メインコンテンツに移動

Aggregator

ジェイテクト、軸受一体歯車を新開発

2ヶ月 3週 ago
ジェイテクト、軸受一体歯車を新開発kat 2025年05日07日(水) in in

 ジェイテクトは、モビリティのさらなる小型化・軽量化・高効率化へのソリューションとして、自動車部品・軸受・工作機械事業で培ったコアコンピタンスを生かし、軸受一体歯車「JIGB®(JTEKT Integrated Gear Bearing®)」を開発した。JIGB®は、自動車・産業機械等において、従来、機能要件が異なることから別々の部品として組み込まれていたギヤとベアリング(軌道輪)を一体化した製品。

軸受一体歯車「JIGB」

 

 ジェイテクトは、JTEKT Group 2030 Vision を掲げ、「モノづくりとモノづくり設備でモビリティ社会の未来を創るソリューションプロバイダー」になることを目指しており、ジェイテクトグループは、製品と製造設備に関する要素技術や知見であるコンピタンスを一堂に集約したコアコンピタンスプラットフォーム(ココプラ)の活用を進めている。社内のコンピタンスの掛け合わせのみならず、社外の技術や知見をつなぐことにより、社内や社会の困りごとの解決策を提案するソリューション共創センターを本年1月に開設。ソリューション型ビジネスを通じて、顧客や世の中に貢献していくことを企図している。

 自動車をはじめとしたモビリティ産業は、多種多様な視点で機能価値の向上が求められており、今回開発したJIGB®は、自動車や産業機械、建設機械などに搭載されている減速機を構成するギヤとベアリングを一体化することで、ユニットの小型化、ギヤの強度向上、ベアリングのトルク損失低減を実現する最適構造とした。これは従来、ギヤの歯に必要な靭性とベアリング(軌道輪)に必要な耐久性の両立が困難であった点に対して、ギヤとベアリング製品で長年培ってきたコアコンピタンスを生かし、実現した同社だからこそご提案ができる技術。

 JIGB®の概要は以下のとおり。

・歯車の外径に使用するベアリングの一体化:シャフトにベアリングを圧入している現行品のギヤシャフトは、シャフト径の制約により、ベアリングや減速機のサイズダウンが難しく、トルク損失の低減に課題があった。これに対し開発品では、ギヤシャフトの外径に軸受軌道を追加しベアリングと一体化。これによりベアリングの内輪(軌道輪)が省略されることで、ベアリング外径とユニット(軸間距離)のサイズダウン、トルク損失の低減を実現。また、ベアリングの圧入工程の省略により、顧客の生産性も向上する

歯車の外径に使用するベアリングの一体化


・歯車の内径に使用するベアリングの一体化:ギヤの内部にベアリングを組み付ける場合、組み付け時のガタにより、ギヤ全体の強度が低下する可能性がある。これに対し開発品では、ギヤ内径をベアリングの外輪とすることにより、ギヤの傾きを低減し、ギヤサイズ及び、搭載されるユニットのサイズダウンを実現。またギヤ内径へのベアリング圧入工程の省略による部品点数の削減も見込める

歯車の内径に使用するベアリングの一体化

 

 ジェイテクトは引き続き、モビリティ社会の未来を創るソリューションプロバイダーとして、自動車・産業機械をはじめとしたモビリティの性能向上に貢献する製品を開発し、今回開発したJIGB®のようなソリューションを順次提案していく。

kat

THK、クロスローラーリングに総ローラータイプを追加

2ヶ月 3週 ago
THK、クロスローラーリングに総ローラータイプを追加kat 2025年05日07日(水) in in

 THKは、クロスローラーリングに、高剛性かつ特殊環境にも対応可能な総ローラータイプを追加する。

総ローラークロスローラーリング

 

 クロスローラーリングはあらゆる方向の荷重を負荷できる、回転精度が高いローラーベアリング。1個の軸受でラジアル荷重、アキシアル荷重およびモーメント荷重などのあらゆる方向の荷重を負荷できる。

 これまでのクロスローラーリングは、90°のV溝形状の転動面に円筒ころがスペーサリテーナを介して交互に直交配列されている構造だったが、今回新たに総ローラータイプとして、RUV形、RBV形、REV形、RAV形、RAUV形、RBUV形の6製品、計172形番を追加する。スペーサリテーナがないことで使用ローラー数が増えるため、高剛性かつ高負荷能力を有する一方で、既存のリテーナタイプと同一寸法のため容易に置換えが可能。

 また主要部品は金属材料で構成されているため、真空環境やアウトガスを出すことができない環境など幅広い特殊環境下での使用が可能で、半導体製造装置やロボット事業を中心とした特殊環境要求が高い分野などで活用できる。

 総ローラークロスローラーリングの特長は以下のとおり。

・既存形番から置換えが可能:スペーサリテーナタイプ(標準品)と同寸法を採用しているため、ハウジングなどの取付インターフェースを変更せずに置換えが可能

・高い負荷能力:使用ローラー数が増えることにより、標準品よりも高剛性かつ高負荷能力を有する

・真空環境下での使用が可能:主要部品は金属材料で構成されるため、真空環境をはじめアウトガスの排出を嫌う環境など、幅広い特殊環境下での使用に適している

 THKは今後も、一般産業機械から精密機械、そして高精度な工作機械まで、幅広い装置の高速化、高精度化、高剛性化に貢献していく。

kat

THK、軸端末完成品・精密ボールねじの製品ラインナップを拡充

2ヶ月 3週 ago
THK、軸端末完成品・精密ボールねじの製品ラインナップを拡充kat 2025年05日07日(水) in in

 THKは、軸端末完成品・精密ボールねじ「SDA-VZ形」について、新たに79形番(ねじ軸径φ15およびφ20)を追加し、計230形番にラインナップを拡充する。

軸端末完成品・精密ボールねじ「SDA-VZ形」

 

 軸端末完成品・精密ボールねじSDA-VZ形は、ねじ軸の端末形状をサポートユニットに合わせて標準化した精密ボールねじ。軸端は加工済みのため短納期対応が可能で、高速性に加え、コンパクト形状を兼ね備えており、装置の高性能化と省スペース設計を実現する。

 これまで151形番(ねじ軸径φ10~φ25)をラインナップしていたが、新たに79形番(ねじ軸径φ15、φ20)を追加し、計230形番にラインナップを拡充する。φ15、φ20はこれまでコンパクトタイプのみのラインナップだったが、今回DIN規格に対応した標準設計の形番を追加することで、より多くのユーザーのニーズに応えていく。

 軸端末完成品・精密ボールねじSDA-VZ形の特長は以下のとおり。

・安定したトルクで高速使用が可能:ボールを接線方向にすくい上げる方式を採用することで、最高回転数5000min-1(DN値:10万)を実現し、長期間での高速駆動でも安定したトルクを得ることが可能

・コンパクト形状で省スペース設計に最適:従来の精密ボールねじと比較して、外径比が最大30%小さくなるため、装置のコンパクト化に貢献

 

 THKは今後も、一般産業機械から精密機械、そして高精度な工作機械まで、幅広い装置の高性能化に貢献していく。

kat

工業用部品と表面洗浄の専門展が10月7日~9日にドイツ・シュトゥットガルトで開催、日本からの出展を募集

2ヶ月 3週 ago
工業用部品と表面洗浄の専門展が10月7日~9日にドイツ・シュトゥットガルトで開催、日本からの出展を募集kat 2025年05日07日(水) in

 ドイツメッセは本年10月7日~9日、ドイツ・シュトゥットガルトのシュトゥットガルト国際見本市会場で、工業用部品と表面洗浄に焦点を当てた欧州で唯一の専門展示会「parts2clean(パーツ トゥー クリーン)、https://www.parts2clean.de/en/」を開催する。

 

 日本国内からの出展や来場に関する問い合わせ先は、以下のとおり。

ドイツメッセ日本代表
合同会社International Linkage

竹生 学史(たけお まさひと)氏
E-Mail:masahito.takeo@intl-linkage.co.jp
URL:https://intl-linkage.co.jp/dm/parts2clean2023/

 Parts2Cleanは、ドイツの自動車産業の中心地であるシュトゥットガルトで開催される、世界中で比類のない最新の洗浄プロセスのための専門展示会で、洗浄に関する具体的な課題解決を探している来場者と直接出会える場。工業用部品と表面洗浄に焦点を当てた欧州で唯一の専門展示会parts2cleanでは多くのフォーラムや優れた技術やソリューションに贈られるFiT2clean Awardsなども実施される。

 2023年の実績は以下のとおりで、まさに、業界プロフェッショナルが集う専門展示会と言える。

・出展社:150社 (14カ国・23%が海外出展)
・出展面積:4,500㎡ 来場者数:3,000名(20%が海外から来場)
・プレゼン数:58件
・来場者の内訳
 業界のプロフェッショナル:99%
 購入決定権者:59%
 投資の意志のある来場者:80%
 企業のトップマネジメント層:50%
 海外からの来場:20%

