12日13:30~17:30、アットビジネスセンターPREMIUM新大阪(大阪市淀川区西中島5-14-10新大阪トヨタビル9F  911号室で、同社のBioAFMユーザー、BioAFMの導入を検討中の顧客、測定技術に興味のある人、これから携わりたいなどAFMに興味のある人を対象として「BioAFMミーティング2024」を開催する。

 

 今回初開催となる本セミナーでは、ユーザーによる最新の研究成果や、測定のための技術など、研究者に役立つプログラムを企画しているほか、トークセッションでは、測定のヒントやコツなど、普段の測定に関する悩みに答える機会となっている。トークセッションの準備として、事前に参加予定者から、周りに相談できないさまざまな疑問や質問などのトピックスを、登録フォームへの記載にて受け付けている。

 参加費用は無料で、定員は50名。登録はこちらから。

 当日のプログラムは以下のとおり。

13:00 受付開始

13:30~13:35 「開催挨拶」ブルカージャパン ナノ表面計測事業部 統括部長 鈴木大輔氏

13:35~14:05 「ナノ内視鏡AFMによる細胞内ナノ動態および力学計測」金沢大学 ナノ生命科学研究所 所長・教授 福間剛士氏…原子間力顕微鏡(AFM)は、液中で生体分子や細胞表面のナノ動態を直接観察できる唯一無二の手法である。しかし、従来のAFMでは細胞内の構造を直接観察することは難しかった。近年我々は、細長いニードル状の探針を生きた細胞内部に挿入し、細胞内の動態や力学物性をナノレベルで計測できるナノ内視鏡AFM技術を開発した。本講演では、この技術の開発経緯や、原理を紹介した後で、その応用事例を紹介する。

14:05~14:35 「植物細胞の力学物性を測る:道管細胞の分化と細胞弾性変化」奈良先端科学技術大学院大学 バイオサイエンス領域 助教 國枝 正氏…植物は乾燥する陸上に適応するため、水を確保するための構造を発達させた。維管束植物がもつ“道管”はその一つであり、その形成では、細胞を覆う固い細胞壁の形成と水を通す中空の管状構造となるための細胞死という、力学的に相反する細胞イベントを伴う。本講演では、細胞分化とともに変化する植物細胞の力学的物性変化を捉えるためのAFMを利用した研究例についてエンドユーザーの立場から紹介する。

14:35~15:05    「マルチスケール力学計測とバイオロジーの接点」京都大学 医生物学研究所 助教 牧 功一郎氏…講演者は、AFMを用いて、生体分子から、細胞・組織にわたるマルチスケールの力学計測(引張試験・押し込み試験)を進めてきた。これまでの具体的な実践例を紹介するとともに、力学計測と生物学をより深くリンクさせるための考えや工夫についても共有し、参加者と議論を行う。

15:05~15:35 休憩:情報交換(お茶とお菓子を用意)

15:35~15:50 「広視野・高精細を実現する顕微鏡イメージング」エビデント ライフサイエンスリサーチ プロダクトマーケティング 出張雅敏氏

15:50~16:05 「ブルカーバイオAFM製品紹介とデモンストレーション」ブルカージャパン ナノ表面計測事業部 アプリケーション部 塚本和己氏

16:05~16:20 休憩 (トークセッション準備)

16:20~17:20 座談会「みんなで話そうバイオAFM」パネリスト:講演者各位…AFMを用いた液中測定の課題や期待をパネリストの方々と意見交換できるプログラム(質問・相談を登録フォームより事前受付中)

17:30~19:00 懇親会

kat

ナノ科学シンポジウム2024が開催

1週 ago
ナノ科学シンポジウム2024が開催kat 2024年10日22日(火) in

 ナノテクノロジーと走査型プローブ顕微鏡(SPM)に特化した「ナノ科学シンポジウム(NanoScientific Symposium Japan 2024 : NSSJ2024)」が10月18日1、東京都文京区の東京大学 浅野キャンパス 武田ホールで開催され、約80人が参加した。主催は東京科学大学 物質理工学院 中嶋・梁研究室と関東学院大学 材料・表面工学研究所、パーク・システムズ・ジャパンで、協賛はNanoScientificとヤマトマテリアル、Ark Station、後援は日刊工業新聞社とメカニカル・テック社。

NSSJ2024参加者の全体写真

 

 科学技術の革新によりナノ科学では材料、表面を計測・解析する方法も各種発展している。特に、SPMの登場により、 ナノレベルでの表面計測・解析の基礎技術としての重要性が日々増している。ナノ科学シンポジウム(NSSJ)は、走査型プローブ顕微鏡を用いた 材料科学、半導体およびライフサイエンス分野の最先端の研究情報を共有・交換するSPMユーザーシンポジウムで、2020年から開催され5回目となるNSSJ2024では、以下の登壇者による講演のほか、ポスター発表が行われた。

・町田友樹氏(東京大学 生産技術研究所)「二次元結晶のファンデルワールス接合によるモアレ超格子の作製と観測」…ファンデルワールス接合では、①界面において格子整合の制約がなく、②原子レベルで平坦な理想的界面が実現し、③構成要素となる二次元結晶の選択肢が極めて広い。さらに、④原子層間のツイスト角度という既存の材料系ではあり得ない制御自由度があり、ツイスト積層によりモアレが形成され、バンド構造が制御できる。既存の材料系では得られない物性が発現する可能性があり、基礎・応用の両面で幅広い可能性を秘めている。講演では、ファンデルワールス積層によるモアレ超格子の作製と原子間力顕微鏡(AFM)による観測、物性創発について紹介した。

・吉田昭二氏(筑波大学)「光波駆動STMを用いた時空間ダイナミクス計測」…近年テラヘルツ~中赤外領域の光パルス生成技術が進展し1サイクル未満の振動サイクルを持つパルスを発生しパルス中の電場位相を自在に制御することも可能になってきた。光波駆動の走査型トンネル顕微鏡(STM)は、そのようなサブサイクル光で直接STM探針-試料間のトンネル電流を瞬間駆動することで試料の瞬時状態を捉える手法で、これまでに原子分解能と30フェムト秒未満の時間分解能が実証されている。講演では、同氏がこれまで物質表面の光励起状態とそのダイナミクスの計測を目的として実験を進め、C60薄膜や遷移金属ダイカルコゲナイド原子層上の電子ダイナミクスの計測行ってきた成果に加えて、今後の展望についても紹介した。