・出展対象
 クリーンルーム技術・ブラスト工程での洗浄・サーマルプロセスでの洗浄・腐食防止と保存・バリ取り・乾燥プロセス

・ハンドリングと自動化・機械的洗浄プロセス・素材・薬剤・化学品・処理と廃棄・研究開発

・特別な洗浄プロセス・洗浄システム用のシステムとコンポーネント・中古機械設備・ウェットクリーニングプロセス

 ドイツメッセ日本代表 International Linkageでは現在、日本国内からの出展を募集している。出展料(最小小間面積:9m2)はスタンダードパッケージが3107.4ユーロ~で、内訳は、スペース(装飾なし)・出展者パス・出展者検索サイトへの掲載、招待チケットなどマーケティングサービスつき。装飾や備品のレンタルなどについては、別途問い合せをいただきたい。

kat

ハノーバーメッセの派生展示会が12月1日~3日にサウジアラビアで初開催

2ヶ月 3週 ago
ハノーバーメッセの派生展示会が12月1日~3日にサウジアラビアで初開催kat 2025年05日07日(水) in

 世界有数の製造技術の展示会「ハノーバーメッセ」の派生展示会である「Industrial Transformation Saudi Arabia 2025(ITSA2025)、https://saudiindustrialtransformation.com/」が本年12月1日~3日にサウジアラビアに初開催される。主催はリヤド・エキシビションズ・カンパニーおよびハノーバーメッセ主催者のドイツメッセで、後援はサウジアラビア産業・鉱物資源省。併催行事としては「INNOVATION SUMMIT SAUDI ARABIA」が行われる。

 

 日本国内の問い合わせ窓口は、以下のとおり。

合同会社International Linkage ドイツメッセ日本代表:竹生学史(たけお・まさひと)氏
東京都世田谷区玉川3-20ー2 マノア玉川第3 ビル501
TEL:080-1396-9902、または03-6403-5817
E-mail : masahito.takeo@intl-linkage.co.jp
URL:https://intl-linkage.co.jp/dm/industrialtransformation/

 「Industrial Transformation Saudi Arabia 2025」では、インダスリー4.0、DX、自動化、スマート製造、持続可能なエネルギーなどに関する最新のイノベーションが展示。人工知能(AI)、IoT、3Dプリントなどの主要テーマに焦点を当てた先進的な製造技術を探索する戦略的プラットフォームとして機能し、生産効率と品質の向上を支援する「スマートファクトリー」をサウジアラビアにおいて促進する。

Vision 2030との連携

「Industrial Transformation Saudi Arabia 2025」は、サウジアラビアが掲げるIndustrial Transformation(産業の変革)のためのイニシアティブである「Vision 2030」のもとで開催される。この目標を達成するため、サウジアラビアは「国家産業戦略」などの戦略を採用し、2035年までに工場の数を36000以上に増加させることを目指しており、特に、生産性向上と運営コスト削減に資する先端技術への投資に重点を置いている。

産業の現地化

 サウジアラビアは先進産業の現地化を推進し、電気自動車(EV)、半導体、精密工学の製造における地域拠点となることを目指している。これには、グローバル企業を誘致し、戦略的パートナーシップを築くことで、現地の能力強化と技術移転を促進する取り組みが含まれている。

 サウジアラビアはまた、輸入依存度の削減と地元コンテンツの割合増加を通じた産業サプライチェーンの強化を優先し、物流インフラの整備により新たな市場を開拓し、サウジアラビアの非石油輸出を促進している。

 さらに、サウジアラビアは再生可能エネルギーに依存する工場の拡大、カーボンフットプリントを削減する先進製造技術の採用、リサイクルプロジェクトの支援を通じて、環境配慮型産業の強化を進めている。

ハノーバーメッセとの協力

 サウジアラビアは、ハノーバーメッセとの協力を通じて、主要な経済大国と産業リーダーとの連携を強化している。13万人以上の来場者と4000社以上の出展者を集めるハノーバーメッセは、1947年以来、Industrial Transformation(産業の変革)の主要な原動力として機能してきた。今年12月にも同様の成功を収めサウジアラビアにおける有望なビジネス機会を探索する企業のためのゲートウェイとなることが期待されている。

 Industrial Transformation は、オーストラリア(7月)、シンガポール(10月)、メキシコ(11月)などでも開催されている。

kat

TTRFと大豊工業、自動車のトライボロジーで第8回 国際シンポジウムを開催

3ヶ月 ago
TTRFと大豊工業、自動車のトライボロジーで第8回 国際シンポジウムを開催kat 2025年05日01日(木) in

 トライボロジー研究財団(TTRF)と大豊工業は4月16日、名古屋市中村区のウインクあいちで「8th TTRF-TAIHO International Symposium on Automotive Tribology 2025」を開催した。

開催のようす

 

 「トライボロジーの自動車社会への貢献」を全体テーマに掲げる同シンポジウムは、トライボロジー研究の進展と自動車技術への応用等に関しトップレベルの情報を交換するとともに、この分野での産学連携の現状と将来の可能性を示しその強化を図ることを目的に、2016年から開催されている。8回目となる今回は 、「"Lubricants" for Adapting to Diversified Powertrains(多様化するパワートレーンに対応する潤滑剤)」のテーマのもとで、基調講演のほか、「固体潤滑剤およびグリース」と「潤滑剤」の二つの技術セッションが行われた。

 開会の挨拶に立った新美俊生 実行委員長(大豊工業 代表取締役社長)は、「本シンポジウムは、学界と産業界のコラボレーションの強化によって一層のトライボロジー研究の活性化を支援していく目的で、自動車のパワートレーンに貢献するトライボロジー技術に焦点を当てて、2016年から開催している。自動車のパワートレーンにおいては、高効率化によるカーボンニュートラル実現や性能向上などが求められているが、産学連携の強化によるトライボロジー技術の一層の高度化は、フリクション低減によるパワートレーンの効率向上に寄与できる。近年のモビリティの多様化から、新しいトライボロジー課題が生まれてきている。こうした中で潤滑技術の向上が期待されており、幅広いトライボロジー研究開発が進んでいる。今回は「多様化するパワートレーンに対応する潤滑剤」と題して、2件の基調講演のほか、潤滑剤の最新研究に関する6件の技術セッションがなされる。是非ともトライボロジー研究開発の促進につながるような活発なディスカッションを行っていただきたい」と述べた。

挨拶する新美実行委員長基調講演

 続いて、日本トライボロジー学会副会長の村上元一氏をチェアマンに、以下のとおり基調講演が行われた。

・「The "EV(Electric Vehicle)Shift" was an Unrealistic Policy After All」藤村 俊夫氏(愛知工業大学)…自動車業界では、2016年頃からCO2削減策として「EVシフト」が叫ばれてきた。しかし、電源容量・排出係数、コスト、航続距離といった課題を分析せずに、走行中の排出ガスゼロという理由だけでEVを推進するのは危険であり、EVが近い将来にCO2削減の救世主となる可能性は低いことに、多くの自動車メーカーがようやく気づき始めている。中国をはじめとする各国の補助金廃止に伴うEV販売低迷により、EVシフトは頭打ちになったとの見方もあるが、むしろEVは「抜け出せない死の谷」に入っていると認識すべき。技術的な観点だけでなく、世界的な販売動向からも、実質的なCO2削減効果や顧客ニーズへの対応といった点において、HEVとPHEVが総合的に優れている。さらに、CO2削減は保有車両(新車・既存車)に適用され、保有車両のCO2削減目標は2019年比で2030年までに48%削減となっており、CO2削減への現実的な道筋は、HEV/PHEVの普及と、既存車両への低炭素合成液体燃料(e-fuel)やバイオディーゼル燃料「サステオ(SUSTEO)」などのドロップイン燃料の早期導入にある。一方、EVは超小型車(LSEV)と一部のプレミアムセグメントに二極化していくと見られる。HEVについては、新興国での販売拡大を視野に入れ、現行のガソリン車と同等のコストまで削減する努力が不可欠、と総括した。

・「Tribological and Reliability Considerations and New Technologies for Loss Reduction in Hydrogen Engines.」三原雄司氏(東京都市大学)…水素エンジンの燃焼ガス中には多量の水蒸気が含まれている。この水蒸気がシリンダ壁面で凝縮すると、凝縮水が潤滑油を劣化させ、摩擦損失の増大や焼付き発生の危険性が高まる。同大学では、予混合および直噴の内燃機関を用いて、水素噴射特性や燃焼室形状がブローバイガス中の水素濃度に与える影響や潤滑油の劣化について研究を進めているほか、水素燃焼時のシリンダ壁温の変化(特に冷間時等)と凝縮水の発生状況に関しては、クランクケース内に加えてピストン各部(トップリング溝/セカンドランド/セカンドリング溝)から実働中に潤滑油を採取し、水素特有の潤滑油劣化を調べる研究を進めている。潤滑油の劣化は、予混合方式/直噴式では噴射タイミングに応じて大きく異なることも予想されることから、これら劣化油での摩擦・摩耗・焼付き特性を同大学所有のエンジン軸受試験機で調べる研究も行っている。ここでは、シリンダ壁温を40℃から80℃まで変化させ、潤滑油中の水分量と成分変化を実験的に検証した結果、軽油と比較して水分量が17倍に増加し、油性状も変化することが確認されたことを報告。また、この凝縮水による潤滑油添加剤の劣化、水素特有の潤滑油性状と摩擦損失・焼付き特性の変化などの研究を紹介。さらに、エンジン油内に発生させたウルトラファインバブルが、クランクジャーナルとすべり軸受間の摩擦特性に与える影響をエンジン軸受試験機により検証し、エンジン油中のウルトラファインバブル密度とオイル粘度が摩擦低減効果に与える影響を調査した結果についても報告した。