・梁 暁斌氏(東京科学大学)「原子間力顕微鏡によるナノ応力分布とナノ導電性の可視化」…AFMをベースにしたナノ触診AFM技術に伸長装置や圧縮装置を導入することで、試料表面のナノ応力分布を実空間で可視化できた。これにより、材料の微細なメカニカル特性と変形挙動を詳細に解析することが可能となり、特にゴムやエラストマーなどの高分子材料の特性理解において重要な進展があった。さらに、ナノ触診AFMに導電性AFMを組み合わせ、変形に伴うフィラーネットワークのナノ空間構造の評価手法を確立したことで、フィラー充填ゴムの強化メカニズムや応力伝達の挙動を明らかにできた。引き続き、ナノ材料のメカニカル特性と電気特性の相関を解明し、次世代の材料開発への貢献を目指す、とした。

・前田 泰氏(産業技術総合研究所)「走査型広がり抵抗顕微鏡による全固体電池の解析:電極内部の電子伝導」…EV用次世代バッテリーとして全固体電池が期待されている。全固体電池では様々な固/固界面を通したイオンや電子の移動が重要である。産総研では、走査型広がり抵抗顕微鏡(SSRM)を用いてこうした界面現象の解析を進めている。講演では、SSRMと3Dシミュレーションとを組み合わせて、硫化物系全固体電池の電子伝導を解析した事例を紹介したほか、硫化物系全固体電池の測定をする上でのポイントについても紹介した。

・久保田賢治氏(三菱マテリアル)「AFM、QCM-Dおよびエリプソメトリーを用いた銅めっき添加剤吸着状態の解析」…めっきの添加剤として用いられる水溶性高分子と界面活性剤を対象として、AFM、QCM-D、エリプソメトリーを用いて添加剤の電極表面への吸着状態とめっき反応抑制効果の関係を解析した。その結果、迅速に吸着しリジッドな膜を形成するCTABが最も高い電析抑制作用を示し、含水量が多くソフトな膜を形成するPVAは抑制効果が弱く、吸着速度が遅いLASでは抑制効果が非常に弱かった。液中AFMを用いてモルフォロジーの観察を行いこれらの結果を補強した。複数の解析手法を併用することで固液界面に存在するめっき添加剤の存在形態に関する情報を得ることができた。

・小林 圭氏(京都大学)「液中AFMによる固液界面物性計測と探針増強ラマン分光装置の開発」…液中で動作する周波数変調原子間力顕微鏡(FM-AFM)について、その動作原理および構成を概説し、分子分解能での生体分子の構造観察事例を紹介する。さらに、フォースマッピング法によって固液界面での相互作用力分布を取得することで、水和・溶媒和計測や電荷分布計測が可能となる。いくつかの固液界面物性計測事例について紹介したい。一方、AFMで得られる表面物性は通常物理的な性質に限られるが、AFMとラマン分光を組み合わせた探針増強ラマン分光(TERS)によれば、化学的な性質も評価することが可能となる。講演では、薄膜導波路構造を有するプローブを用いた高感度TERS装置の開発状況および展望について述べた。

・尾木佑輝氏(東京都立科学技術高等学校)「AFMを用いたウルトラファインバブルによる鉛蓄電池の電極界面現象の解析」…本研究では鉛蓄電池の電解液にウルトラファインバブル(UFB)を添加し、電極界面現象などについて解析した結果、通常の電解液と比較してUFBを添加した電解液では、劣化の主要因であるサルフェーションが顕著に抑制されることが明らかになった。さらに、AFMなどを用いたナノスケールでの解析により、UFBによるサルフェーション抑制機構について明らかにすることでUFBの特性解明においても重要な進展がある。講演ではそれらの結果に加え、今後の展望についても紹介した。

・内橋貴之氏(名古屋大学)「高速原子間力顕微鏡で探る一分子ダイナミクス」…原子間力顕微鏡(AFM)は、無機から有機材料、生体分子までの多岐に渡る試料表面をナノメータースケール分解能で可視化できる表面構造解析ツールとして発展してきた。高速AFMの開発は1993年頃から進められ、2001年に1フレーム80msで撮影できる装置が報告された後、2008年頃に現行性能の高速AFMが確立し、特に生体分子の機能動態観察に応用されてきた。近年、ユーザーと関連論文数が増加し、分子の構造イメージングだけでなく、プローブによる構造操作や局所力学特性の定量計測、力学特性のマッピングも可能になってきている。講演では、高速AFMによる生体/合成分子の一分子ダイナミクス計測への最近の応用研究や機能拡張に向けた技術開発について紹介した。

・Jake Kim氏(Park Systems)「New Cutting-Edge AFM Techniques」…最先端のAFM技術として、従来はAFMの競合と位置付けられていたような計測機器、たとえば走査電子顕微鏡(SEM)とAFMを組み合わせることで、広い測定領域をカバーしつつ、SEMによる組織、組成、元素分布観察などと、AFMによる3D形状計測と硬さや摩擦、吸着などの力学物性情報や電流、電気抵抗、表面電位、磁性などの電磁気物性情報の同一箇所での解析評価が行える。また、AFMはカンチレバーのセットやレーザービームのアライメントの難しさなどから、従来は操作にあたってのトレーニングが必要とされたが、プローブの自動交換やレーザービームの自動アライメントの機能などによって、初心者でも直感的な測定を可能とする同社の最新機種FX200なども登場していることを紹介した。

 

講演のようす

 

 当日はまた、18件のポスター発表が実施され、選考委員により最優秀賞1件、優秀賞3件が以下のとおり選考された。

◆最優秀賞
・「Verification of the contact mechanics with the fractional viscoelastic model」長谷川花音氏(東京科学大学)

◆優秀賞
・「Complex Strain Behavior of Polymeric Microparticle Latex Film Observed with Tip-Scan AFM」Chan Feng-Yueh氏(名古屋大学)

・「Investigation of Solvation Structures of Lithium-ion Battery Materials on Clinochlore Using Frequency Modulation Atomic Force Microscopy」Wang Yilin氏(京都大学)

・「高速AFMによるSecトランスロコンの一分子計測」金岡優衣氏(名古屋大学)

 