セッション1 固体潤滑剤およびグリース

 続いて、協同油脂・野木 高氏をチェアマンに、セッション1「固体潤滑剤およびグリース」が以下のとおり開催された。

・「Effects of Grease Composition and Properties on Electrical Pitting Prevention for Ball Bearings」山下侑里恵氏(ジェイテクト)…BEVやHEVの利用増加に伴い、駆動系モータを支持する軸受の電食に対する懸念が高まっている。電食は、騒音、振動、そして軸受の早期損傷を引き起こす可能性があり、EVの軸受の信頼性を高めるために耐電食性の向上が求められ、EVの軸受ユニットの小型化とコスト削減からは、電食防止グリースの開発が求められている。カーボンブラック(CB)を添加したグリースを使用することで体積抵抗率の低減を目指す研究もあるが、CB添加グリースではCB粒子の凝集や構造劣化の可能性があるため、電食防止における長期的な有効性は不確実。そこで、CB添加グリースとCB無添加グリースの電気孔食寿命を、体積抵抗率、油膜厚さ、凝集防止などの要素を考慮して評価した結果、CB添加グリースは体積抵抗率が低いものの、粒子の凝集により孔食寿命が短くなることが示された。一方、CB無添加の各種ウレアグリースでは、増ちょう剤の種類や油の種類を変えても、体積抵抗率と孔食寿命の間に強い相関関係が見られた。また、体積抵抗率が低く凝集を防止する有機化フィロシリケート(OP)を配合した新規グリースは、CB添加グリースと比較して軸受寿命を2.5倍に延長した。

・「Solid Lubrication Properties of Coordination Polymers with Two-Dimensional Layered Crystal Structures」江口 裕氏(名古屋工業大学)…グラファイトや二硫化モリブデンなどの二次元(2D)結晶構造を有する無機材料は、固体潤滑剤として広く使用されている。これらの弱く積み重ねられた層状結晶構造は、せん断力によって容易に劈開され、固体潤滑性を発揮する。無機2D材料は重要な固体潤滑剤だが、化学的に安定しているため、結晶構造を変化させることで特定の用途に合わせ固体潤滑性を調整することが難しい。そこで、金属イオンと有機配位子からなる2D配位高分子(CP)を固体潤滑剤の新たな候補として取り上げ、その性能を実証した。従来の層状固体潤滑剤と比較して、2D CPは金属イオンと配位子の組み合わせを選択することで高い構造多様性を示し、その特性を容易に変えることができる。層状結晶構造を有する2種類の2D CPであるベンゼン1,4-ジカルボキシレート銅とチオレート銀の固体潤滑特性をボールオンディスク摩擦試験により評価した結果、層状構造を有する2D CPが、従来の固体潤滑剤を補完する新しい固体潤滑剤として有望な候補であることが示唆された。

・「Nanoparticles as Next-Generation Lubricant Additives: Performance and Challenges」Fabrice Dassenoy氏(Ecole Centrale de Lyon)…過去20年間、トライボロジー分野におけるナノ粒子の利用への関心が高まっており、研究により、特に摩擦低減と耐摩耗性において、ナノ粒子の優れた潤滑特性が明らかになり、自動車用潤滑油への添加剤として有望な候補となっている。この可能性は、進化するエンジン技術を支える潤滑油を開発するという課題と、一層厳しさを増す環境規制に適合させるという課題に直面している添加剤メーカー、オイルメーカー、自動車メーカーから大きな注目を集めている。本講演では、潤滑油添加剤としてのナノ粒子の性能を探り、主要なパラメータがナノ粒子ベースの潤滑油の有効性にどのように影響するかを詳細に考察した。また、ナノ粒子を潤滑油に導入した場合の潤滑メカニズムについても考察。特に、ナノ粒子ベースの潤滑油の配合における重要な側面、特に分散剤の不可欠な役割に重点を置いて紹介したほか、自動車市場におけるEVの普及拡大を踏まえ、ナノ粒子が従来の潤滑油の新たな課題にどのように対処できるかについて考察した。

セッション2 潤滑剤

 続いて、ENEOS・田川一生氏をチェアマンに、セッション2「潤滑剤」が以下のとおり開催された。

・「Development of Diesel Engine Oil without Metal-Based Antiwear and Detergent Additives」清水保典氏(出光興産)…厳しい排ガス規制に対応するため、ディーゼル車には排気ガス中の粒子状物質(PM)を捕集するディーゼル微粒子捕集フィルター(DPF)が搭載されているが、蓄積した煤を燃焼させるためにDPFの再生が必要で、エンジンオイル添加剤に含まれる金属灰は目詰まりを引き起こし、燃費を悪化させる。ディーゼルエンジン油中の灰分を低減する努力にもかかわらず、金属灰の存在はDPFの性能に影響を与え続け、より頻繁な再生が必要となり、ドライバーの満足度低下につながる可能性がある。そこで同社は従来の金属系耐摩耗性添加剤および清浄性添加剤に代わる、新しい無灰ディーゼルエンジン油を開発した。実験室およびエンジンテストの結果、この金属非含有エンジン油はJASO DH-2規格性能を有し、動弁系の摩耗防止、ピストン清浄性など、優れた性能を発揮することが示された。国内で実施した実車試験では、エンジン油の寿命指標として広く用いられている全塩基価がほぼゼロであるにもかかわらず、酸価や動粘度の大幅な上昇といったトラブルがなく、実用的な性能を確認した。ここでは、無灰エンジンオイルがDPF性能に及ぼす影響について紹介するとともに、エンジン耐久性試験および実車試験の結果を示し、CO2排出量削減効果を高める可能性についても強調した。

・「Development of Oil Film Forming Polymeric Additives Contributing to the Improvement of Anti-Seizure Property of e-Axle Fluid」植野和志氏(三洋化成工業)…地球温暖化防止のためCO2排出規制が強化される中、EVの普及が進んでおり、その航続距離のさらなる向上を目的に、エネルギー効率を向上させるためのさまざまな対策が求められている。例えば、モータ、インバータ、減速機を一体化した駆動モータシステムであるe-Axleは、小型・軽量であることから航続距離の延長に貢献する。e-Axleに使用するフルードについては、従来のATFではなく、e-Axleの特性に合わせた専用フルードが必要となっている。e-Axleでは、減速機の潤滑と電動モータの冷却に同じフルードを使用するため、粘性抵抗によるエネルギー損失を低減し、効率的な冷却を可能にするために、フルードの粘度を低くする必要がある。しかし、単に粘度を下げるだけでは、一般的に潤滑不良が発生し、場合によっては機械的な焼付きを引き起こすことがある。したがって、適切な添加剤を配合することで、このような焼付きを防止する必要がある。ここでは、e-Axleフルードの耐焼付き性を向上させるために開発された、新規油膜形成ポリマー添加剤の特性について紹介。この油膜形成ポリマー添加剤が鋼板表面に吸着し摩擦低減効果や耐焼付き性を発揮すること、e-Axleフルードに添加することで耐焼付き性も向上すること、有機ポリマー設計により、銅の腐食性や体積抵抗率への影響を低減することなどを示した。

・「Study of Doped-DLC Coatings in Combination with Functionalized Polymers for Enhanced Wear Resistance and Friction Reduction」Fábio Emanuel de Sousa Ferreira(University of Coimbra)…ダイヤモンドライクカーボン(DLC)コーティングへの金属元素の導入は、さまざまな用途における機能性向上の手段として注目を集めている。ここでは、官能化ポリマーとコバルト(Co)ドープDLCコーティングとの相互作用を探求し、それらのトライボロジー特性と耐摩耗性を解明。CoドープDLCコーティングは、深振動マグネトロンスパッタリング(DOMS)を用いて鋼基板上に成膜され、パレット数を変化させることで異なるCoドープ濃度が達成された。ボールオンディスク摩擦摩耗試験の結果、PLMA b PDMAEMAポリマーと組み合わせたCoドープDLCコーティングは、PLMAと比較して摩擦を低減し、耐摩耗性を向上させることが明らかになった。走査型電子顕微鏡エネルギー分散型X線分光法(SEM-EDS)による表面分析により、炭素を多く含むポリマー由来の転写膜の形成が明らかになり、これが摩耗速度の低減に寄与していることが確認された。CoドープDLCコーティングは、特定の官能化ポリマーと組み合わせることで、摩擦を低減し、耐摩耗性を向上させる有望な可能性を示していることから、多様な産業用途への適用の可能性が示唆された。