ポスター発表 表彰式のようす
kat

World PM(粉末冶金国際会議)2024が開催、27カ国から750人が参加

1週 ago
World PM(粉末冶金国際会議)2024が開催、27カ国から750人が参加kat 2024年10日22日(火) in

 日本粉末冶金工業会(JPMA)と粉体粉末冶金協会(JSPM)の主催により、「World PM2024(粉末冶金国際会議)」(Congress Chairs:園田修三JPMA会長(福田金属箔粉工業)、尾﨑由紀子JSPM会長(大阪大学/九州大学))が10月13日~17日、横浜市西区のパシフィコ横浜で、“Make a better world with PM(粉末冶金(PM)でより良い世界を作る)”をメインテーマに開催された。世界27カ国から750人が参加した。

会場のようす


 World PMは粉末冶金の国際会議では最も大規模な催しで、北米、欧州、アジアとロケーションを変えて隔年開催されているが、日本での開催は「World PM 2012」開催以来の12年ぶりだった。

 World PMは論文発表と展示会の2本立ての会議となるが、World PM2024の論文発表では、粉末製造技術、粉末の圧密と焼結、粉末の成形と焼結、熱間静水圧焼結、アディティブマニュファクチャリング(AM)焼結関連技術、金属射出成形(MIM)関連技術、粉末冶金におけるトライボロジー、などの最新のPM技術に関するセッションで、430件の発表(口頭発表ならびにポスターセッション)がなされた。

口頭発表のようす

 

ポスターセッションのようす

 

 会期中はまた、焼結含油軸受などの部品や原材料、熱処理装置など関連装置、MIM製品、AM関連機器・製品など、PMサプライチェーンの最新の製品・技術を紹介する展示会が、100社/140小間の規模で開催された。

 

展示会のようす


 会期中はさらに、Welcome Reception、Congress Partyなどのさまざまなソーシャルイベントや、テクニカルビジット(先進技術を学ぶ視察旅行)やオプショナルツアーなどの特別プログラムも設けられた。

kat

NTN、工作機械主軸用グリース潤滑軸受向けに高速回転に対応する樹脂保持器を開発

1週 1日 ago
NTN、工作機械主軸用グリース潤滑軸受向けに高速回転に対応する樹脂保持器を開発kat 2024年10日22日(火) in in

 NTNは工作機械主軸用のグリース潤滑軸受向けに、射出成形が可能な樹脂保持器としてdmn 値(軸受ピッチ円径(mm)×回転速度(min-1))が135 万と業界最高水準の高速回転性能を実現する樹脂保持器を開発した。生産性に優れた成形樹脂保持器の高速回転化により、グリース潤滑軸受の適用範囲をさらに拡大し、工作機械の加工時間の短縮や省エネルギー化に貢献する。

 本保持器を同社の「ULTAGE(アルテージ)シリーズ」を含む工作機械用のグリース潤滑軸受に適用し、エアオイル潤滑軸受からの切り替えをグローバルに提案。工作機械主軸(複合加工機、マシニングセンタ、旋盤) 向け軸受として、2026年度に1.5億円/年の販売を目指す。

 同社ではまた、保持器以外にもグリースなど軸受を構成する各要素における開発を進め、グリース潤滑軸受の一層の高速回転対応を追求することで、各種製造現場の生産性の向上と省エネルギー化に貢献していく。

工作機械主軸用グリース潤滑軸受

 

工作機械(マシニングセンター)と主軸

 

 加工時間の短縮に向けて、工作機械の高速回転化が進む中、工作機械の主軸用軸受にも高速回転性能が求められている。主軸用軸受の潤滑方法にはエアオイル潤滑とグリース潤滑があり、一般的に高速回転に適しているのはエアオイル潤滑とされている。しかし、エアオイル潤滑はエアオイルの供給やオイルミストの回収などのための付帯設備が必要となるため、近年は省エネルギー化を目的としてグリース潤滑への切り替えが進むとともに、グリース潤滑軸受の高速回転対応へのニーズが高まってきている。

 これに対し同社では、材料と設計を最適化することにより、グリース潤滑軸受の高速回転対応が図れる生産性に優れる成形樹脂保持器を開発したもの。

 開発品の特長は以下のとおり。

1.dmn値135万(同社従来品比20%向上)と、成形樹脂保持器として業界最高水準の高速回転性能:解析や回転試験、強度試験を重ねて耐熱性の高い材料を採用することにより、高速回転に伴う発熱による変形を抑制。本保持器は高速回転環境下においても十分な耐久性を有し、成形樹脂保持器を用いた軸受として業界最高水準となるdmn値135万の高速回転性能を実現し、成形樹脂保持器で従来は対応できなかった高速回転領域への適用が可能となり、エアオイル潤滑からグリース潤滑への切り替えを後押しする

2.長寿命化:本保持器は、形状を最適化し、軸受取り付け後の初期回転時のグリース挙動を制御することで、慣らし運転を含めた温度上昇を抑制し、長寿命化を実現

 

構造

 

軸受の転走面におけるグリース挙動解析のイメージ

 

限界速度による開発保持器の耐久性評価

 

kat

NTN、工作機械向け高速サーボモーター用深溝玉軸受を開発

1週 1日 ago
NTN、工作機械向け高速サーボモーター用深溝玉軸受を開発kat 2024年10日22日(火) in in

 NTNは、工作機械の主軸の駆動部位に使用される工作機械向けサーボモーター用軸受として、保持器の材料や形状の見直しにより、高速回転対応と低振動化を実現した「高速サーボモーター用深溝玉軸受」(対応サイズ:内径φ40mm~)を開発した。同社では、工作機械の加工時間の短縮や加工精度の向上に貢献する商品として、グローバルに提案を進め、2026 年度に1億円/年の販売を目指す。

 

工作機械向け「高速サーボモーター用深溝玉軸受」

 

工作機械用サーボモーターにおける適用箇所(赤丸部分)


 

 製造現場において、労働人口の減少を背景に省人化や生産性向上に関する取り組みが進められる中、工作機械は加工時間の短縮に向けた主軸の高速回転化や、品質安定化に向けた加工精度の向上が進められている。これにより、工作機械の駆動力を発生させるサーボモーターに使用される軸受にもまた、高速回転対応や低振動化が求められている。

 軸受が高速回転すると、遠心力による保持器の変形・破損や軸受内部の発熱という課題があるが、同社では保持器の挙動が振動の原因となることに着目し、保持器の材料や形状の見直しにより保持器の挙動を安定させることで、高速回転性能と振動特性を向上させた工作機械向け高速サーボモーター用深溝玉軸受を新たに開発した。