 講演終了後は、加納知広氏(大豊工業 代表取締役技術本部長)が挨拶に立ち、講師陣や運営委員メンバーなどのシンポジウム開催への協力に対して謝辞を述べた後、「この後のレセプションにおいても情報交換や人的交流の場にしていただくとともに、次回のシンポジウムにフィードバックし、より有意義なシンポジウムに発展していけるよう、本日のご講演に関するご意見、ご感想をうかがいたい。来年4月には「9th TTRF-TAIHO International Symposium on Automotive Tribology 2026」を開催するので、その際もぜひ参加していただきたい」と述べて、シンポジウムは閉会、レセプションへと移行した。

kat

東京理科大学・佐々木研究室、第30回トライボサロンを開催

3ヶ月 1週 ago
東京理科大学・佐々木研究室、第30回トライボサロンを開催kat 2025年04日19日(土) in

 東京理科大学・佐々木研究室(主宰:佐々木信也 教授)が主催する「トライボサロン」(https://tribo-science.com/salon)の第30回目が4月19日、東京都葛飾区の同大学 葛飾キャンパスでのオンサイト参加とオンライン参加からなる、ハイブリッド形式によって開催された。

第30回トライボサロン開催のようす

 

 トライボサロンは、トライボロジーに関係する情報・意見交換の場として、毎月1回のペースで開催されている。もともとは佐々木研究室の博士課程学生の勉強会として発足し研究成果の発表や最新の研究動向などに関する意見や情報交換を重ねてきたが、2022年9月からは佐々木研究室に限らず広く参加の戸を開き、関係者のネットワーク作りも目的の一つとして活動している。トライボロジーに関する情報交換、人材交流等を通し、関連技術の向上と発展に資することを目的に、次の活動を円滑に行えるよう運営に努めている。

 第30回目となる今回のトライボサロンでは、東京理科大学 修士1年(M1)の3名の発表者から、以下のとおり話題提供がなされた。

 姉川健佑氏は「リン酸エステル中における反応膜の成長過程に関する研究」と題し、原子間力顕微鏡(AFM)摩擦面その場観察を用いてリン酸エステルの一種であるトリクレシルホスフェート(TCP)由来のトライボフィルムの成長過程をナノスケール観察し、反応速度の観点から解析を行った結果、TCPトライボフィルムの成長速度は実験が高温になるにつれて増加することや、トライボフィルム成長とせん断応力の間には正の相関が確認されたこと、せん断応力の増加とともに活性化エネルギーが低下しトライボフィルムの生成反応を促進したであろうことなどを報告した。

 続いて古川怜穏氏は「e-Axle潤滑油を用いた鋼の転がりすべり摩擦試験における印加電圧が摩耗挙動に及ぼす影響について」と題して、市販の電動車用トランスアクスルフルード(e-TAF)を用いて、ボールオンディスク形式の転がり滑り試験において、印加電圧の大きさや向き、印加時間および添加剤の有無が摩耗挙動へ及ぼす影響を調査した結果、通電条件下では摩耗量が増加、印加電圧を高くすると電食による凹凸が確認され、市販油は摩耗を抑制するものの、通電条件下では電食を促進させ、重大な損傷の原因となる可能性があると報告した。

 さらに関 想太氏が「化学合成したタングステンジチオカーバメイト(WDTC)の潤滑性に関する研究」と題して、WDTCを合成し潤滑油を作製しSRV試験を行った結果、摩擦場で二硫化タングステン(WS2)を生成するWDTCを配合することで、摩擦場で二硫化モリブデン(MoS2)を生成するモリブデンジチオカーバメイト(MoDTC)と同等の摩擦低減効果、MoDTCよりも優れた耐摩耗性が得られ、高温においてMoDTCよりも潤滑性能の持続性の向上が確認されたことを報告した。

 トライボサロンに関心のある方は、以下のURLを参照されたい。
 https://tribo-science.com/salon

kat

日本ベアリング、福岡支店を開設、5月から業務を開始

3ヶ月 3週 ago
日本ベアリング、福岡支店を開設、5月から業務を開始kat 2025年04日07日(月) in

 日本ベアリングは、販売ならびに営業業務の一層の強化充実を図る目的で、新たに福岡支店を開設する。福岡支店長には福本良祐氏が就任、本年5月1日から業務を開始する。

 なお、広島サテライトは閉鎖し、大阪支店へ統合となる。

福岡支店

住所:〒812-0016 福岡県福岡市博多区博多駅南4丁目2-10 南近代ビル6階

電話番号:0120-645-511(福岡サテライトから変更なし)

FAX:06-6947-5577(福岡サテライトから変更なし)

福岡支店が開設される南近代ビル

 

kat

ポリプラスチックスメカニカルリサイクルPPSを今年中に上市、エンプラ100%循環化に貢献

3ヶ月 3週 ago
ポリプラスチックスメカニカルリサイクルPPSを今年中に上市、エンプラ100%循環化に貢献kat 2025年04日07日(月) in

 ポリプラスチックスは、業界に先駆け立ち上げたメカニカルリサイクル事業の一環として、本年12月までにポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂DURAFIDEⓇ rG-PPSガラス繊維40%強化グレードを上市する予定だ。本事業は、最適処方や客観的な品質保証を同社が担い、メカニカルリサイクル材料の適用用途を拡大することで、エンプラ100%循環化の実現に貢献するもの。

 今回上市するDURAFIDEⓇ rG-PPSは、メカニカルリサイクル事業の一環である「オープンPIRメカニカルリサイクルスキーム」によってユーザーから回収した、ガラス繊維強化PPSの工程端材を原料としている。前工程では厳しい受入検査や金属除去などを行い、後工程では狙いのスペックに入るようリサイクル原料同士および一部のバージン材を再処方、最適条件での混練の上、バージン材と同様の体制で品質保証を行い、ユーザーに出荷する。

 スーパーエンプラは一般的に製品カーボンフットプリント(PCF)が大きく、「オープンPIRメカニカルリサイクルスキーム」は、ユーザーでの廃棄物削減・有効活用のみならず、ユーザーの製品1個当たりのPCF削減に大きく貢献できる。なお、ユーザーから回収するガラス繊維強化PPSは、当面の間、同社のPPS樹脂DURAFIDEⓇ PPSガラス繊維強化の特定グレードを対象としている。

 ポリプラスチックスではDURAFIDEⓇ rG-PPS第2弾として、フィラー高充填グレードを開発し、ガラス繊維40%強化グレードと併せて、日本国内のユーザーへの供給体制確立を目指す。リコンパウンディング事業と「オープンPIRメカニカルリサイクルスキーム」構築には、用途と回収ルート開拓の両方が必要で、同社の得意先だけでなく、さまざまな静脈産業(製造や消費の過程で発生した不要な製品や資材を回収し、再利用やリサイクル、適正処分を行う産業)各企業との連携を視野に入れている。将来的には、世界の国・地域それぞれ内側で完結する「地産地消」循環チェーンの構築、また原料をPCRに拡大することで、動向が注視される欧州ELV規則への対応につなげていく。

 なお、リコンパウンディングとは、リマニュファクチャリング(リマン)とコンパウンディングを組み合わせた造語で、同社ではリサイクル原料を含むベース樹脂およびさまざまな成分を複合化し、単純な再生樹脂以上の機能や価値を発現させること、と定義している。

 同社のエンプラ製品は熱可塑性樹脂で、原理的にはすべてメカニカルリサイクルが可能だが、エンプラが使われる用途は耐久性・信頼性が求められるものが多く、単純な「樹脂再生(熱で廃プラを変形させペレット形状に戻すこと、いわゆるリペレット)」では要求品質・要求性能を満たせないケースが多い。同社は、エンプラ専業メーカーとして蓄積した材料技術・生産技術・応用技術的知見を生かして、リペレットではなくリコンパウンディングによって、単純な再生樹脂以上の機能と価値を生み出し、メカニカルリサイクル材料の適用用途を拡大することで、エンプラ100%循環化の実現に貢献していく考えだ。

オープンPIRメカニカルリサイクルスキーム

 

kat

BASF、PESUベースの特殊コンパウンドで、難易度の高いE&E部品の可能性を創出

3ヶ月 3週 ago
BASF、PESUベースの特殊コンパウンドで、難易度の高いE&E部品の可能性を創出kat 2025年04日07日(月) in in

 BASFは、高い技術要求が求められる電気・電子(E&E)部品向けに、ポリエーテルスルホン(PESU)をベースとし高流動の特殊コンパウンド「Ultrason® D 1010 G6 U40」を開発した。データ伝送やエネルギー伝送、スマートエレクトロニクス、e-モビリティの分野で、小型化や複合化された部品を射出成形するための難易度の高いニーズを満たすよう最適化されたこの新しい熱可塑性プラスチックは、より低い加工温度で優れた流動性を発揮するため、半導体部品のIGBTやバーンインテストソケットだけでなく、小型で複雑なスイッチ、サーキットブレーカー、センサーの設計においても、優れた柔軟性を提供する。

 Ultrason® D 1010 G6 U40は、相対温度指数(RTI)が高く、ポリエーテルイミド(PEI)やポリフェニレンスルフィド(PPS)よりも高い比較トラッキング指数(CTI)を示し、高温でも安定した電気特性を発揮する。この製品を使用することで、射出成形においては標準的なPESUと比較して溶融温度を12.5%下げることができ、非常に優れた流動性を損なうことなくエネルギーコストの削減が可能となる。