 開発品の特長は、以下のとおり。

1.dmn値(軸受ピッチ円径(mm)×回転速度(min-1))190 万(同社従来品比40%向上)の高速回転性能:保持器の材料を見直すことで剛性を高め、遠心力による保持器の変形を低減したほか、保持器形状の最適化によりグリース封入量を増やすことで、潤滑性を向上。これらの改良により、高速領域における軸受昇温特性が向上し、大幅な高速回転性能の向上を実現

2.振動レベルを同社従来品に比べ約50%低減:保持器のポケットを保持器と転動体の接触をより安定させる形状とすることで、低振動化を実現

 NTNは工作機械向けサーボモーター用の本商品と、ロボット向けサーボモーターの小型化に貢献するサーボモーター用低発塵軸受をグローバルに提案し、各種産業機械の動力源として幅広く使用されるサーボモーターの小型化・高速化などの性能向上に寄与し、製造現場が抱えるさまざまな課題の解決に貢献していく。

 

構造

 

軸受昇温特性比較

 

振動試験結果

 

kat

2024国際航空宇宙展が開催

1週 1日 ago
2024国際航空宇宙展が開催kat 2024年10日21日(月) in in

 「2024国際航空宇宙展」(主催:日本航空宇宙工業会/東京ビッグサイト)が10月16日~19日、東京都江東区の東京ビッグサイトで開催された。

 同展は、国内外の主要企業、政府機関、大使館関係者、業界関係者が集結する、日本最大級の航空・宇宙の総合展示会。航空・宇宙・防衛の製造、運航、整備に加え、UAM・脱炭素などの新分野を加えた、幅広い業種の企業が出展、航空・宇宙関連の最先端の製品を披露した。

会場のようす


 ベアリング&モーション技術(bmt)関連では、以下のような展示がなされた。

 木村洋行は、同社が国内総代理店を務めるRegal RexnordやGGB(Timkenグループ)など各社の航空機向けベアリングなどを紹介した。動翼用ベアリングでは、Regal Rexnordのコンケーブ(鼓型)ローラー自動調心ベアリングを展示。ローラー形状による自動調心性によるミスアライメントの吸収のほか、低摩耗で高負荷に耐える。また、ランディングギヤ向けなどでの低コストで容易なメンテナンスを可能にするため、外輪と内輪を別々に製造し、ボールのみの交換が可能なRegal Rexnordのスロットエントリーベアリングも紹介した。固定翼・回転翼・宇宙用途の主要なベアリングを製造するRBC の製品では、-196~+325℃まで運用可能な自己潤滑ライナー付きスフェリカルベアリングなどを展示。Timken/GGB製品では、大手ホイール/ブレーキメーカーとの協力のもと国内外の多数の期待に採用されているランディングギヤ専用テーパーローラーベアリングを紹介した。

木村洋行 コンケーブローラー自動調心ベアリングなどRegal Rexnord製品群

 

 ジェイテクトは、ドローンなどエアモビリティの電源の瞬間停電補償や、出力サポートに貢献するソリューションとして、電池製造設備をはじめとするジェイテクトグループのコンピタンスを応用した高耐熱リチウムイオンキャパシタ「Libuddy®」を出展した。Libuddy®は、世界で初めて-40~85℃の動作温度範囲を実現するなど幅広い温度帯で使用でき、冷却ユニットの省略によるエアモビリティの小型化・軽量化に貢献することが期待されている。また、水素の活用と燃料製造のテーマでは、液体水素を扱う機械装置や燃料製造工程の耐久性向上に貢献するソリューションとして、耐水素脆化性材料技術を応用した水素環境向け軸受「EXSEV-H₂®」を出展した。さらに、軸受の熱処理後の組織の状態を取得した画像をもとにAIを用いて自動判定するシステムを紹介した。

ジェイテクト 高耐熱リチウムイオンキャパシタ「Libuddy」を搭載したドローン

 

 THKは、アルミ合金製のスライドレール「E15-NA」に、ギャレー用コンテナを取り出すための部品を装着した軽量・コンパクトなスライドユニット「E15 S-NA」を紹介した。手で取り出すのが困難な位置にあるギャレー用コンテナを、手動で取り出すことに特化、ハンドルを引くことで、コンテナを手元に滑らかに移動させることができる。特長は、①簡単な取り付け:本製品には、アルミ薄板のベースプレートが標準で装着されているため、このベースプレートを用いて、取り付ける相手の取り付け面にそのまま取り付けることが可能、②高信頼性:スライダ後方には信頼性の高いばねが設置されているため、引き出したハンドルから手を離すと、ばねの働きによってスライダとともにハンドルが自動的に元の位置に戻る。ハンドルが元の位置に戻る際には、スライダと締結された2本のワイヤによって、裏返ることなく、正確に収納される、③コンパクト・軽量:小さなすきまの箇所にも取り付け可能なほか、小型のスライドレールを採用することで、スライダの耐久性を維持しつつ軽量化を達成、など。

THK コンテナ取り出し用スライドユニット「E15 S-NA」

 

kat

THK、ISO規格準拠の世界標準寸法に対応する超低ウェービング ボールリテーナ入り直動案内の受注を開始

1週 6日 ago
THK、ISO規格準拠の世界標準寸法に対応する超低ウェービング ボールリテーナ入り直動案内の受注を開始kat 2024年10日16日(水) in in

 THKは、ISO規格準拠寸法の超低ウェービング ボールリテーナ入り直動案内(LMガイド)「SPH形」の受注を開始する。8条列構造と小径ボールを採用することで直動案内トップクラスの超低ウェービングを実現。これにより、測定精度の向上や位置決め精度の向上、加工面品位の向上に寄与し、ナノメートルオーダーの運動精度が求められる分野にも対応が可能となる。

超低ウェービング ボールリテーナ入りLM ガイド「SPH形」


 ウェービングとは、LMブロックがLMレール上を移動する際に、内部のボール(転動体)が転がることでブロックとボールの相対位置が変化し、真直度に影響を及ぼす現象。特に高精度の加工装置では、ウェービングを極力小さくすることが求められている。
従来の超低ウェービングLM ガイド「SPR/SPS形」は、同社独自寸法を採用したことにより、適用範囲が一部の装置の案内部など限定的だったが、SPH形はISO 規格に準拠した寸法(世界標準寸法)のため、既存製品からの置き換えが可能。

 また、4方向等荷重であらゆる姿勢での使用が可能なため、半導体・液晶装置関連のほか、工作機械などでも、これまで以上に高精度市場の用途で活用できる。

 SPH形の特長は、以下のとおり。

・超低ウェービング:8条列の転動溝と小径ボールの採用により、LMブロック内の有効ボール数を増やしたことで、直動案内の中でもトップレベルのナノメートル単位の超低ウェービングを実現

8条列の転動溝と小径ボールの採用

 

・ISO規格準拠寸法:8条列構造を採用しながらも、世界標準であるISO規格に準じた寸法を実現。サイズは♯25、♯30、♯35、♯45の4サイズ、ブロックタイプは全6類をラインナップ

・ボールリテーナ効果:THKが長年培ってきたコア技術であるボールリテーナを採用。ボールがボールリテーナにより保持され循環することでボール同士の相互摩擦がなく、グリースの保持力も向上するため、滑らかな動作、そして長寿命・長期メンテナンスフリーを実現

kat

川邑研究所、プラスチック向けPFASフリー潤滑塗料を開発

1週 6日 ago
川邑研究所、プラスチック向けPFASフリー潤滑塗料を開発kat 2024年10日16日(水) in

 川邑研究所(https://www.defric.com/)はこのほど、独自の研究開発により、プラスチック基材への優れた密着性を実現する有機フッ素化合物(PFAS)およびシリコン不使用の新世代固体潤滑塗料を開発した。この塗料は、独自の組成と分散技術により、従来のPTFEベース塗料を超える耐久性と低摩擦特性を有する。

 開発品の特長は、①低摩擦性、②耐摩耗性、③薄白色透明な被膜を形成、④常温乾燥可能、⑤さまざまな基材への優れた密着性、⑥同社従来品より高硬度、⑦PTFEを使用した従来品と同等の撥水撥油性、など。

 ABS基材に対して、同社既存品塗料と開発したPFASフリー(PTFEフリー)潤滑塗料をスプレー塗装し、70℃で強制乾燥させ、各種評価を実施した結果、プラスチック基材への密着性向上と摩擦係数の低減効果により、従来よりも硬度の高い被膜を形成することができることが確認されている。 

PFASフリー潤滑塗料とPTFE塗料の特性比較

 

 また、ボールオンプレート摺動試験による、PFASフリー潤滑塗料とPTFE塗料の性能比較では、0.5kgの荷重をかけたPVCボールを用いた往復摺動試験を実施した結果、PFASフリー潤滑塗料がPTFE系塗料と比較しても、優れた摺動寿命を有することが確認されている。

PFASフリー潤滑塗料とPTFE塗料の摺動性比較

 
 新開発のPFASフリー潤滑塗料はまた、さまざまなプラスチック部材に対する優れた密着性を実現する。この密着性の最適化により、使用する基材の種類を選ばず、幅広いアプリケーションでの利用が可能となっている。

各種プラスチック基材への密着性の比較

 
 新開発PFASフリー潤滑塗料ではさらに、従来のPTFE塗料の使用時に見られた外観が白く変化する問題を解決し、外観の透明性を保持することが可能となった。

外観の透明性の比較
kat

東京理科大学・佐々木研究室、第24回トライボサロンをハイブリッド開催

2週 3日 ago
東京理科大学・佐々木研究室、第24回トライボサロンをハイブリッド開催kat 2024年10日12日(土) in

 東京理科大学・佐々木研究室(主宰:佐々木信也 教授)が主催する「トライボサロン」(https://tribo-science.com/salon)の第24回目が10月12日、東京都葛飾区の葛飾キャンパスでのオンサイト参加とオンライン参加からなる、ハイブリッド形式によって開催された。

開催のようす


  トライボサロンは、トライボロジーに関係する情報・意見交換の場として、毎月1回のペースで開催されている。もともとは佐々木研究室の博士課程学生の勉強会として発足し研究成果の発表や最新の研究動向などに関する意見や情報交換を重ねてきたが、2022年9月からは佐々木研究室に限らず広く参加の戸を開き、関係者のネットワーク作りも目的の一つとして活動している。トライボロジーに関する情報交換、人材交流等を通し、関連技術の向上と発展に資することを目的に、次の活動を円滑に行えるよう運営に努めている。

 第24回目となる今回のトライボサロンでは、「トライボロジーにおけるAIの活用を考える」のタイトルで、イーグル工業・王 岩 氏を講師に話題提供が行われた。

 講演では、メカニカルシールの密封性能と潤滑性能の二律背反を両立するためのテクスチャの最適化を目的に機械学習を適用した事例として、形状パラメータから性能を予測する機械学習モデルの構築・最適化の検証を実施して数値解析を機械学習モデルに置き換えることで、最適解に迫る形状を短時間で予測できた事例を紹介した。また、形状データそのものから圧力分布を予測する機械学習モデル構築の事例では、適切な事前処理+相性の良いモデル(U-Net)の選択によって表面テクスチャ形状から圧力分布の予測が可能であることを示唆した。今後は、トポロジーの最適化と生成AIを組み合わせて、メカニカルシールに最適な新しい表面テクスチャ形状を探索していく、と総括した。

 なお、トライボサロンに関心のある方は、以下のURLを参照されたい。
 https://tribo-science.com/salon

kat

JIMTOF2024の開催規模、過去最大の1262社/5743小間に

3週 1日 ago
JIMTOF2024の開催規模、過去最大の1262社/5743小間に in kat 2024年10日07日(月) in

 11月5日~10日の6日間にわたり東京ビッグサイトで開催される世界最大級の工作機械見本市「JIMTOF2024(第32回日本国際工作機械見本市)」に関して、主催の日本工作機械工業会(日工会)と東京ビッグサイトは10月2日、東京都港区の芝パークホテルで「第2回 記者発表会」を開催した。

 JIMTOF2024は、東京ビッグサイト全館を利用して総展示場面積11万8540㎡で開催、合計出展者数が1262社/5743小間と、2022年に開催した前回のJIMTOF2022に比べ175社/125小間増えた、60年以上の歴史で最大規模の開催となる。そのうち、前回新設した「Additive Manufacturing Area(AMエリア)」での出展規模も拡大し53社/192小間となる。中国、台湾、ドイツ、スイス、韓国、米国など19カ国・地域の企業・団体が出展する、国内最大規模のB to B展示会に位置付けられる。