 新しいUltrason®グレードは、PESUの優れた耐薬品性と耐熱性に加え、高い剛性と強度、優れた電気的性能、加工のしやすさを兼ね備えているほか、より低い加工温度において、標準的なPESU Ultrason® E 2010 G6よりも優れた流動性を示す。このUltrason® Dグレードは低粘度で、溶融温度315℃、金型温度160℃において、厚さ0.5mmで最大3.5cmのスパイラルフロー長を達成する。30%のガラス繊維を配合しているにもかかわらず、360℃で成形すると非強化PESUと同等の流動性を示すため、部品の小型化や薄型化が可能となり、アセンブリスペースを節約でき、設計自由度も向上できる。

 Ultrason® D 1010 G6 U40はまた、高い熱安定性、低吸水性、そして、高い絶縁耐力などの電気特性の向上も特徴としているほか、非ハロゲン系難燃剤を使用していることから、電気相対温度指数(RTI)に優れている。社内テストでは、0.4mm厚でV-0等級(UL94 規格)と評価され、比較トラッキング指数(CTI)は200V でPLC 3(IEC 60112準拠)に達した。これにより、これまで難易度の高いE&E部品に使用されてきたPEIやPPSよりも低い沿面距離と優れた絶縁性を実現し、E&E部品の小型化をサポートする。

 BASFのパフォーマンスマテリアルズ事業部スペシャリティーポリマーUltrason® 市場開発の貴田和広氏は、「この新しいUltrason® Dは、電気的・機械的特性に対して特殊な要求がある、エネルギー効率の高い電子デバイスの開発に最適。定評のある当社のポリエーテルスルホンUltrason® Eの優れた特性を受け継ぎながら、E&E用途における性能の最適化、優れた流動性、加工エネルギーを低減し持続可能な使用を実現する。これにより、e-モビリティや家電部品の新たな可能性が広がる。また、過酷な動作条件下で電圧やデータレートが上昇する用途での、安全性の向上にも貢献できる」と述べている。
 

 

kat

BASF、過酷な環境下で使用する部品用の高耐久性PPAを開発

3ヶ月 3週 ago
BASF、過酷な環境下で使用する部品用の高耐久性PPAを開発kat 2025年04日07日(月) in in

 BASFは、特殊な熱マネジメントを必要とする高耐久性部品向けに、ポリアミド(PA)6T/6I をベースとしたポリフタルアミド(PPA)製品群「Ultramid® Advanced T1000」のポートフォリオを拡充、優れた耐加水分解性(HR)、高い純度(EQ=電子反応品質)を持つよう最適化されたグレードを追加した。これにより、さまざまな冷却媒体が存在しても、高出力で安定した長期性能を発揮するインバーターや燃料電池を搭載した内燃機関、電動モーターを必要とする自動車業界のニーズの高まりに対応する。例えばイオンマイグレーションのリスクが少ないことからは、燃料電池部品の長寿命化(25000時間以上)に貢献できる。

 新たな耐加水分解性(HR)グレードと電子反応品質(EQ)グレードは、高温下での高い強度と剛性に加え、優れたクリープ強度と冷却媒体に対する耐性を兼ね備えており、市場にある標準的なPAやその他多くのPPAの性能を上回っている。

 耐加水分解性に優れた新しいUltramid® Advanced T1300HG7 HRは、130℃以上の温度でグリコール、熱媒油、水などのさまざまな媒体と接触しても、高い化学的安定性および寸法的安定性を示す。そのため、サーモスタットハウジングやオイルインレット/アウトレットなどの冷却システムの自動車部品だけでなく、ポンプ、バルブ、建設用途の継手などの耐用年数を延長できる。これらのPPAは、エチレングリコールと水の混合液中において、130℃で1000時間、さらには3000時間の連続使用に耐えることが、広範な試験で実証されている。

 高純度のUltramid® Advanced T1300EG7 EQは、電気活性成分をほとんど含まないにもかかわらず、水、水素、またはGlysantin® FC G20のような高純度冷却媒体との接触においても、優れた耐熱老化性を発揮。さらに、熱安定性は-40℃~100℃に及ぶため、同PPAは、エンドプレート、媒体供給部品、加湿器など、e-モビリティや燃料電池の用途に特に適している。また、電気自動車の全ライフタイム(最小要件25000時間)にわたり、さまざまな温度で安定した機械的特性を発揮する。

 BASFのEQグレードはすべて、原料の選択、製造工程、ハロゲン含有量の分析などを網羅する特別な品質基準の対象となっているため、材料の電気伝導率が低く、冷却媒体へのイオン/ハロゲン移動が少ないため、部品の劣化を抑え、最終的には繊細な燃料電池スタックの電気的故障を防ぐ。

 BASF PPAグローバル・マーケティング担当のマーク・ケラー氏は「2018年にUltramid® Advanced T1000 を市場に投入して以来、顧客にはその卓越した特性プロファイルを高く評価していただいている。どのような温度や気候にさらされても高い強度を維持し、湿度や化学品に対する耐性も非常に優れている。今回の新たなHRグレードとEQグレードは、その水準をさらに引き上げるもの。私たちは、過酷な条件下での熱マネジメントというPPAに求められる課題を深く理解し、性能と安全性の両立を可能にしている」と語る。

 BASFでは、今回市場投入した高性能HRグレードとEQグレードに加え、レーザー溶着が必要な部品には、レーザー透過性がありながら耐加水分解性にも優れた、Ultramid® Advanced T1000 LTグレードも用意している。

 

kat

日本滑り軸受標準化協議会、第40回総会を開催

3ヶ月 3週 ago
日本滑り軸受標準化協議会、第40回総会を開催admin 2025年04日07日(月) in

 日本滑り軸受標準化協議会(PBSA)は3月27日、東京都千代田区のTKP 東京駅セントラルカンファレンスセンターで「2024年度 第2回総会(通算第40回総会)」を開催した。

 会の冒頭、挨拶に立った持丸昌己会長(オイレス工業)は「一昨年の総会で収入より支出が多いため“この会は大丈夫ですか”という質問があった。昨年は経済産業省からの支援の金額が増加したため、ドイツのISO/TC123(平軸受)国際会議に10名ほど派遣したがPBSAで支援する金額が抑えられた。したがって、それほど大きな支出にはならなかった。今年も韓国でISO/TC123国際会議があるため、日本から10名もしくはエキスパートを含めるともう少し多くなるかもしれないがPBSAで支援を行う。今後の具体的な費用削減の内容としては、後ほど説明があると思うが、年次報告書の印刷をやめてデジタル化する、また毎年3月と6月に開催している総会の1回をオンライン上で行う」と述べた。

挨拶をする持丸会長

 続いて前回議事録の確認を行った後、日本機械学会ISO/TC123平軸受国内委員会 委員長の片桐武司氏(大同メタル工業)が挨拶に立ち、「今年度は経済産業省の標準化テーマの3年目にあたる。昨年は水潤滑用の軸受材料の国際規格が9月に発行された。軸受の廃棄・リサイクルの国際標準化については7月に国際規格の発行となった。3年間の計画が順調に進んだ。国内委員会への支援は経済産業省からあったが、それを補完する形でPBSAに支援していただいた。来年度は韓国での国際会議があるためそちらの支援もお願いしたい」と述べた。

挨拶をする片桐委員長

 総会ではまず、日本機械学会ISO/TC123平軸受国内委員会の2025年度の活動計画について監事の山田 晃氏(大豊工業)が、静圧気体軸受用語に関する国際標準化(プロジェクトリーダー:冨田博嗣氏(オイレス工業))を3年間かけて開発を行うこと、今年度は同標準化についてNP投票まで進める計画であること、本年10月29~31日に韓国・栄州市で開催されるISO/TC123国際会議に参加することなどについて報告した。

報告をする山田氏

 続いてPBSAの2024年度の活動報告と2025年度の活動計画について、会計を務める橋爪 剛氏(オイレス工業)より報告がなされ、2024年度の活動報告として、2024年6月と2025年3月に2回の総会が開催されたこと、今年度をもって本田技研工業が退会すること、昨年11月にドイツ・ベルリンで開催されたISO/TC123国際会議の旅費などをPBSAが支援したことなどを報告し、さらに2024年度会計報告がなされた。2025年度の活動計画としては、第1回総会(通算第41回総会)を本年6月に、第2回総会(通算第42回総会)を2026年3月に開催し、第1回総会をオンライン上で開催することや理事会を必要に応じて開催する予定であることなどを報告した。また、本年10月に韓国で開催されるISO/TC123国際会議の支援や、日本機械学会ISO/TC123平軸受国内委員会活動の支援、第2回総会で講演会を開催することなどを報告した。

報告をする橋爪氏(左)

 総会終了後には、「鉄道分野における国際標準化活動」と題して、鉄道総合研究所 鉄道国際規格センター センター長の北川敏樹氏による特別講演が設けられた。講演では鉄道分野における国際標準化を取り巻く状況や鉄道総研における国標準化活動への取り組み、IEC/TC 9・ISO/TC 269における国際標準活動などについて解説した。まとめとして、増加傾向にある規格開発に適切に対応するとともに日本発の規格提案を継続すること、鉄道業界全体で海外ビジネス展開に向けて国際規格や認証などに関わる活動の推進が必要であることなどを挙げた。