 当日主催者挨拶に立った日工会の柚原一夫 専務理事は、「JIMTOF2024では『技術のタスキで未来へつなぐ』というテーマのもと、最新鋭の工作機械、最先端の技術を発信していく。日工会からは40社以上の会員企業が世界初披露となる製品技術を紹介する。デジタル技術の活用による機械の状態監視や予防保全の高度化、ロボットなど周辺機器との融合による工程集約や自動化・省人化がさらに進化し、多数の機械をつないだ生産システム全体の効率化・最適化に向けたソリューションが展示される。JIMTOF2024は、まさに時代のニーズを的確にとらえた技術を発信できる場となるだろう」と語った。

挨拶する柚原氏

 

 主催者挨拶としてはまた、東京ビッグサイトの岩瀬和春 代表取締役 常務取締役が、「総来場者数13万人、海外からの来場者数1万3000人を目標に、日本のものづくりを応援するYouTubeチャンネル「JIMTOF INSIGHTS(ジムトフ・インサイツ)の公開や各種SNSを活用した情報発信の強化と最新技術に触れる機会の創出や、ものづくり業界発展の一助となるような、さまざまな取り組みを進めている。今回は、全館での開催となるが、来場者が展示製品技術をくまなく均一に見ることができるように、西・南展示棟の開場時間を9時~17時、東展示棟の開場時間を10時~18時とする時差開場とする。また、目的のホールへ効率よく移動できるよう、シャトルバスとジャンボタクシーを柔軟に運行する。内外の工作機械および周辺機器の取引の拡大、貿易振興に、できる限り寄与していきたい」と述べた。

挨拶する岩瀬氏

 

 今回の記者発表会でクローズアップされた目玉企画は以下のとおり。

アカデミックエリア

 工作機械業界および「ものづくり」に関しての理解を深めることを目的に、過去のJIMTOFにおいて会場内に分散していた主催者企画に加えて、学生を対象に、南4ホールに集約した「アカデミックエリア」を新設した。特に学生が出展企業の総務・人事担当者と直接交流できる「キャリアマッチングスクエア」や、工作機械業界に関心を持つ学生を対象に、テーマに沿って関連する日工会会員企業の出展ブースをツアー形式で案内する「日工会学生ブースツアー」、工作機械業界への知見を深められる体験型コンテンツをはじめとした「企画展示」、工業系の大学をはじめ53機関の研究発表が一堂に集まる「IMEC(国際工作機械技術者会議)ポスターセッション」が設けられる。さらに、多目的ステージに併催された「オープンカフェ」は、ドリンクサービスと無料Wi-Fiを完備し、リラックス空間として活用できる。

キャリアマッチングスクエア

 

体感コンテンツ「工作機械×動かす」
汎用旋盤による加工体験 CAMプログラミング体験
(協力:都立職業能力開発センター)

 

講演会・セミナー

 開催初日の11月5日には、基調講演として「ものづくりに夢を!THKが挑戦する新発想EV」と題し、THK 代表取締役会長CEOの寺町彰博氏と、SN DESIGN PLATFORM 代表取締役CEOの中村史郎 氏が講演。THKが世界で初めて開発した工作機械の重要な構成要素である直動転がり案内(LMガイド)や、ボールねじの技術を応用した電動アクチュエータを搭載した、EV プロトタイプ「LSR-05」の開発の道のりや今後の展望について語る。

THKとSN DESIGN PLATFORMが共同開発した
EVプロトタイプ クロスオーバー4シータークーペ「LSR-05」
(提供:THK)

 

 また特別講演では、トヨタ自動車 Executive Fellowの河合 満氏による「モノづくりは 人づくり」、前田建設工業 ICI総合センター 執行役員ICI総合センター長の岩坂照之氏らによる「前田建設ファンタジー営業部における異業種共創の具体例~JSOLと共にオープンイノベーションのマネジメントを考える~」、宇宙航空研究開発機構(JAXA)有人宇宙技術センター 技術領域主幹の大塚聡子氏による「宇宙ロボットのものづくり」などの講演がなされる。

©永井豪/ダイナミック企画/MZ制作委員会
アニメ、ゲームといった空想世界に存在する建造物を本当に受注し現状の技術・材料で建設するとしたらどうなるかを、工期、工費を含め公開するコンテンツ
「前田建設ファンタジー営業部」

 

 また、JIMTOF2024特別併催展として、南展示棟1階で開催する「Additive Manufacturing Area in JIMTOF2024」内の主催者セミナー会場でも、日替わりでAM/3Dプリンティングに関するさまざまなセミナーが日替わりで実施される。

JIMTOF INSIGHTS

 JIMTOFでは、「製造業界の魅力・やりがい・面白さ」を伝え「製造業のイメージアップと将来を担う若年層などへの認知度向上を図るために、日本のものづくりを応援するYouTubeチャンネル「JIMTOF INSIGHTS(ジムトフ・インサイツ)」を本年6月に初公開した。JIMTOF2024期間に限らず、会期前、会期中そして、会期後にも長期的・継続的に情報を更新し、ものづくり業界に関する情報を積極的に発信していく。既に公開している動画「芝浦機械 工場見学編」に加えて、10月中旬にはJIMTOF2024企画展示と連動する形で、新たな動画コンテンツを公開する予定となっている。

JIMTOF INSIGHTS

 

シャトルバス・ジャンボタクシー

 広い会場内で目的のホールへ効率よく移動できるよう、シャトルバスとジャンボタクシーをフレキシブルに運行する。今回のJIMTOFで実施する時差開催に対応して、国際展示場駅からの直通ルート、会場内巡回ルートを時間によって設定し、回遊性の向上を図る。
 

 情報は随時更新されるため、詳細はJIMTOF2024公式ウェブサイト(https://www.jimtof.org/)で確認していただきたい。

kat

NTN、和歌山製作所にオンサイトPPAモデルを導入

3週 1日 ago
NTN、和歌山製作所にオンサイトPPAモデルを導入kat 2024年10日07日(月) in

 NTNは、事業活動におけるカーボンニュートラル達成のための施策として、和歌山製作所(和歌山県橋本市)にオンサイトPPA(自社敷地内に第三者であるPPA 事業者が太陽光発電設備を導入し、PPA事業者に電気料金を支払うことで電力を調達する仕組み)モデルを導入した。本年10月から、発電および自己消費を開始する。

 今回オンサイトPPA モデルを導入した和歌山製作所は、電気自動車(EV)などに使用されるボールベアリングを生産する工場で、2023年10月に本格稼働を開始した。最新の設備やシステム、デジタル技術を活用し、スマートファクトリーの実践工場として無駄のないものづくりに取り組んでいる。