講演をする北川氏

 

admin

Mujin、オートメーションストラテジー本部を新設、ユーザーの自動化DX推進を強化

3ヶ月 4週 ago
Mujin、オートメーションストラテジー本部を新設、ユーザーの自動化DX推進を強化kat 2025年04日04日(金) in

 Mujin は、ユーザーの自動化構想の具現化に伴走する「オートメーションストラテジー本部」を新たに立ち上げた。これにより、独自のフィジカルAIをコア技術に次世代物流を実現する総合オートメーションテクノロジー企業であり、製造・物流自動DXに特化したプロである同社による、現状調査・分析・自動化要定義支援等の提案が実施。ユーザーのサプライチェーン改革の構想・戦略・実行支援を一層強化することで、製造物流プロセスのデジタルツイン化を実現していく。

 新設されたオートメーションストラテジー本部は「顧客サイドに立ち、自動化成功の基盤となる現状把握・構想検討・要件定義を進め、自動化の最適解を導き出す」をミッションに掲げている。

 これまで数多くの次世代自動化ソリューションを導入してきた同社だからこそ可能な、コンサルティングサービスだけで終わらない、構想検討したソリューションの現場実装、立ち上げ後の保守・アフターサポートまでのワンストップサービスを提供する。現場経験と最新の自動化設備の知識/ノウハウが豊富な専門チームが、フルコミットでユーザーの課題解決に向けた支援を行う。

 また、Mujinのソフトウェアを基盤とした自動化DXは、これまで不可能であった現場データをリアルタイムで収集し見える化することで、リモート運用、データを基にした分析・さらなる改善・経営判断までをも可能にしている。

 Mujinでは、「オートメーションストラテジー本部は、コンサルティングサービスだけで終わらない製造・物流自動化DX に特化した組織として、経営/事業改革のために自動化へ一歩踏み出そうとしている顧客のベストなパートナーとして、今後も事業を拡大していく」としている。

kat

NTN、スバルテクニカインターナショナルのSUPER GT参戦車両に軸受を提供

3ヶ月 4週 ago
NTN、スバルテクニカインターナショナルのSUPER GT参戦車両に軸受を提供kat 2025年04日04日(金) in in

 NTNは、モータースポーツへの参戦や車両開発を行うスバルテクニカインターナショナル(STI社)のSUPER GTレース活動に協賛し、同社の参戦車両「BRZ GT300」に軸受を提供する。過酷な使用環境に対応する耐荷重性、低トルク性を両立した軸受により、パワフルで安定した走行に貢献していく。NTNの軸受を搭載した車両は、本年4月から11月にかけて開催される「AUTOBACS SUPER GT 2025 SERIES」のすべてのレースに登場する。

BRZ GT300

 

円すいころ軸受


 SUPER GT は、日本最大級の観客動員数を誇る自動車レースのシリーズ戦で、国内外の会場で年間全8レースが開催される。高性能なGT(グランツーリスモ)カーをベースとしたレーシングカーと国内外のトップドライバーによるエキサイティングなレースは、世界中で多くのファンを魅了している。

 今回、NTNが提供するのは「BRZ GT300」のタイヤの回転を支える円すいころ軸受。長時間・長距離の走行に加え、急カーブ時による荷重や衝撃も受ける過酷な使用環境に対応するため、豊富なラインアップの中から、最適なころの本数や幅、軌道輪により耐荷重性と低トルク性を両立した商品を選定し、極限の環境下におけるレースに挑戦する「BRZ GT300」のパワフルで安定した走行に貢献する。

 NTNはこれまでにもSTI 社のモータースポーツ参戦車両「WRX」などにドライブシャフトやハブベアリングなどの商品を提供し、STI社の車両パフォーマンスを支えてきた。

 NTNでは、「駆動領域におけるグローバルトップメーカーとして自動車向け商品の開発や提供を通じて、自動車市場の進展だけでなく、モータースポーツの振興にも貢献していく」としている。

BRZ GT300車両後部左右にNTNロゴ

 

kat

THK、コンパクト電動アクチュエータのラインナップを拡充

4ヶ月 ago
THK、コンパクト電動アクチュエータのラインナップを拡充kat 2025年04日02日(水) in

 THKは、販売開始から35年を迎えるロングセラー製品であるコンパクト電動アクチュエータ「THKアクチュエータ KRシリーズ」のさらなる市場開拓に向け、設計者目線での使いやすさと幅広い用途に活用してもらうよう、標準ラインナップを大幅に拡充する。また、今年度は新たに加わったボールねじリードのバリエーション追加を喚起する狙いで、「アクチュエータKRシリーズ総合カタログ(CATALOG No.444)」と題し、カタログを一新した。

 

 THKアクチュエータKRシリーズは、LMガイド、ボールねじのコンポーネント製品をモジュール化し、コンパクト・高剛性・高精度を実現した製品。

 特に、高剛性なU字形断面形状のアウタレールと、両側面にLMガイド部、中央にボールねじ部を一体構造としたインナブロックの構成により、最小スペースで、高剛性、高精度なアクチュエータ機能を併せ持つ。

 また、ハウジング(軸受部)がサポートユニット、インナブロックがテーブルの役目も兼ねているため、設計および組み立ての工数を大幅に削減することが可能となり、トータルコストの低減に寄与する。

 販売開始してから35年、KRシリーズは画期的な製品として市場に受け入れられ、業界有数のバリエーションの広さがユーザーから多くの支持を得て、同社のロングセラー製品へと成長した。今後は日本の国内市場にとどまらず、成長著しい世界市場へと需要の拡大が見込まれる中で、設計者目線での使いやすさと幅広いオプション品の充実を見据え、標準ラインナップ(ボールねじリード、中間フランジ、モータブラケットなど)の拡充をはじめ、業界屈指の最上位スペック値への見直しなどを予定している。

 THKでは引き続き、独自の新製品開発を通して、自動車、電子部品、医療など、あらゆる分野の自動化、省力化需要にお応えし、生産性向上、工程改善のための「自働化ソリューション」を提案していく。

 

kat

bmt主催の講演会・交流会「カーボンニュートラル実現に向けた歯車システムとトライボロジー」が開催

4ヶ月 ago
bmt主催の講演会・交流会「カーボンニュートラル実現に向けた歯車システムとトライボロジー」が開催 in kat 2025年04日02日(水) in in

 メカニカル・テック社『bmt ベアリング&モーション・テック』編集部は3月28日、東京都中央区のTKP東京駅カンファレンスセンターで、「カーボンニュートラル実現に向けた歯車システムとトライボロジー」を開催した。コーディネーターは東京理科大学 佐々木信也教授で、当日は歯車システムの関係する電動車や洋上風力発電といった新領域でのトライボロジー課題と取り組みについて、以下のとおり4件の講演が行われ、また、講演の合間にトライボロジー関連の試験評価機器メーカーによる2件のショートプレゼンがなされた。

講演会のようす講演1「総説:カーボンニュートラル実現に向けた歯車システムとトライボロジー」佐々木信也氏(東京理科大学)

 トライボロジーは摩擦損失の低減や耐摩耗性向上という観点から機器の省エネや環境負荷低減に寄与してきたが、カーボンニュートラル(CN)社会実現に向けて環境性能の向上につながるトライボロジーの役割に期待が寄せられている。CN実現に期待される電気自動車(EV)の話題を取り上げ、システム小型化のためにモータの高速回転が求められるe-Axleの減速機の課題として、高速回転に伴うギヤや軸受のピッチング寿命低下への対策とともに摩擦損失の低減による効率向上が求められていると説明。この課題を踏まえて実施した4円筒マイクロピッチング試験や電圧印加試験などの評価結果やメカニズム解明に向けた取り組みなどについて述べた。

総説講演を行う佐々木氏講演2「自動車用動力伝達技術研究組合(TRAMI)の考えるカーボンニュートラルシナリオと機械要素・潤滑技術への期待」太田義和氏(日産自動車/TRAMI)

 TRAMIの扱う研究領域は、自動車のエネルギー源から車輪の間のパワートレインであると説明しつつ、CN実現の切り口として、①電動パワートレインの高効率化(電費性能向上)による「走行時のCO2排出低減」と②パワートレインの小型化による省資源化とリデュースを含む材料置換による「製造時のCO2排出低減」を掲げた。それら課題を踏まえつつ、TRAMIはモータの超高回転化(5万rpm超)による小型・軽量・高効率な電動パワートレインを実現する技術を研究テーマとして設定。超高回転化に伴う高い減速比など諸課題を解決するための機械要素・潤滑技術への期待を述べた。2025年度以降の研究方針を示しつつ、TRAMIの超高回転化研究を通じ、産の連携強化と産学間の谷を埋め日本の自動車産業のさらなる活性化に貢献していく、と総括した。

講演する太田氏ショートプレゼン1「カーボンニュートラル実現に向けた歯車システムとトライボロジー試験機」國井卓人氏(Rtec-Instruments)

 歯車システムのトライボロジー試験では、ギヤの実際の動き(転がり+すべりの複雑な相互作用)をどれくらい再現できるかが課題となる。こうした歯車のトライボロジー試験に関して、同社の二円筒試験機「TRT-3000」や三円筒試験機「MPT-3000」は、摩耗・潤滑・摩擦特性の基礎的な評価手法として非常に有効で、特に、コストや試験の再現性、条件設定の自由度を重視する場合には、歯車試験の代替として積極的に活用する価値があり、試験のコストや時間の削減に期待できると総括した。