 同製作所においては、すでに工場設備から事務所まですべての使用電力をCO2フリー電力で賄うことで、通常の電力を使用する場合と比べて毎月のCO2排出量を約85%削減している。今回導入したオンサイトPPAモデルによる発電量は1357MWh/年、589t/年のCO2排出量削減を見込んでいる。

和歌山製作所(和歌山県・橋本市)

 

和歌山製作所に設置した太陽光パネル

 

kat

NTNセールスジャパン、ツール・ド・九州2024に初協賛、各レース会場で「回る学校」を開催

3週 1日 ago
NTNセールスジャパン、ツール・ド・九州2024に初協賛、各レース会場で「回る学校」を開催kat 2024年10日07日(月) in

 NTNの販売子会社であるNTNセールスジャパンは、10月11日~14日に大分、福岡、熊本の3県で開催される国際自転車ロードレース「ツール・ド・九州2024」(https://www.tourdekyushu.asia/)に初めて協賛し、親子でベアリング(軸受)について学ぶことができる「NTN 回る学校」を各レース会場で開催する。

 ツール・ド・九州2024は、UCI(Union Cycliste Internationale、国際自転車競技連合)公認の国際自転車ロードレースで、近年九州を襲った自然災害からの復興を象徴するイベントとして昨年初めて開催され、約88000人が観戦した。2回目の開催となる今回は、10月11日~14日の4日間にわたり、国内外の18チームが転戦型ステージレースおよびクリテリウム(小周回サーキットレース)でタイムを競う。

 NTNは、自動車や各種産業機械向けのベアリングに加え、電動アシスト自転車の駆動ユニット、ホイール、ボトムブラケット用など自転車向けにもベアリングなどの商品を開発・提供している。ロードバイクに使用される高級ハブにも同社のベアリングが採用されており、自転車のなめらかな走行に貢献するとともに、環境に優しい移動手段である自転車市場の発展を通じて、環境負荷の低減にも貢献している。また、自転車向けのベアリング技術を生かし、世界大会で入賞の実績もある車いす陸上競技選手へ競技用車いす向けにベアリングも提供している。

 今回、各レース会場で開催する「NTN 回る学校」では、普段は目に触れることがないベアリングの組み立て体験を通じてベアリングの役割や仕組みについて楽しみながら理解を深めてもらうほか、ロードバイクなどの自転車に使用される深溝玉軸受について、シールの違いやグリースの有無などによる回転時のなめらかさの違いを体感してもらう展示を行う予定となっている。

ベアリングの組み立て体験:外輪、内輪、保持器、ボールを組み合わせてベアリングの組み立てに挑戦。初めてベアリングを見る人も、ベアリングの構造や仕組みについて学べる

 

kat

木村洋行、アプリケーション志向の電動アクチュエータを用いたロボット・医療機器における自動化・電動化支援を推進

3週 2日 ago
木村洋行、アプリケーション志向の電動アクチュエータを用いたロボット・医療機器における自動化・電動化支援を推進 in kat 2024年10日06日(日) in

 木村洋行は2020年1月から、スウェーデンに本社を置くEWELLIX(エバリックス)の直動製品の取り扱いを開始している。エバリックスは、スイス、スウェーデン、ドイツ、フランス、アメリカ、中国に生産拠点を有し、アプリケーションごとのニーズに合わせたカスタマイズのソリューションに定評があり、自動機など一般産業機器向けのほか、高度な安全性が求められる医療機器向けなどで採用実績が多い。2023年1月からはSchaeffler(シェフラー)の傘下として、かねてから進めてきたセンサやコントローラー関連の研究開発を加速させている。

 ここでは、木村洋行がエバリックスの直動製品の独自性を生かして、協働ロボットによる自動化の支援や、医療機器などでの電動化支援を含む、産業界での自動化・電動化支援の取り組みについて紹介する。

 

直動製品のラインナップと独自技術 ロボットなどの動作範囲を拡張できる電動アクチュエータ

 エバリックスの直動製品としては特に、設置面積を小さく抑えられコンパクトな昇降が可能なピラー型電動アクチュエータ(図1)に定評がある。ストローク量や荷重、速度、偏荷重など、アプリケーションごとの使用条件に合わせた提案が可能で、低騒音・堅牢で高荷重の支持に対応できるため、厳しい使用条件のニーズにも対応できる。電圧はAC 120VとDC 24Vに対応、最大定格荷重(押し/引き)はシリーズによって最大6000N、ストロークは700mm以上、動作速度も無負荷時で最速42mm/sec、かつ最大負荷時で最速31mm/secを実現している。
 
 

図1 ピラー型アクチュエータ電動アクチュエータを活用した自動化・電動化支援 協働ロボットの作業範囲の拡張

 生産現場で適用の進む6軸協働ロボットのアクセサリとして、ピラー型アクチュエータを6軸協働ロボット用にカスタマイズし、協働ロボットの第7軸として、垂直方向に動作させることで作業動作範囲を拡大できる「LIFTKIT」を提案している。LIFTKITの垂直方向の最大ストローク長は500~1400mmで、ロボットの基台としてLIFTKITを使用することにより設置面積を抑えつつロボットの昇降移動を実現でき、ロボットのアームリーチの有効範囲を立体的に拡大できると言える。

 また、LIFTKITと同様に、単軸横置アクチュエータに協働ロボットを接続し、搬送やピック&プレイスなどロボットの水平方向の動作範囲を拡大でき、作業効率を飛躍的に向上できる「SLIDEKIT」も提案している。SLIDEKITの水平方向のスライド長は100~3000mmとなっている。長い同一の生産ライン上にある、複数のセル生産装置の間でのワークの受け渡しや複数の加工工具の段取り替えといった作業の効率を高めることで、加工の生産性を向上できる。ニーズに応じてSLIDEKIT上にLIFTKITを載せて併用することも可能で、その場合協働ロボットの垂直方向と水平方向の動作範囲を大幅かつ同時に拡大できる(図2は、「2023国際ロボット展」でのデモンストレーションのようす)。
 

図2 「2023国際ロボット展」での、
6軸協働ロボットとLIFTKIT・SLIDEKIT組み合わせでのパレタイジング作業のデモ
 

 

 LIFTKITは、ユーザーが現状使用している6軸協働ロボットの7軸目として垂直方向の作業範囲を拡大できることが最大の利点で、パレットへの荷物の積み上げ作業「パレタイジング」と、積み上げたパレットから荷物を下ろす作業「デパレタイジング」での採用事例が多い。「2023国際ロボット展」での木村洋行の出展を機にLIFTKITへの引き合いが増えてきているが、この背景には「物流の2024年問題」がある。