ショートプレゼンを行う國井氏講演3「洋上風力発電における機械要素・潤滑技術への期待」松信 隆氏(戸田建設/日本風力発電協会)

 日本の洋上風資源が潤沢に存在するといった洋上風力発電への期待が高まる一方で、洋上風力では陸上風力に比べ資本費と運転維持費が多いためエネルギーコストを下げるためには設備利用率の向上が必要という課題がある。高風速地域には主に発電機定格出力の増加で発電量を増加し、低風速地域には主に原動機の受風面積(ローター径)を増加して対応する必要があるが、ロータ径の拡大に伴い主軸受の支持荷重が増加し、主軸受の定格荷重の増加への要求があるほか、主軸受の機能確認と型式認証取得のため試験設備が必要となり、中立の試験評価機関なども課題となっている。発電機の国内メーカー不在など日本の環境に合った風車がなく部品メーカーが育たないといった業界の動向を俯瞰した後、オープンイノベーションによる開発など日本が取るべき技術戦略や、設備利用率50%以上の風車要素技術と概念確立、国産風車と部品の開発競争力強化と市場参入といった我が国風車技術復活へのロードマップを示した。

講演する松信氏ショートプレゼン2「スマート膜厚計で拓く!金属上の油膜評価と最新トライボロジー解析」岡本宗大氏(大塚電子)

 測定者や測定場所に縛られずに高精度な膜厚計測が可能なハンディタイプの測定器「スマート膜厚計」を紹介。形状のある部品のしゅう動部の油膜厚を簡単・リアルタイム観察が可能とした。また、工具や自動車部品上のダイヤモンドライクカーボン(DLC)膜の膜厚を非接触・非破壊で1秒程度の時間で測定できる顕微分光膜厚計「OPTM」や、フィルム製品などの膜厚をライン上において面でとらえることができる「ラインスキャン膜厚計」、CMPスラリーの粒径分布などが把握できるゼータ電位・粒子径・分子量測定システム「ELSZneo」、さらには、今まで見えなかったものが見える最新の光波動場三次元顕微鏡「MINUK」を紹介した。

ショートプレゼンを行う岡本氏講演4「電動車用超低粘度トランスアクスルオイルの技術課題と製品化開発」床桜 大輔 氏(トヨタ自動車)

 電動車のエネルギー損失の中でトランスアクスルの損失割合は大きく、特に潤滑油による撹拌抵抗が大きな要因とされる。潤滑油の低粘度化は撹拌損失低減による電費向上に寄与するだけでなく、モータの冷却性能向上につながり、全体の効率を高める一方で、低粘度化は金属しゅう動面農膜不足による摩耗や焼付き、電気絶縁性の悪化といった課題を伴う。これに対し、40℃動粘度が12mm2/secと低粘度でありながら潤滑性と電気絶縁性を確保した高信頼性のトランスアクスルオイルを開発した。これにより、電動車のWLTCモード燃費を1.2%以上向上しつつモータ・オイルクーラの冷却性向上で電動車ユニットに貢献できる。低粘度で信頼性を確保できる電動車オイルの添加剤パッケージを確立、本技術は今後の同社における電動化技術の柱であり、CNに大きく貢献するもの。今回完成した電動車オイルの添加剤パッケージをベースに将来ニーズに対する新規な機能を付与していく、総括とした。

講演する床桜氏

 講演会終了後は、講師と参加者による交流会が催され、トライボロジー分野の横断的な情報交換と人的交流が、和やかながら活発に執り行われた。

交流会のようす

 

kat

bmt2025年3月号「特集:モビリティ」、「キーテク特集:グリース」3/25発行!

4ヶ月 1週 ago
bmt2025年3月号「特集:モビリティ」、「キーテク特集:グリース」3/25発行!admin 2025年03日21日(金) in in

 ベアリング&モーション技術の総合情報誌「bmt(ベアリング&モーション・テック)」の第53号となる2025年3月号が3月25日に小社より発行される。

 今号は「特集:モビリティ」、「キーテク特集:グリース」で構成。特集「モビリティ」では、自動車用動力伝達技術研究組合(TRAMI)の考えるカーボンニュートラルシナリオと機械要素・潤滑技術への期待から、二輪EV用e-Axleの開発と今後の展開、モビリティのカーボンニュートラル実現に対応するグリース技術の開発と計測評価技術、カーボンニュートラルに貢献する潤滑油・グリースの劣化判定・寿命予測に適用可能な分光測色計、自動車部品のオイル薄膜計測にも適用できる反射分光法を用いたハンディタイプの高精度膜厚計、などについて紹介する。

 また、キーテク特集「グリース」においては、PFAS規制に対応するフッ素グリースの代替技術や、価格・入手性などの問題を抱えるリチウムグリースの現状と代替グリース技術について紹介する。

特集:モビリティ

◇TRAMIの考えるカーボンニュートラルシナリオと機械要素・潤滑技術への期待・・・日産自動車 太田 義和 

◇二輪EV用e-Axleの開発と今後の展開 ・・・エフ・シー・シー 柏木 智 氏、片岡 真 氏、関 賢一郎 氏、重 秀一郎 氏、長田 桂希 氏に聞く

◇自動車のカーボンニュートラル実現に対応するグリース技術の開発と計測評価技術・・・ニッペコ 木村洋介 氏、西村 寛 氏、平澤 明日美 氏に聞く

◇カーボンニュートラルに貢献する潤滑油・グリースの劣化判定・寿命予測に適用可能な分光測色計・・・コニカミノルタジャパン 西本 昌弘 氏 × 編集部

◇自動車部品のオイル薄膜計測にも適用できる反射分光法を用いたハンディタイプの高精度膜厚計・・・大塚電子 色川 健太朗 氏、森田 祥 氏に聞く

キーテク特集:グリース

◇PFAS規制時代の到来:フッ素グリースの代替を考える・・・出光興産 高根 孝仁

◇リチウムグリースの現状と代替グリース技術・・・編集部

連載

現場に行こう No.001・・・ニッペコ 千葉工場

注目技術:第45回 第9回ロボデックスに見るbmt関連製品・技術・・・出展各社

あるコスモポリタンの区区之心 第23回 屠(ト)・ヨウヨウ、被団協、ノーベル賞・愚感・・・紺野 大介

トピックス

「ハノーバーメッセ2025 プレスプレビュー」開催、展示会の概要・見どころを紹介

トライボロジー試験機SRV のユーザーズミーティングが開催、国内ラウンドロビン試験結果を報告

雑誌ご購入

定期購読はこちらから

単号のみのご購入はこちらから(外部サイト)

admin

JAST自動車のトライボロジー研究会など4研究会が加賀で合同研究会

4ヶ月 2週 ago
JAST自動車のトライボロジー研究会など4研究会が加賀で合同研究会kat 2025年03日19日(水) in

 日本トライボロジー学会(JAST)自動車のトライボロジー研究会(主査:豊田中央研究所・遠山 護氏)とJAST日本海トライボロジー研究会(主査:小松大学・粕谷素洋氏)、JAST機能性コーティングの最適設計技術研究会(主査:岐阜大学・上坂裕之氏)、東海トライボロジー研究会(会長:岐阜大学・上坂裕之氏)は3月14日、石川県加賀市の大同工業 本社工場/致遠館で「トライボロジー合同研究会 in 加賀温泉」を開催した。

開催のようす

 

 当日はまず、大同工業・新家啓史社長が開会の挨拶に立ち、「当社は1933年の創業以来90年以上にわたってトライボロジーを実践してきた会社で、〝大いなる目的のため、一致団結して高遠なる理想実現に努力すべし”という創業からの「大同致遠」の精神を実践しつつ、チェーンなど自社製品の摩擦を制御し耐久性や効率を高める技術を追求し、ユーザーの製品の省エネや環境負荷低減に寄与してきた。しかし一社でできることには限りがあるため、皆様といろいろな方面で意見交換をしながら、新しい価値の創造や理想の追求に愚直に取り組んでいきたい。本研究会を通じて、新たな知見や技術がさらに発展することを願う」と述べた。

挨拶する新家社長

 

 続いて、同社 総務部 広報チームの前田恭子氏が、同社のフィロソフィー(DID MUGENDAI)など会社の概要から、山中漆器の木地挽きろくろの技術から木製リム製造へと転換し、チェーン製造を手掛けていった事業の沿革について、さらには二輪・四輪チェーンなどモビリティ関連製品から、産業機械用チェーン・コンベヤシステム・バキューム搬送コンベヤなどの産業機械関連製品、いす式階段昇降機など福祉機器までの幅広い事業概要について紹介した。

会社紹介を行う前田氏

 

 その後、同社福田工場の塑性加工工場と四輪エンジンチェーン工場を見学した。塑性加工工場では、スプロケットなどの複雑・高精度な三次元形状をネットシェイプ化する「三次元プレス成形」とキー溝加工を高い面粗度・寸法精度で打ち抜きできる「精密せん断」を組み合わせた独自「ファインプレスフォーミング技術」を用いたプレス機などを見学。また、四輪エンジンチェーン工場では、エンジンタイミングチェーンのピン・ブッシュ・ローラー・内外プレートなど構成部品の成形、接合、研磨、熱処理から、組み立て、目視検査までの工程の見学がなされた。

福田工場での参加者の集合写真

 塑性加工工場の見学風景

 

 工場見学後は、本社工場/致遠館に戻り、以下のとおり講演会が行われた。

 まずは、日本海トライボロジー研究会を代表して、新潟大学・月山陽介氏が「往復しゅう動試験機によるチェーングリースの潤滑特性評価」をテーマに話題提供を行った。往復しゅう動試験機を用いてピンとブッシュの摩擦挙動を再現し、グリース潤滑面におけるディンプルの影響を調査した結果、ディンプルによってサイクル初期の摩擦挙動が安定・低減する効果が得られ、その効果はグリースの粘度が高いときに顕著に見られた。ディンプル加工は、ピン・ブッシュ間のなじみ完了に時間を要しかつ高粘度グリースを使用したチェーンにおいて、高い効果を発揮する可能性があると結言した。

講演する月山氏

 

 また、東海トライボロジー研究会を代表して、大同工業・関 秀明氏が「チェーンとトライボロジー:幅広い産業を支える摩擦と摩耗技術」と題して、話題提供を行った。電動化の進展によって、モビリティ用チェーンにおいては、高速回転かつ給油条件が厳しい環境が想定され、また、速度の増加に伴うしゅう動発熱が大きくなるため潤滑不足や高温化、それらに伴う摩耗促進が懸念される。これに対し、発熱・摩耗抑制のための潤滑方法(潤滑位置の違いによる評価)や表面硬化処理の検討を行った。潤滑方法によって発熱低減や摩耗低減につながることを実験で確認したほか、同社独自開発のVCN(バナジウム炭窒化物)被膜が高速しゅう動時の発熱に対して十分な耐性を有することを確認した。

講演する関氏

 

 さらに、機能性コーティングの最適設計技術研究会を代表して、東京都市大学・崔 埈豪氏が「摩擦発電機のトライボロジー分野への応用」と題して、話題提供を行った。電子機器の普及に伴い多くのセンサとそれらを駆動するための電源が必要とされている。これに対してバッテリー不要のセンサを作製できる手法として、優れたトライボロジー特性を有するダイヤモンドライクカーボン(DLC)膜を四フッ化エチレン樹脂(PTFE)とともに帯電材として用いた、高耐久性・高効率の摩擦帯電型ナノ発電機(TENG)を開発した。DLCベースの滑り型TENGを用いた滑り軸受の状態監視システムの事例を紹介し、滑り速度やミスアライメント、潤滑油の欠乏、潤滑油の挙動などが観察できるとした。

講演する崔氏

 

 最後に、自動車のトライボロジー研究会を代表して、名古屋工業大学・糸魚川文広氏が「表面プラズモン共鳴を利用した油膜圧力計測と添加剤吸着挙動観察」と題して、話題提供を行った。表面プラズモン共鳴を利用した手法は、高い界面選択性と感度(表面近傍のみの誘電率変化を感度よく計測することが可能)を利用して、潤滑膜の膜厚や密度の空間分布をin-situに可視化できる。接触面からの反射光強度の変化を捉え潤滑油密度の変化量を捉えることで、油膜圧力も測れるほか、高時間分解能計測が可能なため、しゅう動面の表面形状変化に対する圧力応答測定ができ、混合潤滑状態の圧力・油膜厚さの同時計測ができる。さらに、粗面のしゅう動による添加剤吸着膜の状態計測事例を紹介、真実接触部の抽出と摩擦係数の同時計測が可能とした。

 講演会終了後は、アパホテル加賀大聖寺駅前内「瑠璃」に移動し、技術交流会が和やかに行われた。
 

kat

イグス、栃木県さくら市に新工場、在庫・アセンブリー機能を拡大、2026年春稼働予定

4ヶ月 3週 ago
イグス、栃木県さくら市に新工場、在庫・アセンブリー機能を拡大、2026年春稼働予定kat 2025年03日07日(金) in

 イグスは、栃木県さくら市に新工場を建設する。新工場は敷地面積41833㎡、延床面積約10000㎡で、本年5月に着工し、竣工は2026年春を予定している。栃木県の4拠点を集約し、在庫・アセンブリー機能を拡大する。新工場では、ケーブル保護管や可動ケーブル、可動ケーブルとケーブル保護管を一緒にした電力供給システムであるレディーチェーン、潤滑油不要の樹脂ベアリングなどを生産する。

新工場の完成予想図(外観イメージ)

 

 同社はこれまで、国内の在庫・アセンブリー拠点として栃木県内の計4カ所で稼働してきたが、事業が拡大する中、既存工場のスペースでは効率的な生産ラインを組むことに限界が生じ、自動化・省力化設備の導入にも制約が発生してきていた。また、将来的なビジネス拡大に対応できる生産体制の構築、倉庫機能の拡充も大きな課題となっていた。

 そうした中で、同社はさらなる在庫保管能力の拡大、効率的な生産体制の構築および出荷体制の強化を図ることを目的に、土地・建物に約35億円を投じて工場を新設することとし、この度、現工場がある栃木県那須烏山市に隣接する同県さくら市に事業用地を取得した。4拠点の在庫・アセンブリー機能を全て新工場に移転・集約し、2026年春より稼働を開始する計画。

 点在する既存4拠点を十分なスペースがある新工場に集約することで、工場・倉庫拠点間の輸送をなくし物流効率を向上させるとともに、事業拡大に対応する工場の体制を整える。新工場の設立により、在庫保管能力は2024年比で約70%増加する見込み。また、新拠点では、自動化・省力化機器の導入や生産ラインの見直し、新たな倉庫システムの導入を行うことで、労働生産性を向上させていくことが可能になる。

 さらに、新工場建屋の隣地には将来的な工場拡張に向けた約5000㎡の用地を確保している。

 同社では今後も生産性の向上に取り組むとともに、ユーザーに迅速・安定的に製品を提供することで、日本の産業界の発展に貢献していく考えだ。

kat

ハイウィン、ナノ精度位置決めステージ標準モデル4種を日本市場に投入、半導体製造の競争力強化へ

4ヶ月 3週 ago
ハイウィン、ナノ精度位置決めステージ標準モデル4種を日本市場に投入、半導体製造の競争力強化へkat 2025年03日07日(金) in

 ハイウィンは、要件の厳しい半導体産業のニーズに対応するナノ精度位置決めステージに標準モデル4種を新たにラインアップした。半導体製造の最先端を行く台湾にグローバル本社を置く同社では、台湾本国での実績を経て日本国内では2024年11月より発売を開始した。特に技術革新に期待が寄せられる半導体製造の後工程における競争力強化に貢献していく。

 

 PLP(パネルレベルパッケージ)検査やウエハ検査装置に活用されるナノ精度位置決めステージは、半導体検査装置や半導体製造装置に応用できるナノ精度の位置決めリニアモーターステージで、今回、短納期と高コストパフォーマンスを両立した標準機4種類をラインアップした。ウエハ光学検査モデル、LDI(レーザーダイレクトイメージング)露光機モデル、PLP検査モデル、ウエハ白色光干渉測定モデルの4機種となる。

 ムーアの法則に沿って半導体の微細化は進んできたが、平面上での開発は限界にきており、今では2.5次元、3次元においての積層技術の発展が加速している。つまり、回路を横に並べる段階から縦に積み上げる段階へと移行している。これまではシリコンウエハの微細化、つまり前工程の技術革新が半導体産業の進歩を支えてきたが、これからは後工程の進化に期待が寄せられている。

 例えば後工程内の「チップレット」というパッケージング技術に注目が集まっている。従来は一つのチップに微細化された大規模な集積回路を作り込んでいたのに対し、チップレットというパッケージング技術は、複数の小さなチップを組み合わせて、一つのパッケージを作る技術を言う。このチップレットの技術進化には、チップレット同士を繋ぐ2.5次元や、さらに効率的で高精度な3次元の積層技術の開発が求められている。

 パッケージング工程において精度が高く、ジッターの少ない位置決めステージの需要が増えていくこと見込まれる中、同社のナノ精度位置決めステージ「N2」の位置決め安定性は±2nmで、100mm/sでの高速安定性は±0.1%。低床で安定した構造で3Dパッケージング工程に有用なリニアモーターステージとなっている。

 また、3Dパッケージングにおいては製造工程が多く複雑であることから、品質の安定性を不安視する見方もあり、正確な検査も重要なファクターとなっている。同社のナノ精度位置決めステージは半導体検査装置でも活用できる。

 同社では従来、カスタム対応が多いナノ精度位置決めステージだったが、この度の標準機投入によりユーザーの開発期間を短縮させるソリューションを提供する。同社では自社製コンポーネントを幅広く揃えており、各部材、技術者をすべて社内で確保できるため、他社にない設計納期、生産納期を実現する。同社は、機械要素部品、メカトロ製品、制御技術の三つの要素を備えており、標準機だけでなくカスタム対応にも柔軟かつ迅速に対応できるとしている。

ナノ位置決めステージの標準モデルラインアップ

 

kat