 本年4月からトラックドライバーの時間外労働の960時間上限規制と改正改善基準告示が適用され、労働時間が短くなることで輸送能力が不足することが懸念されている2024年問題によって、運送トラックへの荷物の積載段数を増やして積載スペースの効率化を図ることや、物流倉庫でのドライバーの待ち時間を短縮するために荷物の積み下ろしの効率化を図ることや倉庫スペースの有効利用を図ること、工場での入荷・出荷場所での荷物の積み下ろしの効率化を図ることなどが求められていることがある。6軸協働ロボットにLIFTKITを接続することで、工場、物流倉庫、運送トラックのいずれにおいても、荷物を高く積み上げることが可能になり、スペース効率の向上だけでなく、工場・物流倉庫では荷物の出荷・入荷の効率を向上でき、トラックドライバーの労働時間減少に伴う物流量滞留の改善に寄与できる。

 LIFTKIT(とSLIDEKIT)は当初、ユニバーサルロボット(UR)とのコラボによる6軸協働ロボットのアクセサリとしてカスタマイズされたが、その後多くの企業の協働ロボットへの適用が可能となっており、それぞれの協働ロボットのティーチングタブレットによって、協働ロボットとLIFTKIT(とSLIDEKIT)の動作制御がともに可能となっている。

 2023年には、LIFTKIT はファナックの協働ロボット「FANUC Robot CRXシリーズ」のプラグイン対応周辺機器(昇降装置)として採用(図3)になり、ロボットの昇降範囲を最大で1400mmまで拡大できることや、生産性の向上と労働コスト削減に貢献できること、高い位置精度と安定性を実現できることなどが評価されている。コンパクトサイズで設置スペースを増やさずに6軸協働ロボットの7軸目として機能し、作業範囲を拡張できることから、6軸協働ロボット向けにLIFTKITの採用が進んできている。
 
 

図3 ファナックの協働ロボット「FANUC Robot CRXシリーズ」
の昇降装置として採用された「LIFTKIT-FA」  機器の移動・パワーアシストによる医療従事者の負担軽減

 エバリックスの直動製品は医療機器向け規格IEC 60601-1を取得していることなどから医療機器で多くの採用実績を持つが、エバリックスでは医療従事者の負担軽減や診断のスムーズ化を目的に、図1のピラー型電動アクチュエータをベースに、サーボモータと力覚センサを内蔵し、胸部Ⅹ線写真を撮像するためのレントゲンの位置合わせなどにおいて軽々と医療機器の上下動(位置合わせ)が可能なシステム「Effortless Motion Control」(図4)を開発している。欧州ではすでにEffortless Motion Controlを用いた医療機器メーカーとの共同開発を進めているが、日本国内では本年6月に開催された「機械要素技術展 [東京]2024」で初披露し、軽く医療機器を動かせることをアピールした(図5)。医療従事者の負担軽減を図りたい国内の医療機器メーカーから、多くの反響を得ている。

図4 Effortless Motion Control

 

図5 「機械要素技術展 [東京]2024」での木村洋行・木村光正社長による、
小指一本でレントゲン撮影台の位置合わせを軽くスムーズに行うデモ

 

 レントゲンなどX線診断機器の課題としては、比較的重いX線管ヘッドまたは検出器システムの位置決めのための医療従事者の大きな負担がある。胸部レントゲン診断では、胸部の適切な場所に装置を位置決めする必要があるが、これら機器が頭上または壁/床のフレームに取り付けられることが多く、通常最大50kgという各ヘッドまたは検出器システムの重量が起因して、患者の胸部の適切な領域をターゲットするための簡単で正確な移動・位置決めが難しい。

 これに対しエバリックスが開発したEffortless Motion Controlは、ピラー型電動アクチュエータにサーボモータ・力覚センサを組み合わせることで、画像診断機器のハンドル部分に内蔵された力覚センサで触れた際に検知した力の大きさに応じて、最適なアシスト力が加わる。そのため、重量のある装置であっても誰でも簡単に、1/10の労力でスムーズに静かに、思いどおりに動かせる。さらに、伝送速度が速く拡張性の高いコントローラー・エリア・ネットワーク(CAN)バス通信規格に対応しているため、レントゲン撮影台で位置決めできた高さ・座標軸に別の立位撮影台や診察台を協調制御して位置決めするといった、複数の医療機器の同期運転(図4参照)も可能にしている。

  農機・建機の電動化支援

 一方、農業機械や建設機械など比較的高推力が必要とされる作業機では油圧作動油を動力源とする油圧アクチュエータが多用されているが、地球環境問題や作業のスマート化などから電動化が求められ、農機・建機向けにも電動アクチュエータを提案している。

 CANバス通信規格に対応の、野外で使用できる保護等級IP69K/66Mに対応した防水・防塵仕様のスマート電動アクチュエータ「CAHB-2xS(2xSのラインナップ:20S、21S、22S)」(図6)を開発している。油圧アクチュエータから、高速でスムーズな動作が可能な電動アクチュエータに置き替えることで、素早く滑らかな動作を実現でき潤滑メンテナンスを排除できるため一層の高い生産性を実現できるとともに、環境負荷低減を図れる。
 

図6 CAHB-2xSの建設機械での適用例

 

今後の展開

 ものづくり現場での自動化・電動化が進展し効率向上からメンテナンス期間延長などが求められる中で、耐久性が高く装置の省スペース設計が可能なエバリックスの電動アクチュエータの採用が進んできており、高い負荷容量、長寿命化を実現しつつ、サイズダウン化でき軽量化が図れることからは、装置の消費電力の低減、ひいてはCO2削減にも寄与できる。

 木村洋行は技術商社として、エバリックスに限らずメーカーとの情報交換を密に行い、製品・技術・アプリケーション情報のアップデートを常に図っている。製品・技術・アプリケーションに関する知見とノウハウを蓄積しつつ、ユーザーとの対話の中でニーズを的確にとらえることで、さまざまな用途に合わせてカスタマイズが可能なエバリックス製直動案内製品の特質を生かした、ユーザーの仕様に最適なソリューションを提供していく。また、従来から実施している、機械を正常に稼働させるための総合的な技術的サポートについても引き続き注力していく。

kat
Checked
6 分 19 秒 ago
bmt配信ニュース フィード を購読